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2018年3月19日 (月)

映画「聖なる鹿殺し(The Killing of a Sacred Deer)」

00 前作「ロブスター」に続き、またもや奇妙な映画をカンヌ映画祭に出品したギリシャ人監督のヨルゴス・ランティモス(Yorgos Lanthimos)。前作は審査員賞でしたが、本作では脚本賞を獲ってしまいました。

本作の主人公である心臓外科医のスティーブンを演じているのは前作でも主演を務めたコリン・ファレル(Colin Farrell)。この後に出演した「ビガイルド」もニコール・キッドマンと出ていますので、二つの共演作がパルムドールを争うことになりました。ちなみにニコール・キッドマン(Nicole Kidman)はこのとき70周年賞(Prix du 70e anniversaire)を受賞しています。

映画の幕開けは冠動脈バイパス術の映像。心拍動下手術というそうですが、むき出しになった心臓から鼓動が聞こえてきそうな生々しさです。きっとホラー映画に分類される作品だと思いますが、ギリシャ神話を下敷きにした脚本だそうで、要するに神の怒りを静めるために自らの子どもを生け贄に出さざるを得なくなるという不条理を描いていきます。

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手術の映像に続くのは、ダイナーのテーブルで待つスティーブンの前に少年が現れる場面。このマーティンという少年と交わす会話がぎこちなくて不自然です。お互い親しげに振る舞おうと思っているのに、心の壁があって距離が縮まらないという感じ。続いて別の日に待ち合わせたときには、スティーブンが腕時計をプレゼントします。マーティンは感謝を述べますが、そう振る舞うのが正しいので喜んでみせているという曖昧な表情です。

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このあたりで彼らが父子でないことがわかってきます。郊外の広々とした邸宅で暮らすスティーブンには、美しい妻アナと娘のキム、息子のボブがいて、絵に描いたような幸せな家庭です。病院の同僚には、マーティンは娘の友だちだと紹介しますが、その後、マーティンを自宅に招いた場面で、嘘だったことが観客にわかります。

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いったいマーティンは誰なのか。ちょっとネタバレになりますが、スティーブンが手術した患者の息子なのです。その患者が亡くなり、その贖罪的な意味もあってスティーブンはマーティンに親切にしているのです。

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スティーブンの勤務先である病院だけでなく、自宅にも出入りするようになったマーティン。なぜかキムと親しくなり、観客の関心がそちらに向いていると、突然、ボブの脚が動かなくなります。あらゆる検査をしますが、原因不明。心因性のものではないかという診断が下りますが、今度はキムの脚も動かなくなり、映画全体がどんどん不穏な空気に包まれていきます。

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そしてスティーブンは、マーティンからお告げのようなものを受けることになります。彼いわく、スティーブンはマーティンの父親を殺したのだから、かわりに自分の家族から犠牲を出さなくてはいけない。脚が動かなくなった後、しばらくすると目から出血して、最後は死に至るというのです。

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もちろんマーティンが彼らの脚を動かなくしたわけではありません。これは前作「ロブスター」では結婚できない男女が動物に変えられてしまう世界だったのと同じように、誰かの家族を殺したら自分の家族を生け贄にするという世界なのです。ですから医学的な解釈など抜きにして、そういうものだと思って観るしかありません。

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この突拍子もない話が、それなりの説得力を持つのは、マーティンを演じたバリー・コーガン(Barry Keoghan)の薄気味悪さでしょう。クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」ではキリアン・マーフィーに誤って殺される純朴な少年を演じていましたが、本作では正直そうな振る舞いの裏に何かありそうな不気味なキャラクターを巧みに演じています。

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そしてスティーブンの妻、アナを演じたニコール・キッドマンの素晴らしい演技。持ち前の美しさゆえ真顔での語りが正気か狂気か見分けがつかず、先が読めない観客は、常にスクリーンに引き付けられることになります。彼女とバリー・コーガン、2人の演技力に負う映画と言えるでしょう。

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娘のキムを演じたのは子役出身のラフィー・キャシディ(Raffey Cassidy)。彼女が劇中、エリー・ゴールディングの“Burn”を無伴奏で歌うのですが、その不安定な声が耳に残ります。印象的な場面の一つですので、後で歌詞を確かめてみましたが、特に伏線になっているわけではなさそうでした。

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音や映像で観客の心を揺さぶるタイプの作品です。ちょっとグロい場面、エロティックな場面がありますので、それらが目を引くかも知れませんが、前作にあった笑える要素はほとんどありません。敢えて言えば、生け贄が必要だと一家が理解した途端、それぞれが妙なアピールをし始めることぐらいでしょうか。

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また、個人的には、銃声が響いて暗転でも良かったのではないかと思いますが、ちゃんと結末まで見せてくれる親切な作品でもあります。ということで、ひと言でまとめれば、不思議な設定とバリー・コーガンの怪演が見どころの映画と言えそうです。

公式サイト
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアThe Killing of a Sacred Deer

[仕入れ担当]

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