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2018年2月13日 (火)

映画「ローズの秘密の頁(The Secret Scripture)」

00 「マイ・レフトフット」「父の祈りを」「ボクサー」のジム・シェリダン(Jim Sheridan)監督が久しぶりにアイルランドを舞台に撮った作品です。原作はダブリン生まれの劇作家セバスチャン・バリー(Sebastian Barry)が書いた同名小説で、2008年にコスタ賞(旧ウィットブレッド賞)を受賞しています。

原題になっている“秘密の聖書”というのは、半世紀近くにわたって精神病院に収容されている主人公ローズが、自分の記憶を書き留めてきた聖書のこと。人々の虚偽の供述で入院させられ、電気ショックによる治療で何が事実で何が作り話か曖昧になりつつあるローズにとって唯一の記憶の拠り所です。

映画の幕開けは、ヨブ記(The book of Job)のJobの部分をペンで上書きしてRoseに変えているシーン。まさにこの物語を端的に表現している部分で、幸福に暮らしていたローズが、まるでヨブのように悪魔の仕打ちを受けてすべてを失ってしまうお話です。老いたローズが収容されている聖マラキ(St. Malachy)病院の取り壊しが決まり、転院前に診察が必要だということで送られてきたグリーン医師がローズの過去を蘇らせます。

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第二次大戦初期、アイルランド北部の町スライゴに疎開してきたロザンヌ(愛称ローズ)。叔母が経営する禁酒ホテル(temperance hotel)で給仕の仕事に就きますが、その美貌が災いし、地元の男たちにつきまとわれます。その中で彼女が心惹かれたのが酒屋のマイケル。しかし彼は町で“英国寄り”と言われていて、ローズはマイケルと会話を交わしただけで脅迫めいた忠告を受けます。

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それに対して、一方的にローズに熱を上げているのがゴーント神父。カソリックがマジョリティである当地ではある種の権力者でもあります。教会主導の禁酒ムーブメントに呼応している叔母は当然カソリックですが、ローズはプロテスタントです。そんな立場でそんな彼女を追い回す神父は、とち狂っているとしか言いようがありません。

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狭い町ですから噂が噂を呼びます。映画「ブルックリン」で、アイルランドに帰国した主人公が風評にさらされ“ここがどういう場所か思い出したわ”と吐き捨てる場面がありますが、ローズも悪い噂をたてられ、給仕の職を失い、町外れの小屋で暮らすようになります。

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そんなある日、英国空軍のパイロットとしてドイツ軍と闘っていたマイケルの飛行機が小屋の近くに墜落します。落下傘で脱出したマイケルを地元の反英派が追いますが、ローズが小屋に匿って難を逃れ、2人だけの密かな暮らしが始まります。そして誰も列席者のいない結婚式。そのまま幸せに暮らせれば良いのですが、もちろんそんなわけにはいきません。

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神父は、ローズが"nymphomania(色情狂)"であるという報告書を提出し、叔母の承諾を得て精神病院に収容してしまいます。この時代、精神病院は教会の附属施設ですから、神父としては自陣に引きずり込んだようなものですが、ローズの心はマイケルから離れることはありません。その後、ローズが妊娠していることがわかり、物語が大きく動いていきます。

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老いたローズを演じたのが、「アンコール!!」のマリオン、「大統領の執事の涙」の女主人、「フォックスキャッチャー」のジョンの母親などを演じて作品に深みを与えてきたヴァネッサ・レッドグレイヴ(Vanessa Redgrave)。本作でも強い意志を秘めた頑なな老婆を好演しています。

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そして若い頃のローズを演じたルーニー・マーラ(Rooney Mara)。以前も「キャロル」での演技と美しさをべた褒めしましたが、今回も持ち前の透明感ある美しさを余すところなく発揮しています。聖職者を狂わせてしまう美貌の持ち主という設定も、彼女なら納得できます。

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マイケルを演じたのは「シング・ストリート」のお兄ちゃん、ジャック・レイナー(Jack Reynor)。髪を短くしていますが、愛嬌のある顔立ちをみて思い出しました。

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ゴーント神父を「恋のロンドン狂騒曲」に出ていたテオ・ジェームズ(Theodore James)、グリーン医師を「ハンナ」のエリック・バナ(Eric Bana)が演じています。

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物語の仕掛けにすぐ気付きますので、感動的なクライマックスというわけにはいかないかも知れませんが、一つひとつのエピソード、一人ひとりの演技は十分に満足できるものだと思います。このような重厚な作品でアイルランドの歴史や空気感に触れるのもたまには良いでしょう。

公式サイト
ローズの秘密の頁

[仕入れ担当]

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