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2017年7月31日 (月)

映画「甘き人生(Fai bei sogni)」

00 イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ (Marco Bellocchio)監督の新作です。といっても私それほど熱心なファンではないのですが、本作は「愛の物語にイタリアの歴史が映し出される」というキャッチコピーがとても魅力的だったので観に行きました。トリノを舞台に現代史が描かれるといえば、赤い旅団などが登場するスリリングな展開をイメージしてしまいます。

しかしこれは大きな勘違いで、実際はイタリア人ジャーナリスト、マッシモ・グラメッリーニ(Massimo Gramellini)の自伝小説の映画化。少年時代に母をなくし、心を閉ざしたまま大人になったマッシモが、エリザという女性との出会いを通じて変化していくお話です。要するに、ママが何より大切というイタリア男の喪失感を描くもので、トリノの歴史は背景の一部でしかありません。赤い旅団は同監督の「夜よ、こんにちは」でしたね。

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イタリア映画にはよくあることですが、本作も文化的背景を知らないとピンとこない部分が多々ある映画です。その上、原作小説がイタリア国内で100万部を超えるベストセラーになったそうで、観る側が作者(=主人公)の背景を知っているという前提で作られています。マッシモの半生を追うだけにならないように時間軸を入れ替えたりしている分、若干、わかりにくくなっている部分もありますので、サイト等で基礎知識を仕入れてから観た方が楽しめるかも知れません。

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幕開けは、マッシモと母親が部屋で踊っているシーンで、いかに母と息子の仲が良かったかを伝えます。そして夜中、ベッドで寝ているマッシモの毛布を直し、「Fai bei sogni(良い夢を)」と声をかけて寝室から出て行くシーン。その直後に警察が来る騒ぎになり、後日、神父から君の母親は天に召されたと伝えられます。

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それに続いて家に棺が運び込まれ、葬儀が行われるのですが、知識のある人なら、教会で葬儀が行われなかったことの意味、つまり教義に反する自死であったことがわかるそうです。

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なかなか母親の死が受け入れられないマッシモを、自宅の目の前にあるスタジアムに連れ出す父親。同じ地元チームでも、超メジャーなユヴェントスFCではなく、トリノFCの試合に行くあたりが地元愛です。母親が亡くなった日が1969年12月31日ですから、その年ならコッパ・イタリアで準優勝、翌年ならコッパ・イタリアで優勝していますので、きっとその頃のエピソードなのでしょう。

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大人になったマッシモ。サッカー愛が実ってスポーツジャーナリストとなり、イタリア最大の新聞であるラ・スタンパで働きます。

9歳で母親を喪ったマッシモですから1990年代には40代の働き盛りです。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争時のサラエボへ派遣され、記事が話題になったりしたようですが、そのPTSDでしょうか、帰国後にパニック障害になり、治療を受けた病院で女医のエリーザと出会います。

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彼女との会話で、父親が心筋梗塞だと説明していた母の死因に疑問を抱き、父親の死後、トリノの旧宅を売るために家財道具の処分に戻った際、真実を知ることになります。そしてエリーザとの関係を通じて、30年間抱えてきた母の喪失感と折り合いを付けられるようになっていくという物語です。

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母親との思い出で心の友でもあるTVドラマの怪物ベルフェゴール(Belphégor)や、エリーザの高飛び込みを始めとするさまざまな落下シーンが象徴的に使われます。

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ちなみに少年マッシモが窓から落とすのはナポレオンの胸像。なぜナポレオンか、というと、サルディーニア王国の事実上の首都だったトリノの歴史(プロンビエールの密約とかガリバルディの時代)と関係ありそうですが、コレクションしていた父親とそれを放擲したマッシモ少年の意識の違いを象徴するものと受け取って良いでしょう。

また老いた父親と再会する場面はスペルガの悲劇(Tragedia di Superga)の慰霊祭だそうで、飛行機墜落によるトリノの悲劇をマッシモの個人的悲劇に重ね合わせているようです。

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このようにさまざまな意味づけを重層的に織り込んだ作品ですので、すべてを理解することは難しいかも知れませんが、凝った映像と巧みな展開、出演者の見事な演技を楽しむだけでも満足できる作品だと思います。

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成長してからのマッシモを演じた「フォンターナ広場」「ローマに消えた男」のヴァレリオ・マスタンドレア(Valerio Mastandrea)の他には、女医エリーザを演じた「アーティスト」「ある過去の行方」「あの日の声を探して」「シークレット・オブ・モンスター」のベレニス・ベジョ(Bérénice Bejo)、少年マッシモの友人エンリコの母を演じた「ココ・アヴァン・シャネル」「風にそよぐ草」「ヴィオレット」のエマニュエル・ドゥヴォス(Emmanuelle Devos)といった実力あるフランス女優が出演しています。

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公式サイト
甘き人生

[仕入れ担当]

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