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2015年6月15日 (月)

映画「グローリー/明日への行進(Selma)」

00 マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Jr.)を主人公に、アラバマ州セルマにおける黒人選挙権獲得運動(Selma Voting Rights Movement)を描く映画です。

キング牧師といえば、日本でも世界史の授業を通じて大多数の人が知っている公民権運動の中心人物ですが、彼を主人公にした映画作品はこれが初めてだそうです。というのも、キング牧師のスピーチなどの著作権はすべて遺族が管理していて、数年前に、スピルバーグ監督が苦労の末に権利関係をクリアして製作に取りかかったものの、脚本にダメ出しされてそのままお蔵入りしているとのこと。

本作の監督及び共同脚本を務めたのは、これが長編第3作目というエイヴァ・デュヴァーネイ(Ava DuVernay)。ほとんど無名の監督ですが、それが幸いしたのか、最初から遺族の許可を得ないという方針で製作し、スピーチもすべて類語を駆使して似た文言に書き換えたそうです。それでも、というか当然というか、さまざまな批判にさらされたようで、それに配慮したのか、主演のデヴィッド・オイェロウォ(David Oyelowo)は、渾身の演技にもかかわらず、今年のアカデミー賞にはノミネートすらされませんでした。

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それを受けて、アカデミー賞の授賞式では、司会のニール・パトリック・ハリス(「ゴーンガール」で金持ち男を演じた人です)が、“Tonight we honor Hollywood's best and whitest -- sorry, brightest,”(今宵はハリウッドを代表する白人、おっと失礼、名士のご臨席を賜り……)と挨拶して会場を沸かせていました。こういう大舞台でこういう発言ができるところが米国の立派なところで、映画の中にも似た立ち位置の白人が登場して日本人の観客を安堵させますが、その後、それ故に大きなリスクを負う様子を見せつけられ、病根の深さに叩きのめされることになります。

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映画のオープニングは、1964年12月のキング牧師のノーベル平和賞授賞式。その後、アニー・リー・クーパー(Annie Lee Cooper)というセルマ在住の黒人女性が選挙人登録を拒否されるシーン、1963年9月にアラバマ州で起きた教会爆破事件(詳しくはスパイク・リー監督「4リトル・ガールズ」)が続き、当時の黒人が置かれた状況が説明されます。

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そして、1965年2月26日の州兵によるジミー・リー・ジャクソン(Jimmie Lee Jackson)射殺、3月7日の最初の行進で起きた血の日曜日事件と全国紙に載ったアメリア・ボイントン(Amelia Boynton)、3月9日の2度目の行進、3月15日のジョンソン大統領の投票権法(Voting Rights Act of 1965)成立に向けたスピーチ、3月21日のセルマから州都モンゴメリーまでの行進と、黒人選挙権獲得にまつわる史実が、フーヴァー長官による脅迫(詳しくはイーストウッド監督「J・エドガー」)や家庭内の問題などを交えて描かれていきます。ちなみに本作の脚本のベースになったのはFBIの監視記録だそう。なんとも大変な国です。

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公民権運動に反対するアラバマ州政府の代表は知事のジョージ・ウォレス(George Wallace)で、1962年に知事に当選したとき“I say segregation now, segregation tomorrow, segregation forever”(≒人種隔離バンザイ)というスローガンを掲げていた人。1963年には黒人学生がアラバマ大学に入学することを阻止するために自ら大学の前に立ちはだかり、ジョン・F・ケネディが大統領布告をもった特使を送って入学を認めさせたという根っからの分離主義者です。

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そして保安官のジム・クラーク(Jim Clark)。黒人の市民運動を潰すため、KKK(Ku Klux Klan)のメンバーを雇って暴力を振るったと言われる人ですが、上記のアニー・リー・クーパーに殴り倒されたという過去があり、そのシーンは映画でも描かれています。

もちろん、この映画の見どころはキング牧師を演じたオイェロウォの熱演ですが、主題曲“Glory”の歌詞もなかなか聞かせます。この曲がアカデミー歌曲賞に輝き、オイェロウォは涙していましたが、歌ったのはジョン・レジェンドとコモン(John Legend,Common)。そのコモンは本作に市民活動家のジェームズ・ベヴェル(James Bevel)の役で出演しています。

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また「大統領の執事の涙」ではオイェロウォのお母さん役だったオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)がアニー・リー・クーパーを演じ、「マダム・マロリーと魔法のスパイス」に引き続きプロデューサーを務めています。「それでも夜は明ける」の製作にも係わったブラッド・ピット(Brad Pitt)の名前もエグゼクティブプロデューサーとしてクレジットされていました。

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そして白人の二人、リンドン・ジョンソン大統領を演じたのは「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のトム・ウィルキンソン(Tom Wilkinson)、ジョージ・ウォレス知事の役は「グレース・オブ・モナコ」で大公を演じていたティム・ロス(Tim Roth)。共に白人でありながら利害がすれ違い、互いに疎ましく思う政治家を好演しています。

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個人的に面白いと思ったのは、この二人の言葉の応酬で、中でも良かったのは大統領が知事に向かって言う“I'll be damned to let history put me in the same place as the likes of you”(歴史の中で、オマエみたいなヤツと同列に語られたくないんだよ)という言葉。日本の今の国会や政府にも、そう思っている人がいて欲しいと思いながら聞いていました。

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公式サイト
グローリー/明日への行進Selma

[仕入れ担当]

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