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2018年4月 9日 (月)

映画「ワンダーストラック(Wonderstruck)」

00キャロル」のトッド・ヘインズ(Todd Haynes)監督の最新作です。今回はがらりと趣きを変え、別々の時代を生きる少年と少女の物語。といってもSF映画ではありませんので時空を飛び越えたりしません。2つの物語がNYの自然史博物館を軸に繋がっていくのですが、古い時代をモノクロ映像のサイレント映画風、新しい時代をカラー映像のトーキー映画風に作るあたり、この監督ならではのこだわりを感じます

原作及び脚本は「ヒューゴの不思議な発明」の原作者であるブライアン・セルズニック(Brian Selznick)で、本作でもやはり主人公の出生の秘密が物語の鍵になります。「ヒューゴの……」の舞台はフランスのパリでしたが、こちらは米国。主人公の1人であるローズは1927年のニュージャージー州ホーボーケンで暮らす少女、もう1人の主人公であるベンは1977年のミネソタ州ガンフリントで暮らす少年で、どちらも家出してNYに向かうことになります。

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耳の聞こえない少女ローズは使用人のいる立派な邸宅で父親と暮らしています。聾者用の書籍で勉強するように厳しく叱責する父親の目を盗んで、人気女優のリリアン・メイヒューの記事を切り抜いて集めるのが楽しみ。リリアンのNY公演があると知った彼女は、実家を離れて自然史博物館で働く兄ウォルターから送られてきたポストカードを握りしめ、フェリーでNYへ渡ります。

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一方、ガンフリントの湖畔で母親エレインと2人で暮らしていた少年ベンは、母親を交通事故で失い、一時的に近くの親族の家に住んでいます。生前のエレインには何度も父親の消息を訊ねましたが、そのうち教えると言ったまま帰らぬ人になってしまいました。そんなある日、エレインの寝室で自然史博物館の古い本を見つけます。そこに挟まっていたNYの古書店Kincaid Booksのスリップに“Dear Elaine, I'll wait for you. Danny”と記されていることに気付いたベン。寝室から古書店に電話してみますが、呼び出し音が鳴っている最中に落雷があり、感電して気を失ってしまいます。

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病室で目が覚めると、耳が聞こえなくなっています。叔父や叔母は生きていただけで幸いといった様子ですが、父親の謎を解く糸口を見つけたベンは、いてもたってもいられません。従姉妹の手助けで1人NYへバスで旅立ちます。ガンフリントからNYまで2500キロ程度ありますから、概ね東京・福岡の2倍の距離です。1977年当時の長距離バスなら2日近くかかったのではないでしょうか。

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1927年のローズはNYに着き、リリアンが出演する劇場に行きますが、諸々の事情があり、楽屋から逃げ出すことになります。そして向かったのは兄ウォルターが働く自然史博物館。世界最大級の隕石“Ahnighito”の傍らで警備員に追われたり、抜かりなく見どころを映し込みながら兄との再会に至り、この時代のパートは終わります。

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1977年のベンがKincaid Booksを突き止めると、閉店してしまった様子。通りがかった少年が何やら教えてくれますが、耳が聞こえないので理解できません。そのまま彼の後をつけていくと、行き着いた先は少年の父親が働く自然史博物館。その少年ジェイミーと知り合いになったベンは、彼の秘密の部屋に案内され、これまでのいきさつを説明して自然史博物館の古い本を見せます。そして謎の解明に向かって進み始めます。

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ちょっとネタバレすると、自然史博物館には狼の標本(こちら)が展示されていて、それがガンフリント湖(Gunflint Lake, Northern Minnesota)の情景を再現したものなのです。自然史博物館の古い本とこの狼の標本の結びつきがベンの秘密を解く鍵になります。またクライマックスにはクイーンズ美術館のNY全域のパノラマ(こちら)が出てきてエンディングに向かうのですが、全編を通して博物館とNYに対する愛が溢れる映画です。

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愛が溢れるといえば、映画「ベルベット・ゴールドマイン」でデヴィッド・ボウイらしき人物を描きながら、タイトルと同名の楽曲は使わせてもらえなかったトッド・ヘインズ監督。その愛憎入り交じった気持ちは知る由もありませんが、本作では繰り返し“Space Oddity”(Velvet Goldmineのカップリング曲でもあります)が使われていて、ストーリーに結びつくのかというと、そうでもなさそうなところが微妙です。

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また映画の出来を言えば、それぞれの時代をきちんと再現して映像化した凝りようは、さすがトッド・ヘインズ監督という感じですが、話の作りは今ひとつで、最後に1人の登場人物の語りですべての伏線を回収してしまい、単純過ぎて肩すかしにあったような気分になります。そういう意味では、撮り方を学びたい人には向いているかも知れませんが、純粋に娯楽として楽しみたい人、特に物語重視の人には不満が残る作品だと思います。

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出演者としては、女優リリアン・メイヒューと後半で登場するもう一役の二役を演じたジュリアン・ムーア(Julianne Moore)と、ほんの僅かしか登場しないベンの母親エレインを演じたミシェル・ウィリアムズ(Michelle Williams)の2人が有名どころでしょう。

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ベンを演じたオークス・フェグリー(Oakes Fegley)はTVを中心に活躍している子役でディズニー映画にも出ているそうです。ローズを演じたミリセント・シモンズ(Millicent Simmonds)は実生活でも聴覚障碍を持つ少女で、今回はじめてオーディションで選ばれたそうですが、次はジョン・クラシンスキー監督の新作「A Quiet Place」でエミリー・ブラントと共演するそうです。その兄ウォルターを演じたコーリー・マイケル・スミス(Cory Michael Smith)は「キャロル」にも出ていた人ですね。

公式サイト
ワンダーストラックWonderstruck

[仕入れ担当]

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