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2017年5月22日 (月)

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー(Manchester by the Sea)」

00 ニューイングランドの小さな町をタイトルにした静かな作品です。寡黙な主人公と冬景色の静謐さが、その裏側にある激烈な過去を際立たせていきます。今年のアカデミー賞で、主人公を演じたケイシー・アフレック(Casey Affleck)が主演男優賞、脚本と監督のケネス・ロナーガン(Kenneth Lonergan)が脚本賞を受賞しました。

じわっと感動が押し寄せてくるとても味わい深い映画です。まず、ケイシー・アフレックの心情を滲ませる演技が素晴らしい。当初はマット・デイモンが演じる予定だったそうですが、プロデューサーに退いて正解です。そして、その元妻を演じたミシェル・ウィリアムズ(Michelle Williams)の圧倒的な存在感。おそらく画面に映るのは延べ5分ほどだと思いますが、特に終盤の1シーンは観客の感動を1人で総ざらいしていくほどの演技です。

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ボストン郊外のクインシーでアパートの用務員(janitor)として働くリー・チャンドラー。住人たちから頼られ、ときには心ない言葉を浴びせられながらも、淡々と仕事をこなし、ひっそりと暮らしています。そこに、故郷で暮らしていた兄、ジョーが亡くなったという電話がかかってきて物語がスタート。

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その故郷というのがマンチェスター・バイ・ザ・シー。ボストンから北東に50Km、マサチューセッツ湾の北端にあたるアン岬(Cape Ann)にある鄙びた漁村です。リーは数年前に町を出てから一度も帰郷していません。その原因が中盤で描かれ、彼が心を閉ざしている理由がわかるのですが、これは書かないでおきます。

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故郷の病院に駆けつけると既に兄は亡くなった後で、ジョーの友人であるジョージと担当医に迎えられます。彼が遺していったのは一人息子のパトリックと自宅、エンジンが故障気味の船が1艘。パトリックの母親はアル中で行方知れずになっていますし、兄弟の叔父は遠く離れたミネソタ州ミネトンカで暮らしています。リーが中心となって葬儀の手配やら後始末をしなくてはなりません。

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ジョーの遺言を確かめるために弁護士のもとに赴き、リーがパトリックの後見人(guardian)に指名されていたことを知ります。彼の遺産には、リーがクインシーから当地に引っ越してくる費用も見積もられています。しかしリーはこの町を捨てた人間。戻って来る気はありませんので、パトリックを連れてボストンに引っ越そうと考えます。

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パトリックには高校生活があり、友人やガールフレンドもたくさんいますので、ここを離れたくありません。どこでも働けるリーがこちらに移ってきた方が良いと主張します。いわばリーの仕事を軽んじているのですが、リーも仕事に誇りを持っているわけではありませんので静かに耳を傾けるのみです。

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リーとパトリック、叔父と甥にあたるこの2人の掛け合いがとても良い感じです。父を亡くしたというものの、大きく世界が開かれているパトリックと、理解者だった兄まで失い、さらに心を閉ざしていくリー。後見人としての責任を全うしなくてはいけないという義務感とのせめぎあいが表情から伝わってきます。ところどころに織り込まれるアイルランド系ブルーカラーらしい生活感が切なさを増幅します。

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葬儀の段取りをしていると、元妻のランディから電話がかかってきます。ジョーには世話になったので葬儀に出席したいということで、断る理由もありませんので、リーはそれを受け入れます。

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ジョーが操縦するボートでリーと8歳のパトリックがふざける場面など、過去の映像を随所に挟みながら物語が展開し、町を去る前のジョーやパトリックとの関係、仲睦まじく暮らしていた頃のランディとの関係など、リーの過去が少しずつ描かれていきます。

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そして彼の心情がすべて明らかになるのが、冒頭で記したランディとの邂逅のシーン。ミシェル・ウィリアムズの情感豊かな語りが引き金となり、ほんの束の間、ケイシー・アフレックの抑え込んだ演技で封じ込められていたリーの内面が噴き出します。そしてそれを抑え込もうとするリーに見せる表情の絶妙さ。「ブルーバレンタイン」や「テイク・ディス・ワルツ」のミシェル・ウィリアムズがお好きな方にはたまらない名場面だと思います。

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パトリックのガールフレンドを演じたカーラ・ヘイワード(Kara Hayward)は「ムーンライズ・キングダム」で長女役だった人。パトリックを演じたルーカス・ヘッジズ(Lucas Hedges)も「ムーンライズ・キングダム」に出ていた他、「グランド・ブダペスト・ホテル」や「とらわれて夏」にも出演したそうですが、どの役だったか覚えていません。とはいえ、本作で注目が集まり、グレタ・ガーウィグが監督を務める「Lady Bird」や、ジョナ・ヒルの初監督作品など今後の出演作が目白押しのようです。

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ついでながら、ケネス・ロナーガン監督も通行人役でカメオ出演しています。弁護士事務所の後、言い争いながら歩いていたリーとパトリックに“何て親だ(Great parenting)”と嫌味を言って、リーから悪態をつかれる男性で、鮮やかな青の防寒着が目印です。

公式サイト
マンチェスター・バイ・ザ・シーManchester by the Sea

[仕入れ担当]

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