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2018年4月 2日 (月)

映画「ウィンストン・チャーチル(Darkest Hour)」

00 話題作ですね。話題の日比谷TOHOシネマズで観てきました。
先ごろのアカデミー賞で、チャーチルを演じたゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)が主演男優賞、その特殊メイクを手がけた辻一弘氏がベストメイクアップ賞を獲得しましたが、まさにその評価の通りで、ゲイリー・オールドマンの迫真の演技と、その化けっぷりを観に行く映画だと思います。

ナチスドイツの進撃で英国の保守党政権が倒れ、チャーチル首班で挙国連立内閣が成立した約1ヶ月間の物語です。時代でいえば1940年の春。同時代を描いたクリストファー・ノーラン監督「ダンケルク」は戦地が舞台でしたが、こちらは議会を中心に話が展開します。監督は「路上のソリスト」「ハンナ 」のジョー・ライト(Joe Wright)で、彼の出世作となった「つぐない」にも英国兵がダンケルクへ敗走する場面がありました。

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副題の“ヒトラーから世界を救った男”は如何なものかと思いますし、チャーチルという人物については日本人としても現代人としても共感できませんが、ゲイリー・オールドマンが演じたチャーチルは、とても愛嬌のある魅力的なキャラクターです。

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また、ジョー・ライト監督の演出は、変わり者だけど決断力のある人物という部分を強調し、帝国主義的な部分を薄めていますので、観客からの理解も得やすくなっていると思います。しかし、ちょっとやり過ぎ感も否めません。

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たとえば地下鉄に乗り込んで市民と対話するシーン。脚本を書いたアンソニー・マッカーテン(Anthony McCarten)が史実ではないとインタビュー(こちら)で答えていましたが、ゲイリー・オールドマンの人懐っこさを活かして観客の気持ちを掴む巧みな演出だと思います。とはいえ、チャーチルが庶民的だったという設定以前に、もしこの類の作り話を日本の戦中を描いた映画に織り込んだら、事実を歪曲してると世界中から非難されるレベルの演出でしょう。インタビューアが、St.James' Park駅からWestminster駅まで現在は2分しかかからないが1940年には5分もかかったのか、とイジワルな質問をしているように、ある程度の知識があれば皮肉のひとつも言いたくなります。

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映画の中で触れられている通り、ダンケルクからの撤退はうまくいきましたが、カレーに留まった部隊はチャーチルの一存で全滅しました。この後、日本軍がシンガポールに侵攻した際にもチャーチルは徹底抗戦を命じ、全滅をおそれたパーシバル司令官(ダンケルクを経験した人です)と本国司令部の判断で投降したというのもよく知られた話です。軍人出身ながら、兵隊の命など何とも思わなかった身勝手な男、というのが客観的なチャーチル像だと思います。

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そういった意味で言えば、本作はチャーチルの夢見がちな性格を好意的にとらえることで、自信を失った英国人を励ますファンタジー映画なのかも知れません。ですから、彼が信念を押し通したおかげで国民の結束力が強まり、最終的には閣僚や国王との関係もうまく収まったというオチで終わります。その信念を支えたのが、チャーチルの妻クレメンティーンであり、秘書だったエリザベス・レイトンであるという視点です。

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クレメンティーンを演じたのは、「砂漠でサーモン・フィッシング」「オンリー・ゴッド」と演技の幅を拡げてきたクリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)。うまい女優さんですね。彼女の演技がこの映画の屋台骨になっているのは間違いありません。そしてレイトン嬢を演じたのが「ベイビー・ドライバー」のリリー・ジェームズ(Lily James)。

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チャーチルの敵役は、ヒトラーではなく、前首相のネヴィル・チェンバレンと、ハリファックス卿:エドワード・ウッドです。チェンバレンを演じたのは「マリーゴールド・ホテル」シリーズの不良老人ロナルド・ピックアップ(Ronald Pickup)、ハリファックスを演じたのはスティーヴン・ディレイン(Stephen Dillane)。ジョージ6世を演じた「アニマル・キングダム」「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」のベン・メンデルソーン(Ben Mendelsohn)ともども、今までとは毛色の違う上流階級の役を味わい深く演じていました。

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いかにも良さげなスーツですが、ゲイリー・オールドマンとベン・メンデルソーンの衣装は、生前のチャーチルも懇意にしていたというサヴィル・ロウ最古のテーラー、Henry Poole & Co が仕立てたそうです。

公式サイト
ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男Darkest Hour

[仕入れ担当]

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