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2017年1月 4日 (水)

映画「ヒトラーの忘れもの(Under sandet)」

00 昨日に続き北欧の映画です。とはいえ、こちらは第二次大戦後のデンマークが舞台で、テーマも描かれている世界もズシッと重いもの。ナチスドイツの敗残兵である少年たちが、ドイツ軍が埋めていった地雷の撤去作業に駆り出されたという史実をベースに物語が展開します。

ストーリーもきちんとした良作ですが、知られざる事実を白日の下にさらそうという意図は明確です。脚本を書いて監督したのはデンマーク人のマーチン・サンフリト (Martin Zandvliet)ですから、本作に限っていえば自国の行いに光を当てたことになります。とはいえ同様のことはフランスやノルウェイでも行わたようで、そういう意味では欧州全体の問題といえるかも知れません。

1929年にジュネーヴで締結された俘虜の待遇に関する条約(Geneva Convention of July 27, 1929. Article 32)で、捕虜(POW)を不健康または危険な仕事に従事させることは禁じられており、懲罰的な重労働をさせてはいけないことになっています。ですから、いくらナチスの敗残兵だからといって、命がけの作業をさせることは戦争犯罪です。

しかし、ドイツが埋めた地雷はドイツが責任をもつべきだという理屈と、彼らに報復したいという暗い感情が、この行為を正当化してしまいます。

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さらに複雑なことに、デンマークはドイツと交戦せず、大戦中も王国として自治を保ったままドイツの保護国となっていた関係で、日独間で始まった防共協定にも参加し、ソ連に軍を送るなど対独協力もしていました。つまり、連合国の一員ではありませんので、残されたドイツ兵は捕虜ではなく、駐屯していた将兵の一部が後始末をしているというこじつけが成り立ったのです。

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連合国の指揮下でデンマークの戦後処理が始まると、英国軍の発案でドイツ敗残兵を地雷撤去に従事させることになります。本作でデンマークの将兵が英国軍の意のままに動いているように描かれているのも、そういった事情を受けてのことのようです。

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映画は、ジープでやってきたデンマーク軍のラスムスン軍曹が、列になって引き揚げていくドイツ兵の1人を殴りつけ、いかに彼らに対する憎しみが強いか見せつけるシーンでスタート。その後、浜辺に旗を立てて回り、彼が地雷撤去を担当することがわかります。

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その作業要員として送られてきたドイツ兵が、まだあどけない少年ばかりで驚きますが、英国軍の意向を受けた上官の指示ですから受け入れざるを得ません。兵士として未熟な彼らを怒鳴りつけながら訓練し、作業を進めます。

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とはいえ心の中では葛藤があります。処理を誤って腕を吹き飛ばされた少年兵が泣きながら母親を呼ぶ姿をみて不憫に思いつつ、ナチスの残党に同情することはないと自らを律する日々。それでも、長く一緒にいることで、次第に情が移ってきます。

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そんな軍曹と少年兵の感情の動きを追いながら、ラスムスン軍曹、すなわちデンマークが自らの良心と反ナチスの憎悪の間でいかに落とし所を見つけるかを描いていきます。原題や独題は“砂の下”という単純なものですが、英題の“Land of Mine”は、“Mine”の2つの意味を絡めた秀逸なもの。暢気な邦題からは想像しにくいシリアスな1本です。

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公式サイト
ヒトラーの忘れものUnter Dem Sand)(Land of Mine

[仕入れ担当]

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