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2014年6月16日 (月)

映画「グランド・ブダペスト・ホテル(The Grand Budapest Hotel)」

Gbh0 ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)監督の最新作は、前作「ムーンライズ・キングダム」に引き続き、ファンタジックな魅力溢れる一本です。5月末に興収1億5000万ドルを超えたと報じられていましたが、日本でも相変わらずの人気ぶりで、週末の劇場は大変な混雑でした。

今回の舞台は仮想の国、ズブロッカ共和国に建つ高級リゾートホテル(このホテルをLEGOブロックで作るプロモーションフィルムは必見です)。国名は、あのバイソングラス入りのポーランド産ウォッカに因んで名付けられたということですから、中欧のどこかにある国という想定なのでしょう。

ちなみに、ホテルの内部を含む主なロケ地はドイツのザクセン州、ホテルの外観とシカが立つ丘のイメージはチェコ共和国カルロヴィ・ヴァリの Bristol Palace Jelení skok の組み合わせだそうです。

映画は3つの時代をまたぐ三層構造になっています。

オープニングは作家の胸像の前で彼の著作を読み始める少女が登場する現代のシーンから。そして作家がその著作を執筆するきっかけとなった1960年代。寂れてしまったグランド・ブダペスト・ホテルを訪れた若き作家が、ホテルオーナーのゼロ・ムスタファと知り合い、彼が語る1932年の事件へと話が進んでいきます。

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その事件の主人公は、このホテルの伝説的コンシェルジュだったムッシュ・グスタフ.H。

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ホテル顧客のマダム.Dが謎の死を遂げ、彼女が懇意にしていた遺品の名画"Boy with Apple"がグスタフ.Hに贈られたことから、彼は、マダム.Dの息子ドミトリから殺人の嫌疑をかけられてしまいます。

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当時、グスタフ.Hの下で働く新人のロビーボーイだったゼロは、恋人のパティシエール、アガサの協力を得てグスタフ.Hの脱走を助けます。

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そしてグスタフ.Hと共に、殺し屋ジョプリングやヘンケルス警部に追われながら欧州を駆け巡り、マダム.Dの執事セルジュXが言っていた第2の遺言を探し出すというのがおおまかなストーリー。

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一応、サスペンス仕立てになっていますが、どちらかというとストーリーそのものより、スタイリッシュな映像と、あちこちに仕掛けられた気の利いた演出を楽しむタイプの映画だと思います。

またこの監督ならではの、豪華な出演者も見どころ。グスタフ.Hは007シリーズのMに決まったレイフ・ファインズ(Ralph Fiennes)が、マダム.Dは「少年は残酷な弓を射る」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」のティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)が特殊メークで84歳に化けて演じています。

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そして、ドミトリはエイドリアン・ブロディ(Adrien Brody)、アガサは「ハンナ」のシアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)、ジョプリングはウィレム・デフォー(Willem Dafoe)、ヘンケルスはエドワード・ノートン(Edward Norton)、若き日の作家はジュード・ロウ(Jude Law)、執事セルジュXは「さすらいの女神たち」のマチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)といった具合。

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これ以外にもハーヴェイ・カイテル(Harvey Keitel)、「私が愛した大統領」のビル・マーレイ(Bill Murray)、「アデル」のレア・セドゥ(Léa Seydoux)、「マリーゴールド・ホテル」のトム・ウィルキンソン(Tom Wilkinson)、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソン(Owen Wilson)といった主役クラスが配されていて、さらに「アーティスト」のジャン・デュジャルダン(Jean Dujardin)が銃撃戦のシーンにカメオ出演していたりと、贅沢きわまりない配役です。

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そんな映画ですから、理屈を語るのは野暮かも知れませんが、この映画のテーマは、ずばり戦争です。

シュテファン・ツヴァイク(Stefan Zweig)の作品にインスパイアされ、ハンナ・アーレントの著作を読んで脚本を書いたと監督が語っている通り、国家の暴力に対する批判的な姿勢が随所に織り込まれていて、特にレイフ・ファインズの英国風の軽口にはそれが濃厚に顕れています。また語り手であるゼロも、戦争孤児であり、国を追われた難民であることが後に明らかになります。

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ということで、お洒落なサスペンス風コメディとして楽しむのもよし、反戦思想に満ちた風刺劇として楽しむのもよし、儚いラブロマンスとして楽しむのもよし、人それぞれいろいろな楽しみ方ができる映画です。どなたかと一緒にご覧になり、終映後、お菓子をつまみながらお喋りすれば楽しさもひとしおでしょう。

公式サイト
グランド・ブダペスト・ホテルThe Grand Budapest Hotel

[仕入れ担当]

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