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2015年8月17日 (月)

映画「ふたつの名前を持つ少年(Lauf Junge lauf)」

00 8歳のときにワルシャワのゲットーから逃げだし、ナチス親衛隊の監視をかいくぐりながら終戦までの3年間を生き延びたユダヤ人少年を描いた映画です。

原作は、イスラエル在住のヨラム・フリードマン(Yoram Israel Friedman)の体験談を、児童文学作家のウーリー・オルレブ(Uri Orlev)が小説としてまとめたもの。原題は“Run Boy Run”という意味で、日本では岩波書店から「走れ、走って逃げろ」の題で翻訳が出ています。

ワルシャワ近郊、ブウォニエ村(Błonie)のパン屋の息子でスルリック(Srulik)と呼ばれていた主人公は、荷馬車にもぐりこんでゲットーを脱出します。

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森に逃げ込むと、そこには彼と同じようにゲットーを抜け出してきた浮浪児たちが住み着いていて、その仲間に加わって生きる術を身につけます。

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しかし危険が迫ればバラバラに逃げるしかなく、一人になって雪原を彷徨っていたスルリックは一軒の農家の前で行き倒れてしまいます。そこで暮らしていたのはパルチザンの夫と息子を持つヤンチック(Janczyk)夫人。

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スルリックに同情した夫人は、ユダヤ系だとわからないように、ポーランド系の名であるユレク・スタニャク(Jurek Staniak)と名乗り、キリスト教徒のように振る舞うように知恵を付けます。

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賢いスルリック改めユレクは、その教えを守ってポーランド系キリスト教徒の孤児だと偽りの経歴を語りながら、森を抜け、農家の世話になり、たびたびの危機を乗り越えて生き抜きます。

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鍛冶の手伝いをしながら暮らしていた農家で終戦を迎え、近所に住むユダヤ人の計らいでユダヤ系孤児の支援団体が探しにくるまでが描かれるのですが、そこに至っても自分はユダヤ系ではないと言い張るスルリック。

邦題にあるように、ふたつの名前、つまりユダヤ系と非ユダヤ系の間で揺れるアイデンティティの問題にさりげなく触れながら、困難に耐えて生きていく少年の意志の強さを見せてくれる映画です。

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背景は昨年の8月に観た「イーダ」に似ていますが、ちょっと違うのがスルリックが男の子である故に、割礼を受けていることに気付かれてユダヤ系だとバレてしまうこと。

なかでも、脱穀機に右手を挟まれたスルリックを雇い主が病院に運び込んだところ、手術台の上で服を脱がした途端、医者が手術をやめてしまう場面は象徴的です。これによって彼は前腕部を失うのですが、この一件は、上に記したアイデンティティの問題に深く関わってきます。

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なぜそこまでユダヤ系が毛嫌いされるか、日本人には今ひとつ理解できないところですが、それよりもわからないのが、子どもであろうと何であろうと根絶やしにすることが戦争の目的になっていること。占領して搾取するのではなく、一気に殲滅してしまうという考え方は理解に苦しみます。

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話が逸れますが、先日、イタリア人が書いた小説を読んでいたら、戦後、女だけの村があったエピソードが出てきました。共産主義者を煩わしく思ったムッソリーニ政権が、同盟国のドイツに支援を頼んだところ、男たちを皆殺しにして女だけ残していったそうです。考えてみれば一昨年の8月に観た「最愛の大地」で扱われていた民族浄化もそうですし、なかなか収まらないウクライナ東部やパレスチナ、さらにいえばISISも似たような発想ですね。

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そこにあるのは、ただひたすら相手を憎む心。欧州的な戦争のスタイルなのかも知れません。こういった戦争に関わらないで済んだことに感謝しながら、今年の8月を過ごしたいと思います。

公式サイト
ふたつの名前を持つ少年Lauf Junge lauf

[仕入れ担当]

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» 映画「ふたつの名前を持つ少年」を見ました。 [みなと横浜みなみ区3丁目]
生きるためのゲットー脱出 戦争は常に、幼気(いたいけ)ない子供たちに、より過酷な運命を強いる。 「アンネの日記」は、ナチス・ドイツ占領下のオランダで、ユダヤ人迫害から逃れるために狭い隠し部屋の中で身を潜めて暮らした一人の少女の短すぎる生涯を通して、戦争のむごさと平和への希望を描いた一級のドキュメントだ。 アンネ・フランクは2年間にわたリ閉じこもって生活していたが...... [続きを読む]

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