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2016年4月18日 (月)

映画「スポットライト 世紀のスクープ(Spotlight)」

00 今年のアカデミー賞で6部門にノミネートされ、作品賞と脚本賞を受賞した映画です。神父による児童性的虐待を教会が隠蔽していたというスキャンダルをスクープした地方紙の取材経過を描いた作品で、キーワードはpray(いのり)とprey(えじき)。教会の権威を盾に子どもたちを食い物にしてきた宗教関係者たちを追い詰めていく実話ベースのお話です。

これまでも、カソリック教会の暗部を描いた作品はいくつもありました。たとえばパブロ・ラライン監督の「ザ・クラブ」は性的虐待などの問題を起こした神父たちを軟禁している家を舞台にした映画でしたし、メリル・ストリープとフィリップ・シーモア・ホフマンが出ていた「ダウト〜あるカトリック学校で〜」や、アルモドバル監督の「バッド・エデュケーション」も、神父による性的虐待が重要なテーマです。

また、教会による児童移民を扱ったジム・ローチ監督「オレンジと太陽」では、移送先のオーストラリアの宗教施設で暴力や性的虐待が頻発していた事実を丁寧に掘り起こしていました。

こういった作品が次々と作られるようになったのは、本作で描かれたように、ボストン・グローブ紙(Boston Globe)がスキャンダルを暴いたことで、カソリック教会の組織的な隠蔽ができなくなったから。まさにジャーナリズムが世の中を変えた好例といえるでしょう。

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物語の始まりは1976年。神父がボストン警察に逮捕されますが、子どもの母親は教会に丸め込まれてウヤムヤになってしまいます。そんなことは日常茶飯事とばかり、警察官も見て見ぬ振り。ボストンではその種の事件が常態化しており、ボストン・グローブ紙も小さな記事でしか扱わなかったことが後にわかります。

その理由というのがボストンの地域性。ジョニー・デップ主演「ブラック・スキャンダル」で見たたように、サウス・ボストン、通称サウシー(Southi)にはアイルランド系とイタリア系が多く住んでいて、その大部分があまり教育レベルが高くないカソリック教徒。同作のギャングとFBIの密約をスクープしたのもボストン・グローブ紙でしたが、多くの一流大学が立地する知的なイメージとは裏腹に、大勢の貧しく信心深い人たちが暮らす地域であり、彼らがギャングを容認し、教会の絶対的権威を支えていたわけです。

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時は流れて2001年7月。ボストン・グローブに親会社のニューヨークタイムズからマーティ・バロン(Martin Baron)という新しい編集局長が赴任してきます。ユダヤ教徒で、その前はマイアミ勤務だったというまったくのよそ者。そんな彼が過去の記事を漁り、ゲーガン(John Geoghan)神父が30年間で80人の少年に性的虐待を加えたという事件が、小さなコラム扱いになっていることに疑問を持ちます。

そして特集記事“Spotlight”を担当するチームのリーダー、ウォルター“ロビー”ロビンソン(Walter V. Robinson)を呼び、この事件を追いかけるように指示します。

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ボストン生まれで、カソリック系のボストンカレッジ高校(BC High)、地元の名門ノースイースタン大学(Northeastern University)を卒業しているロビー。地域社会や母校からの信頼も厚く、同窓生には地元の名士も多い地域エリートです。司法関係の友人に接触しても「教会には触れるな」と警告されるばかりですが、コネの強さを活かしてぐんぐん核心に迫っていきます。

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彼のチームの一人が、タクシー運転手あがりの熱血記者マイク・レゼンデス(Michael Rezendes)。虐待の被害者を支援してきた弁護士の事務所に通い詰め、裁判資料を丹念に調べる、いわゆる“足で稼ぐ”タイプの記者です。

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同チームのマット・キャロル(Matt Carroll)が教会の年鑑から割り出した膨大な疑惑リストを丹念に潰していきます。ちなみにマイクはボストン大学(Boston University)卒、マットはノースイースタン大学卒ということで共に地元出身。

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そしてチームの紅一点、サーシャ・ファイファー(Sacha Pfeiffer)。彼女もボストン大学卒の地元出身者で、祖母が敬虔なカソリック教徒という家柄。教会の悪事に切り込むことに躊躇しながらも、被害者たちと真摯に付き合い、彼らから聞き出した情報が事件の全容を明らかにしていきます。

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途中、911テロで取材が中断されながらも、2002年1月にゲーガン事件の報道に漕ぎ着けます。これを受けてボストンの大司教バーナード・フランシス・ロー(Bernard Francis Law)は辞任を余儀なくされますが、すぐローマ(Basilica di Santa Maria Maggiore)に転属されていますので、結局のところ責任を負ったのかどうか判然としません。ちなみにゲーガンは収監された施設内で他の受刑者に暴行されて死亡しています。

リーダーのロビーを演じたのは、マイケル・キートン(Michael Keaton)。昨年の「バードマン」に続き、2年連続でアカデミー作品賞への出演となりました。

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そして熱血記者マイクを演じたのがマーク・ラファロ(Mark Ruffalo)。このブログでも「キッズ・オールライト」「はじまりのうた」「フォックスキャッチャー」を取りあげていますが、出演作によってイメージを大きく変えられるところもこの人の持ち味なのでしょう。本作でも何度目かのアカデミー賞の助演男優賞を逃しましたが、そろそろ獲らせてあげて欲しい役者さんです。

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紅一点のサーシャを演じたのは、「ミッドナイト・イン・パリ」でイネズ役、「誰よりも狙われた男」で弁護士役だったレイチェル・マクアダムス(Rachel McAdams)。本作で初めてアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされましたが、今年は強豪揃いだったこともあって受賞には至りませんでした。

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その他、編集局長マーティ・バロンをリーヴ・シュレイバー(Liev Schreiber)、その部下にあたる編集部長ベン・ブラッドリー・Jr.役を地元ボストン出身のジョン・スラッテリー(John Slattery)、資料担当のマットをブライアン・ダーシー・ジェームズ(Brian d'Arcy James)が演じています。また、教会を糾弾する弁護士ミッチェル・ギャラベディアン(Mitchell Garabedian)を演じたスタンリー・トゥッチ(Stanley Tucci)は「ハンガー・ゲーム」シリーズでシーザー・フリッカーマンを演じていた人です。

公式サイト
スポットライト 世紀のスクープSpotlightfacebook

[仕入れ担当]

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