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2016年5月30日 (月)

映画「神様メール(Le tout nouveau testament)」

00 神様はブリュッセルのアパートに住んでいる嫌味なオッサンだった、という設定で展開するコメディです。寡作で知られるベルギー出身のジャコヴァン・ドルマル(Jaco Van Dormael)監督の長編4作目。ヨランド・モロー(Yolande Moreau)が登場することもあって、ジャン=ピエール・ジュネ監督の「アメリ」や「ミックマック」を彷彿させるユーモラスな雰囲気もありますが、邦題や日本版ポスターから受けるイメージとはかけ離れた、毒のある作品です。

原題を英訳するとThe Brand New Testament。
旧約聖書、新約聖書に続く最新版の聖書といったところでしょうか。神の子イエス・キリストの妹であるエアが、イエスの12使徒に加える6使徒を探し出し、福音書をまとめていくというお話です。

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といっても説教くさい映画でも、抹香くさい映画でもありません。現代社会を取り巻く問題を取り込みながら、ときおり皮肉な笑いに導いていく感じです。

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この映画の神様は、旧約聖書で描かれているような怒りっぽくて懲罰的な存在。だらしない格好でアパートの奥の部屋にこもり、人間界で事故を起こさせたり、大雨を降らせたり、気まぐれで不幸を与えては喜んでいる粗暴な性格です。

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このような性格の悪い神様がコントロールしているから、世の中に悪がはびこり、争いが絶えないというわけです。

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その実情を知った10歳の娘エアが、父親の行いを非難し、逆に怒りをかって折檻されます。父親が神様でなければ、よくある反抗期の少女と強権的な父親といったところでしょう。

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神の執務室に忍び込んだエアは、父の権威を失わせてしまおうと、運命を管理しているPCを操作して人類全員に余命を記した電子メールを送ります。もちろん人間界はパニックになりますが、人生の価値を見直す人がいたり、闘うことが愚かしくなって戦争をやめたり、悪いことばかりではないあたりがこの監督の立ち位置なのでしょう。

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キッチンの洗濯機の奥はブリュッセルのコインランドリーに通じていて、人間界に向かう経路になっています。兄のJC(イエス・キリスト)もここから人間界に行き、理想主義を押し通したばかりに人間から殺されてしまいましたが、妹のエアが人類を救済することには賛成で、暖炉の上の置物の姿で知恵を授けます。

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人間界に降り立ったエアは、ホームレスのヴィクトールと知り合い、筆記者(scribe)に任命します。そのときヴィクトールは自分は識字障害だと言うのですが、エアは耳を貸しません。その後、たびたびスペルを確かめながら記述していった結果、聖書のできあがりがどうなったかは終盤でわかります。

そして神様も娘のエアを追って人間界に向かいます。

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最初の使徒(apostle)はオーレリー。余命11年6ヶ月27日の片腕の美女です。彼女の内面の音楽を聴いたエアは、片腕と共に愛を失っていた彼女に夢を見させてあげます。

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2人目は冒険家になりたかった平凡な会社員ジャン=クロード。余命12年9ヶ月5日の彼もエアに音楽を聴いてもらい、鳥を追って北極圏に渡っていきます。3人目は性的な妄想に囚われた、余命83日のマルク。少年時代にラ・マンガ(La Manga)の海岸で出会った青い水着の少女が妄想の源です。エアは彼にアドバイスを与え、小さな奇跡を引き起こします。

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4人目は余命25年3ヶ月8日のフランソワ。保険屋からスナイパーに転身した男です。彼にもエアのアドバイスで奇跡が起こるのですが、演じたのは「タンゴ・リブレ」「エール」のフランソワ・ダミアン(François Damiens)。うまい俳優さんです。

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そして5人目はゴリラと恋に落ちる有閑マダム、マルティーヌ。余命5年2ヶ月18日の彼女を演じたのは、なんとカトリーヌ・ドヌーブ(Catherine Deneuve)でした。「クリスマス・ストーリー」「隠された日記」「幸せの雨傘」以来、久しぶりに見ましたが、「昼顔」のオマージュと思われるシーンもあり、あいかわらず大女優の貫禄十分です。

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6人目の使徒ウィリーは余命54日の病弱な少年。これで18人の使徒が揃うわけですが、ここでどんな奇跡が起こるかは見てのお楽しみ。くだらないと言えば、くだらないのですが、神が男である必要があるのかといったフェミニズム的な視点と、宗教施設と難民を取り巻く状況といった社会的な視点をベースにエンディングに向かいます。

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最後になりましたが、嫌味な神様を演じたのは「ココ・アヴァン・シャネル」でエティエンヌ・バルサン役だったブノワ・ポールヴールド(Benoît Poelvoorde)。神の妻を演じたヨランド・モローは「セラフィーヌの庭」の主演女優として有名ですね。

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そして神の娘エアを演じたのは「サンドラの週末」に主人公の娘役で出ていたピリ・グロワーヌ(Pili Groyne)。こういった大きな役は初めてだそうですが、ベテラン俳優たちに引けを取らない存在感を放っていました。今後が楽しみな少女です。

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公式サイト
神様メールLe tout nouveau testament

[仕入れ担当]

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