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2016年9月20日 (火)

映画「グッバイ、サマー(Microbe et Gasoil)」

00 ミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)監督の最新作です。

「エターナル・サンシャイン」「恋愛睡眠のすすめ」といった映画をはじめ、ミュージック・ビデオや企業CMなど、独特の世界観が反映された映像で知られるゴンドリー監督、このブログではビョークの“Biophilia”をご紹介したのみで、なぜか映画作品を取りあげるのは初めてです。

本作の主人公は少年2人。これまでも遊び心あふれる、少年っぽい視点を持った作品を手がけてきた監督ですが、今回は夢見る少年の世界をダイレクトに扱っていて、そういった意味で本領発揮という感じがしました。

少年たちのホームタウンも監督の出身地と同じヴェルサイユ(Versailles)です。

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少年の1人、ダニエルは両親と兄と弟の5人家族。兄はパンクかぶれのロッカー、弟はサッカー小僧、ダニエル自身は絵がうまくて三人三様の兄弟ですが、オドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)演じる母親はちょっと心を病んだ女性です。父親はあまり登場しません。

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背が低いことをからかわれ、同級生からミクロ(microbe=微生物)と呼ばれているダニエル。クラスメイトの大人びた少女、ローラに惹かれていますが、髪が長くて少女のようなダニエルの風貌のせいか、どうやら男の子として意識されていないようです。

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そんなクラスに古道具屋の息子、テオが転校してきます。目立ちたがり屋のテオも、当然のようにクラスに溶け込めません。機械いじりが好きなせいでガソリン(gas oil=軽油)と渾名され、ときにはイジメのような仕打ちを受けながらも個性を貫くテオ。家族は、怒りっぽい父親と太りすぎの母親、軍に入隊してグルノーブルにいる兄で、家に帰ると父親の手伝いをしなくてはいけません。また母親が病気のため、食事の用意など家事もテオが担当しています。そういう意味でちょっと不憫な少年ですが、テオにはそれを感じさせない芯の強さがあります。

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クラスでちょっと浮いているダニエルとテオは、いつしか親しくなっていきます。

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2人が懸命に取り組むのが自動車作り。一緒に集めてきた廃材を使って、50ccのエンジンを積んだ車を自作します。一応は完成するのですが、残念ながら車両登録はできず、そこで考えついたのが、車体をログハウスにしてしまうというもの。警察が近くに来たら、路肩に停め、住居のふりをしてやりすごすというアイデアです。

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ヴェルサイユを発った2人は南に向かいます。ヌムール(Nemours)でおかしな歯科医の庭にまぎれ込んだり、途中の街で風俗まがいの美容室に入るなどトラブルに巻き込まれながら、ローラがバカンスを過ごすモルヴァン(Morvan)自然公園の湖に到着します。

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ちょっとびっくりしたのが、その風俗まがいの美容室で働いている女性たちが日本人だったこと。一般にフランスであの類の店を営んでいるのは中華系と決まっていて、この映画でも漢字の看板など中華系を思わせる店構えなのですが、下着姿の女性2人がいきなり日本語で会話します。演じているのも富田麻紗子(Masako Tomita)と武田絵利子(Eriko Takeda)という日本人。おそらく「かわいい!」というセリフを言わせたかったのだろうと思いますが、日本人的には意表を突かれる感じです。

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もちろん、そんなトラブルの数々も、それを乗り越えてローラのそばまで来たのに見ているだけなのも、甘酸っぱい少年時代の思い出。ミシェル・ゴンドリーらしく、ロマへの差別のような社会問題をさりげなく織り込みながら、観客も一緒にワクワクしてしまうロードムービーが展開していきます。

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ダニエルを演じたアンジュ・ダルジャン(Ange Dargent)も、テオを演じたテオフィル・バケ(Théophile Baquet)も、ローラを演じたディアーヌ・ベニエ(Diane Besnier)も新人だそうですが、この3人の瑞々しさが何ともいえず愛らしい映画です。

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エンディングも、ちょっとほろ苦くて、ある意味リアルで、とてもフランス映画っぽいと思いました。さすがミシェル・ゴンドリー、という作品です。

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公式サイト
グッバイ、サマー

[仕入れ担当]

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