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2018年5月14日 (月)

映画「さよなら、僕のマンハッタン(The Only Living Boy in New York)」

00 昨年末に日本公開された「ギフテッド」のマーク・ウェブ(Marc Webb)監督が、その直後に撮った映画です。1年間に2作公開というのはこの監督にしてはかなりハイペースですが、そのせいか物語の展開に、やや生煮えっぽい印象を受ける作品です。

とはいえ、さすがマーク・ウェブ監督、映像もロケーションも洒落てますし、雰囲気作りも選曲も気が利いています。原題になっているサイモン&ガーファンクルの“The Only Living Boy in New York”をはじめ、ルー・リードの“Perfect Day”やボブ・ディランの“Visions of Johanna”など、曲のバックグラウンドを知っているとさらに楽しめる仕掛けも、この監督ならではでしょう。

脚本はアラン・ローブ(Allan Loeb)が2004年にUCLAを卒業し、NYに転居して初めて書き上げたものだそうです。若書きというのでしょうか、人生の根幹にかかわる大問題をテーマにしている割に、あまりにもあっさり決着してしまうところが難点。先日観た「ワンダーストラック」もそうでしたが、NYに対する思い入れと、ストーリーや人物造形に対する思い入れをバランス良く収めるのは思いのほか難しいことなのかも知れません。

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物語の大筋は、大学を卒業して親元を離れたトーマスが、隣人である初老の男と知り合い、彼との交流を通じてひと皮むけるという成長譚。そのきっかけとなるのが、父親の愛人との出会いで、ややマザコン気味のトーマスにとって忌まわしい存在であるはずの彼女に惹かれてしまうところがポイントです。

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トーマスは大学を卒業して実家を出たものの、いまだモラトリアムな暮らしをしている青年。彼には古書店Pale Fire(ナボコフですね)で働くミミというガールフレンドがいるのですが、彼女には離れて暮らす恋人がいて、それぞれの関係が曖昧な状態です。

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そんな中、ミミが“ザグレブに留学しようと思っている”と打ち明けたことで、トーマスは身の振り方を決める必要に迫られます。そこで出会ったのが、隣室に引っ越してきたばかりというW・F・ジェラルドで、なぜか彼に人生相談をして、次第に親しくなっていきます。

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トーマスが暮らすアパートはロウアーイーストサイドにありますが、彼の両親はアッパーウェストサイドのセントラルパークを見下ろすアパートに住んでいます。要するに、エスタブリッシュメントである父親と、それに反発するだけで何ものにもなれない息子という伝統的な構図。小説家になりたいという夢を捨てて出版業を成功させた父親イーサンは、小説を諦めるか否か悩み続けている息子を正しく導いてあげたいと思っていて、似たもの同士であるが故の難しさがあるのです。

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母親ジュディスは昔、美術評論を書いていたという女性で、結婚してからは心の病もあって、やや引きこもりがちです。といっても実生活に支障が生じるほどではありませんので、表面的には裕福で幸せな3人家族です。

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ある日、ミミと出掛けたクラブで、父と愛人の逢瀬を見てしまったトーマス。母を裏切った父に対する怒りと、その美しい愛人への興味がないまぜになり、ミミとの関係もあって混乱しますが、最終的に好奇心が勝って彼女を尾行し、父から引き離すという大義名分でその謎めいた女性、ジョハンナと接触します。

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ユダヤ系の同級生の結婚パーティにミミと出掛けたトーマスは、キッパ帽の富豪に伴われて来ていたジョハンナを見つけます。父だけでなく、金持ちの老人を片っ端から手玉にとっていると思い込んだトーマスが彼女を責めたて、そこから2人の関係が変化していきます。その結果、トーマスと父とジョハンナの3人の問題に発展し、そこにミミの将来と母親の過去が絡みあって、W・F・ジェラルドが語るストーリーに繋がっていきます。

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トーマスを演じたカラム・ターナー(Callum Turner)、ミミを演じたキーアージー・クレモンズ(Kiersey Clemons)は共に売り出し中の若手ですが、脇を固めた俳優陣はとても豪華です。

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父親イーサン役は「ゴーストライター」「愛さえあれば」のピアース・ブロスナン(Pierce Brosnan)、母親ジュディス役は先ごろニューヨーク州知事選への立候補表明で話題になったシンシア・ニクソン(Cynthia Nixon)。「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダですね。

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愛人ジョハンナを演じたケイト・ベッキンセール(Kate Beckinsale)は、「セックス・アンド・ザ・シティ」っぽい外見ながら、元々はケネス・ブラナー監督「から騒ぎ」でデビューしたという英国人女優。オックスフォード大学でフランス文学を学んだというインテリです。

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そしてW・F・ジェラルドを演じたジェフ・ブリッジス(Jeff Bridges)。「クレイジー・ハート」や「トゥルー・グリット」でアカデミー賞にノミネートされた名優ですが、最近はB級っぽい「キングスマン: ゴールデン・サークル」にも出ていました。彼は本作のプロデューサーも兼務しています。

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こういったベテラン俳優の演技と、ニューヨークらしい風景やライフスタイルを味わう映画です。映画の公式サイトにロケーションの説明(こちら)がありますので、それをご覧になってから観るとより楽しめます。私はといえば、その昔「ユー・ガット・メール」でNYの書店が全部GAPに変わってしまうと嘆く場面がありましたが、本作ではアーバンアウトフィッターズに変わってしまったと嘆いていて、そういえばUrban OutfittersもAnthropologieも日本には出てこないなぁと思いながら観ていました。

公式サイト
さよなら、僕のマンハッタンThe Only Living Boy in New York

[仕入れ担当]

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