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2014年3月10日 (月)

映画「グロリアの青春(Gloria)」

0 予告編を見ると、中年女性が二度目の青春を謳歌する物語といったイメージですが、それほど単純でないところがこの映画の魅力。

主演女優のパウリナ・ガルシア(Paulina García)がベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得して注目を集めた作品ですが、彼女の演技はもちろん、リアリティのある心情描写が印象に残る作品です。

物語の舞台はチリの首都サンティアゴ。10年以上前に離婚し、育て上げた息子と娘もそれぞれ独立して、それなりに充実した独り暮らしを楽しんでいるグロリア。

会社でも責任ある地位に就いていて、娘が主宰するヨガ教室に通ったり、独身者が集まるパーティに出会いを求めて出掛けていったりする58歳の女性です。

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海軍の元軍人であり現在は実業家であるロドルフォとダンスクラブで出会い、親密な関係になります。グロリアは彼に多くを望みませんが、1年前に離婚したばかりのロドルフォにとって、行動的なグロリアとの出会いは光明そのもの。

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正式に交際したいとグロリアに熱く迫るロドルフォですが、元妻や成人した娘が自立していなくて、未だにロドルフォが支援し続けているという事情を抱えています。新たな人生に踏み出したいと願いつつ、元の家族を見捨てられないという二律背反の状態にあるわけです。

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そんなロドルフォに対し、苛立ちを隠さないグロリア。真摯に事情を説明すれば理解してくれるのではないかと期待するロドルフォですが、グロリアは「それぞれの幸福のため、それぞれが自立すべきだ」と突き放すのみです。

つまり、今までも自立を求めてきた女性であり、これからも自立して生きていこうとしているグロリアにとって、なれ合いや甘えの中でしか成立しない人間関係は容認できないものなのです。

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ジョン・カサヴェテス監督の「グロリア」は子ども嫌いの女性が次第に母性に目覚めていくお話でしたが、このセバスティアン・レリオ(Sebastián Lelio)監督は母性を疑う立場から「グロリアの青春」を作ったかのようにも思えます。女性だからといって、すべてを包み込むような愛が自然に備わっているわけではないし、誰かからそれを強制される謂われもないという立場。

ですからこの監督は、グロリアを“良識ある中年女性”としては描きません。考えようによっては、非常にわがままで身勝手、奔放で移り気なひどい女性です。でも、そんな彼女だからこそ、その生き方にリアリティを感じるのです。

意外にシビアな視点を持つ映画ですが、タイトル曲のGloriaをはじめ、ポップな楽曲に絡めてストーリーが展開していきますので、シリアスな雰囲気はまったくありません。初めから最後まで笑わせながら、終映後にちょっと考えさせられる、そんなタイプの映画です。

公式サイト
グロリアの青春Gloria

[仕入れ担当]

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