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2017年1月30日 (月)

映画「未来を花束にして(Suffragette)」

00 1910年代英国の女性参政権運動を描いた作品です。私はこういった映画を観ると鼻息が荒くなって冷静さを失いがちなのですが、そのあたりを差し引いてもキャリー・マリガン(Carey Mulligan)の演技は一見の価値ありだと思います。

4年前に「華麗なるギャツビー」のブログで書いたように、観るたびに良い女優さんになっていきますね。「17歳の肖像」「わたしを離さないで」の芯の強い少女から、「ドライヴ」「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」のどこか儚げな女性まで幅広く演じられる人ですが、今回は持ち前の透明感を保ちつつ、市井に生きる女性らしい逞しさを滲ませてきます。

周りを固める女優陣も素晴らしくて、活動家仲間のバイオレット・ミラーを演じたアンヌ=マリー・ダフ(Anne-Marie Duff)、リーダー的な位置付けのイーディス・エリンを演じたヘレナ・ボナム=カーター(Helena Bonham Carter)をはじめ、実在の人物であるエミリー・デイビッドソン(Emily Davison)を演じたナタリー・プレス(Natalie Press)、参政権運動の先導者だったエメリン・パンクハースト(Emmeline Pankhurst)を演じたメリル・ストリープ(Meryl Streep)など実力派が揃っています。特にメリル・ストリープは短い登場場面ながらさすがの風格です。

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物語の始まりは1912年頃の洗濯工場。キャリー・マリガン演じるモードは、そこで生まれ、ものごころついたときからそこで働いている24歳の女性。母親も同じ工場で働いて父親のわからないモードを産み、若くして亡くなりました。洗濯工場といってもピンと来ないかも知れませんが、映画「あなたを抱きしめる日まで」のブログに書いたように女性の過酷な労働を象徴する場所です。

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そんな場所で働いていても、モードは優しい夫サニーと可愛い息子に恵まれていることもあって、現状を受け入れています。映画の序盤、ウェストエンドへ届け物に行ったモードがショーウィンドウに投石する運動家たちと出くわすのですが、彼女たちへの不快感を隠しませんし、その後、同じ工場のバイオレットから運動に誘われてもあっさり拒否します。

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息子の喘息の治療に通っている薬局の女主人イーディスが活動家だと知ってもあまり興味を示しませんでしたが、ふとしたきっかけで彼女たちと行動を共にすることになり、バイオレットの代理で議会証言をすることになります。そこで洗濯工場の実態、洗濯工場で働く女たちの待遇について、ありのままに述べるモード。

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国民保険法の制定などで有名なデビッド・ロイド・ジョージ(David Lloyd George)から、あなたにとって投票はどんな意味をもちますか?と訊かれ、投票できるなんて思ってもみなかったので、どんな意味があるかなんて考えたことはありません、と率直に答え、では何故ここに来たのですか?と問われ、もしかしたら違う生き方があるのではないかと思いました、と述べる場面は最初の大きな見せ場でしょう。

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その物怖じしない態度が仲間内で評判になり、活動家の一員として行動することになります。映画の原題である“”Suffragette”(サフラジェット)とは、闘争的な女性参政権運動のこと。目的のためには法を逸脱しても構わないという方針は容認し難い部分もありますが、女性にとってあまりにも壁が厚かったこの時代、エメリン・パンクハーストの演説にあるように、50年間も訴え続けて何も成果が出なかったわけです。現代とは大きく事情が異なりますので、急進的な活動に傾いていくことも否定しきれないように思います。

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ちなみに、デビッド・ロイド・ジョージはこの後、1916年に首相に就任するのですが、その前任者、映画で描かれた時代の首相を務めていたハーバート・ヘンリー・アスキス(Herbert Henry Asquith)は、ヘレナ・ボナム=カーターの曾祖父。映画をご覧になればわかりますが、結局、女性参政権は認められません。反対派だった首相の曾孫が急進派の活動家を演じるという面白さも映画の隠し味になっています。

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エンディングは1913年6月4日のエプソンダービーで参政権を訴えたエミリー・デイビッドソンが聖人化されていく場面。つい先日も、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ(Royal Holloway)が新しい図書館に彼女の名前を付けると発表していましたが、やったことの是非はともかく、彼女の遺志を現代に伝えることは、ある意味、時代の要請なのかも知れません。

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英国で初めて男女平等の普通選挙が行われたのがこの15年後の1928年。フランスや日本では戦後の1945年まで女性に参政権がありませんでした。日本の場合、楠瀬喜多のような例もありますので一概に言い切れない面もありますが、少なくとも欧州では映画の冒頭で告げられるように“Women do not have the calmness of temperament or the balance of mind to exercise judgement in political affairs(女性には政治判断をするための落ち着きも心の平衡もない)”という考えが優勢だったのでしょう。

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それを象徴するのが、女性参政権運動を取り締まるアーサー・スティード警部であり、モードの夫であるサニーです。特にサニーは、これまでリベラルな役が多かったベン・ウィショー(Ben Whishaw)が演じていることもあって、どこかで考えを変えるのではないかと期待させますが、モードの賃金が重要な世帯収入であるにもかかわらず、男性に従属する女であることを求め続けます。

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邦題も日本版ポスターもあまりにもあんまりですが、字幕翻訳は寺尾次郎さんなのでひとまず安心です。パッケージより中身と割り切ってご覧になってみてください。

公式サイト
未来を花束にしてSuffragette

[仕入れ担当]

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