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2017年6月19日 (月)

映画「ローマ法王になる日まで(Chiamatemi Francesco - Il Papa della gente)」

00 先月、仕入の合い間にシスティーナ礼拝堂を見学し、バチカンへの興味が高まっていたこともあって観に行ってきました。ちなみに私はクリスチャンではありませんし、その他、特定の宗教に対する信仰もありません。

この映画は現ローマ法王(教皇)フランシスコが、コンクラーベを前に過去を追想するスタイルで展開します。具体的には若き司祭ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(Jorge Mario Bergoglio)がアルゼンチンの軍政時代、いわゆる汚い戦争(Guerra Sucia)の時代をどう生き抜き、それが法王の現在の姿にどう繋がっていくのか、といったあたりがポイント。結果的にアルゼンチン近代史を描いた部分が中心となりますので、特にカトリックに関する知識がなくても楽しめる作品になっていると思います。ついでながら会話はほとんどスペイン語です。

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ご存知の方も多いかも知れませんが、ホルヘはもともとブエノスアイレス大学で化学を専攻していた人。大学卒業後、イエズス会の神学校で学びます。一時的にHickethier-Bachmann研究所の食品部門で働いていたそうで、映画に登場するエステル・バッレストリーノ(Esther Ballestrino)は当時の上司です。この偶然の出会いがベルゴリオに大きな影響を与えることになります。

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映画の幕開けは、神学校に入る前のホルヘが友人たちとバーに集まっているシーン。ペロン派か非ペロン派かといった政治談義を交わす、ごく普通の学生です。その約10年後、1969年に司祭となり、73年には30代半ばという若さでアルゼンチン管区長に任命されるのですが、映画の軸になるのがこの70年代。政治的混乱が続いていたアルゼンチンにペロンが復帰し、安定を図ろうとするものの国民の期待に添えず、ビデラ将軍による軍事独裁に突き進んでいった時代です。

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この最中に、教会への弾圧が強まり、ホルヘと親しかった司祭が粛正される事件が起こります。民衆を扇動するのは危険だと、ホルヘは忠告に出向くのですが、貧民救済という司祭の強い意志の前にあえなく屈し、悲劇的な結果を招きます。描かれている雰囲気から、背景には土着民とポルテーニョ(porteño)と呼ばれる白人中心の都市住民の格差問題がありそうですが詳しくわかりません。いずれにしても、ホルヘは深入りしないのです。

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この映画の良いところは、ホルヘを根っからの善人として描かず、こういった難しい状況に置かれた際、組織の側に立ってしまう弱さを見せるところでしょう。ホルヘはある意味、世渡り上手で、expectation managementに長けた人物なのですが、それを正義のオブラートで包み隠そうとしないあたりに映画の作り手の誠意を感じます。

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またエステルの娘が誘拐された際は、宗教指導者としての地位を利用してビデラ大統領に陳情します。結果的に娘は釈放されるのですが、その後、行方不明者の母の会で活動していたエステルが拘束されて殺害されてしまいます。

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ここでは、宗教関係者の密告が横行していた事実をさらっと描き、カトリック教会に対する批判も忘れません。なお、この行方不明者の母の会(Asociación Madres de Plaza de Mayo)は今もなお続いており、先日も、孫を捜し求めて活動する女性がBBCで取りあげられていました(I want to find my grandchild before I die)。

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ホルヘの人間味という面では、久しぶりに実家を訪ね、母と会話するシーンが印象的です。政治的弾圧と教会内部の確執で苦悩していた時期ですので、おそらく気分転換のつもりだったのでしょう。ところが母親から「毎日、祈っているだけで楽園のような生活ね」と気軽に言われてしまい、憤りを隠しながら、母の手料理を「おいしいよ」と食べきるホルヘ。映画で描くほどですから良く知られた逸話なのでしょうが、こういった負の感情を隠さず見せる法王にも好感が持てます。

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その後、ドイツに留学したホルヘは、政治的混乱から解放されて宗教的探究に没頭することになります。そこで出会ったのが、結び目を解くマリア(Maria Knotenlöserin)という絵画。複雑に絡み合ってしまった苦悩の結び目を、マリアが解いてくれるという信仰を描いたもので、それをアルゼンチンに持ち帰って布教のツールにしたようです。これがホルヘの気持ちを捕らえた要因に、アルゼンチンの複雑怪奇な近代史があったことは想像に難くないでしょう。

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ということで、Rolling Stone誌の表紙まで飾った稀代のスーパースター、法王フランシスコ(Papa Pop)の人となりを知るには最適な映画です。南米に興味をお持ちの方にもお勧めです。

公式サイト
ローマ法王になる日までChiamatemi Francesco - Il Papa della gente

[仕入れ担当]

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