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2016年10月31日 (月)

映画「ハングリー・ハーツ(Hungry Hearts)」

00 2014年のヴェネツィア映画祭で男優賞と女優賞をW受賞した作品です。2年前の東京国際映画祭で上映されたのみでしたが、このたびの“WORLD EXTREME CINEMA”で取りあげられています。ガツンとくる映画を集めた、という企画だけあって、かなりインパクトのある内容です。残念ながら東京での上映は終わっていますが、関西の方はまだご覧になるチャンスがあります。

監督はイタリア人のサヴェリオ・コスタンツォ(Saverio Costanzo)。この監督の作品を観たのは初めてでしたが、サスペンスの追い込みが巧みで、先に対する期待感と不安感を最後まで弛むことなく引っ張ってくれます。

主演男優は「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」「奇跡の2000マイル」「ヤング・アダルト・ニューヨーク」など、最近よく見かけるようになったアダム・ドライバー(Adam Driver)。本作は「ヤング・アダルト・・・」と同時期に撮られた作品なのですが、彼独特の雰囲気が作品にマッチしていて、演技が冴え渡っています。

そして主演女優は、イタリア人のアルバ・ロルヴァルケル(Alba Rohrwacher)。どこかで見たような・・・と思ったら、「ミラノ、愛に生きる」で主人公の娘役だった人です。本作では、彼女のキャラクターがすべてと言えるほど重要な役なのですが、まさに迫真の演技を見せています。ちなみに彼女の妹は映画監督で、今年のミュウミュウのショートフィルム・プロジェクト“MIU MIU WOMENS TALES:女性たちの物語”のうちの1本を、姉のアルバ主演で撮っています。

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物語の舞台はニューヨーク。チャイニーズレストランのトイレの鍵が開かなくなり、アルバ・ロルヴァルケル演じるイタリア大使館員ミナがとじ込められてしまいます。そのとき、トイレの奥の個室を使っていたのが、アダム・ドライバー演じるジュード。偶然に見ず知らずの男女2人がトイレにとじ込められ、救出を待つことになります。

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それが出会いのシーン。2人の関係は順調に進展し、ミナの妊娠を機に結婚します。

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そして出産。男の子が生まれ、絵に描いたような幸福な物語が展開しますが、出産を境にミナが変化します。赤ちゃんに汚染された食材、肉類は食べさせないという独特の方針で、屋上の家庭菜園で作った野菜のみで子育てをするのです。

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そのせいもあって赤ちゃんの体重が増えず、心配したジュードが医者に相談すると、栄養不足だから無理にでも食べさせるようにと指示されます。当然のようにミナは大反対。そもそも現代医療も信じていませんので、医者に相談すること自体、自分に対する裏切りだという考えなのです。

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ジュードの強引な説得に押され、しぶしぶベビーフードを食べさせることを認めます。それでも体重が増えないので不思議に思っていると、こっそりミナが油を食べさせ、ベビーフードが消化吸収できないようにしていることがわかります。

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問題なのは、ミナに悪意があるのではなく、むしろ赤ちゃんに対する愛情に満ちていること。妊娠中に出会った占い師の影響でエセ科学にはまっているだけなのです。その占い師は、生まれてくる子どもを“Indigo children”という用語で説明しますが、まさにニューエイジの思想です。

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ジュードは彼女の意志を尊重しながらも、赤ちゃんが死んでしまっては元も子もないので、思いきった作戦に出ます。もちろんミナも赤ちゃんを大切に育てたい、そのためには純粋さを重視した育児が必要だと思っていますので、その作戦も簡単にうまくいくはずありません。2人の間の緊張が高まり、物語はサスペンス映画らしい様相を帯びてきます。ここで効いてくるのがアルバ・ロルヴァルケルが漂わしている風情と透明なほど白い肌。精神的に追い込まれ、次第に常軌を逸していく様子が非常にリアルです。

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もちろん、アダム・ドライバーも好演しています。妻を信じたい気持ちと、妻を疑う気持ちが交差し、その中で赤ちゃんをどう守っていくかというアンビバレンツな状況を巧みに演じきっています。「ヤング・アダルト・・・」のブログでも書きましたが、観るたびに良くなる俳優さんです。

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打ち出しが地味な作品ですのでDVD化されるかどうかわかりませんが、機会があればご覧になってみてください。見応えのある佳作だと思います。

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公式サイト
ハングリー・ハーツ

[仕入れ担当]

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