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2012年12月17日 (月)

映画「砂漠でサーモン・フィッシング(Salmon Fishing in the Yemen)」

Salmon0 2007年に英国でベストセラーになり、59歳の新人作家ということでも話題になったポール・トーディ(Paul Torday)の小説「イエメンで鮭釣りを(Salmon Fishing in the Yemen)」の映画化です。

題名からリチャード・ブローティガン(Richard Brautigan)の「アメリカの鱒釣り(Trout Fishing in America)」を連想してしまいますが、特に関連するものではありません。敢えて共通点を挙げれば、断章形式で書かれていること(イエメンで…の方は電子メールや議会記録の羅列ですが)、うんざりするような状況におかれてもユーモアを失わないことくらいでしょうか。

物語は、英国水産庁勤務のジョーンズ博士のもとに、イエメンで鮭釣りができるようにしたい旨の電子メールが入るところからスタートします。依頼主はイエメンのシャイフ(族長)で、メールの送り主はシャイフの資産管理を代行している会社のハリエットという女性。

真面目なジョーンズ博士は、スコットランドの鮭をワジ(砂漠の水無し川)に放流するなんて狂っていると、端から取り合いませんが、ハリエットが外務省にも協力を依頼し、それが中東の明るいニュースを探していた首相官邸に伝わり、周り巡ってジョーンズ博士の上司に圧力がかかってきます。

ジョーンズ博士は渋々ハリエットの会社を訪ね、それがいかに無謀な計画なのか説明しますが(この図解がなかなか可愛くて……)、結局、シャイフ・ムハンマド(Sheikh Muhammad)に会うことに。

Salmon1

イエメンの大富豪であるシャイフ曰く、英国のクラス社会にあって、釣人たちは階級の上下に関係なく釣りを楽しんでいる、だからスコットランドで人気の鮭釣りをイエメンの社会にも普及させたいとのこと。

自身も釣り愛好家であるジョーンズ博士は、シャイフの釣りに対する愛情と熱意、驚異的な資金力に押し切られ、このプロジェクトの成功に向けて動き始めるというお話。

Salmon2

この物語の魅力は、個性的な登場人物たちと、時代性を反映させたストーリー展開でしょう。英国的で堅実なジョーンズ博士と、金融機関での成功を目指して猛烈に働く妻。バリバリのキャリアウーマンながら、中東の戦地に赴いた婚約者が心配でならないハリエット。そしてこのプロジェクトに係る政府関係者たちの俗物ぶり。

そしてもう一つ、この物語を魅力的なものにしているのが、シャイフが語る「信念(faith)」です。このプロジェクトが無謀なことはわかっているが、信念を持って実行し、神がそれを受け入れれば実現するはずだという、多分に宗教的な考え方ですが、信念を持ってこそ、愛も希望あるのだという言葉に、悩み多きジョーンズ博士は心打たれるわけです。

Salmon4

小説も映画も、概ね似た流れで展開しますが、大きく違うのが結末の部分。小説は衝撃的な結末が余韻を残すように書かれていますが、映画は物語がきれいに収束するように変更されています。ハリエットの婚約者の消息も、小説では政情が絡んで複雑ですが、映画では変更された結末に合わせてシンプルな展開に変わっています。

また、重要な登場人物である首相報道官が女性に変更されています。小説では、身体にぴったり合ったスーツを赤い裏地で仕立てるような浮薄で身勝手な男で、ハリエットに毛嫌いされ、真面目なジョーンズ博士と対比されるのですが、映画ではクリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas )が演じています。

Salmon5

「イングリッシュ・ペイシェント」「ずっとあなたを愛してる」「ノーウェアボーイ」「サラの鍵」と、シリアスな役が多いクリスティン・スコット・トーマスですが、この作品では弾けまくりの爆笑の演技で、今までにない魅力を発揮。報道官を女性に変更し、彼女をキャスティングしたのは大正解だったと思います。

そして、主人公のジョーンズ博士を演じたユアン・マクレガー(Ewan McGregor)。「ゴーストライター」や「人生はビギナーズ」での演技も見事でしたが、今回演じた堅物の科学者の役は、飛び抜けて良かったと思います。特に、朴訥としたキャラクターを表現しているのか、若干スコットランド訛りで話すあたり、英国映画好きには堪りません。

シャイフ役は「シリアナ」にも出ていたアムール・ワケド(Amr Waked)。小説のシャイフは、スコットランドに対する思い入れたっぷりで、イスラム教徒でありながらスコッチを嗜んだりする好人物(客人には必ずKrugの85年を勧めます)。映画ではそういうややこしい設定は割愛され、タータンを羽織る程度ですが、役者が結構イケメンですし、シャイフの魅力はじゅうぶんに伝わります。

Salmon3

このクリスマス、英国映画らしいひねりのきいた笑いを楽しみながら、「信念(faith)」について考えるのも悪くないと思います。

公式サイト
砂漠でサーモン・フィッシングSalmon Fishing in the Yemenfacebook

[仕入れ担当]

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