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2016年10月24日 (月)

ラテンビート映画祭「彼方から(Desde allá)」

00 ベネズエラの映画です。監督のロレンソ・ビガス(Lorenzo Vigas)は1967年生まれで、ベネズエラのメリダ出身。初の長編作品である本作で昨年、ヴェネツィア映画祭の金獅子賞を獲得しています。

原作は「アモーレス・ペロス」「21グラム」「バベル」の脚本家であり、「あの日、欲望の大地で」の監督であるメキシコ出身のギジェルモ・アリアガ(Guillermo Arriaga)。ロレンソ・ビガス監督のデビュー作「Los elefantes nunca olvidan」のプロデューサーでもあります。

そして主演は「トニー・マネロ」「NO」「ザ・クラブ」といったパブロ・ラライン作品の常連俳優アルフレド・カストロ(Alfredo Castro)と、新人のルイス・シルバ(Luis Silva)で、ほぼこの2人で展開していく作品です。

アルフレド・カストロ演じるアルマンドは、ベネズエラの首都カラカスで暮らす中年男性。歯科技工所を営んでいて暮らしぶりは裕福です。結婚はしてないようで、ときおりバス停などで若い男性に声をかけては、自宅に連れ込んでいます。彼の風変わりなところは、連れ込んだ男性に触れることなく、カネを渡して部屋の片隅から眺めること。映画祭で使われた英題“From Afar”は原題の直訳ですが、題名そのもの“遠くから”見ることが目的なのです。

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あるとき、街角にたむろしていた不良青年エルデルを誘い込みます。しかし、アルマンドの思い通りにはならず、結局、彼に殴られてカネを奪われてしまいます。それでも、というより、それだからかも知れませんが、急速にエルデルに惹かれていくアルマンド。彼の姿を求めて街を歩きまわり、見つけた彼にカネを遣って改めて関係を作ろうとします。

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最初はオカマ(maricón)と罵っていたエルデルも、次第に気を許すようになり、不思議な関係が築かれていきます。

2人に共通するのは、父親に対する屈折した感情。アルマンドは立派なビジネスマンである父親と疎遠な状態にありながらある種の憧憬も抱いていて、エルデルは暴力をふるった父親に憎しみと共感がないまぜになった複雑な気持ちを抱いています。

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大きく異なるのは経済状況。気前よくカネを遣うアルマンドは、この街では富裕な部類なのでしょう。対するエルデルは、狭い公営住宅で育ち、街の自動車工場で働きながら、ショボい犯罪を繰り返しています。それもあって性格面でも、穏やかなアルマンドと激情しやすいエルデルという対極にあります。

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この2人が接点を持つことでそれぞれが変わっていき、思いも寄らない方向に展開して、ある意味で衝撃的、ある意味で当然ともいえる結末を迎えます。そして、再度、映画の題が意味するところを考えることになります。

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ベネズエラといえば、長く続いたチャベス政権が終焉を迎え、政情不安と高いインフレ率、治安の悪さといったマイナス部分ばかり報道されていますが、本作では2人の貧富差を除いて、ベネズエラの社会問題には触れていません。2人の個の部分にフォーカスし、心の動きを丹念に追っていく、普遍性の高い人間ドラマです。

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ルイス・シルバが醸し出す雰囲気も大切な要素になっていますが、彼の演技も各地の映画祭で注目を集めたようです。これから大化けするかも知れません。

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[仕入れ担当]

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