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2018年10月29日 (月)

映画「華氏119(Fahrenheit 11/9)」

00 2004年の「華氏911」でブッシュ政権を批判し、ドキュメンタリー映画としては稀なパルムドール獲得を果たしたマイケル・ムーア(Michael Moore)監督が、ドナルド・トランプの大統領就任が確実になった11月9日(一般投票の翌日)に引っかけて、新たな政権批判の映画を送り出しました。といっても今回は共和党叩きだけでありません。なぜトランプみたいなおかしな男が大統領になってしまったか突き詰めていくなかで、前政権を担ったオバマ大統領や、トランプの対抗馬だったヒラリー・クリントン、投票を怠った有権者までもが批判の対象になります。

マイケル・ムーアの視点は、生まれ故郷であるミシガン州の市民としてのもの。まずはPCメーカーのゲートウェイCEOなどを歴任した後、2011年にミシガン州知事に就いたリック・スナイダー(Rick Snyder)を俎上に上げます。ウシ柄の箱に入ったGatewayといえばDellやCompaqと並ぶ画期的な直販業者でしたが、今はエイサーに吸収されてしまったようですね。飛ぶ鳥を落とす勢いだったゲートウェイを上場させ、その後10年ほど取締役を務めたスナイダーは、ビジネスの手腕を政治に活かすという触れ込みで知事選に打って出ます。トランプ大統領と同じ売り文句です。

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着任早々、緊縮財政の検討を始めたスナイダーはミシガン州フリントの水道水の水源を変える決定を行い、フリント川からの取水を許可するのですが、その直後から子どもたちに発疹などの症状が現れはじめます。そして地元の大企業であるGMは、部品に錆が生じるという理由で市の水道の使用をやめ、水源を変えるのです。そのまま水道水を使用するしかないフリントの住民は40%が貧困ライン以下。フリント出身のマイケル・ムーアが、GMの最高経営責任者だったロジャー・スミスをこき下ろした「ロジャー&ミー」でデビューしたのはご存じの通りですが、なにやら因縁を感じさせる展開ですね。

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マイケル・ムーアは州知事のスナイダーを責めるだけでなく、事態収拾のために当地を訪れ、水道水を飲むふりをして見せた当時の大統領、バラク・オバマの映像を挟み込みます。このあたりが本作のキモに繋がるのですが、大統領選でヒラリー・クリントンが負けた理由として、ペンシルヴェニア、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンの軽視、つまり労働者が集中する五大湖周辺での得票を過信して選挙活動を行わなかったからだとマイケル・ムーアは喝破します。要するに民主党の慢心による自滅です。

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対するトランプはこの4州で精力的に活動していたそうです。それを見ていたマイケル・ムーアは開票前にトランプの勝利を予言しました。ウォール街の献金に支えられたヒラリーより、社会主義者と揶揄されたバーニー・サンダースに共感していた労働者層が本選での投票をやめた結果、無投票1億、ヒラリー6600万、トランプ6300万という結果になり、選挙人制度によってトランプが勝利してしまうのです。

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ヒラリー陣営の戦略ミスといってしまえばそれまでですが、まさかトランプが勝利することはあるまい、と思って投票しなかった有権者にも原因があるとマイケル・ムーアは指摘します。そしてエール大学のティモシー・スナイダー教授にトランプ政権とナチスの類似性を指摘させ、トランプが災害などを言い訳に選挙制度を停止して独裁制に向かう可能性を示唆します。ちょっとした油断がトランプ大統領を生んだように、気づかないうちにさらに恐ろしい世の中に引きずり込まれるかも知れません。

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つまりマイケル・ムーアが訴えているのは“投票しなさい”ということ。一部の熱狂的信者が支えるトランプ政権にとって、高い投票率こそ鬼門です。それはどこの国でも同じで、政治に対する無関心が、特殊な思想や宗教で結びついた人々中心の施政に繋がっていくのです。

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日本では野党があまりにもあんまりで困った状況ですが、米国では民主党の改革が進んでいるそうで、中間選挙の予備選では多くの新人が躍進し、女性候補の数が史上最多になったそうです。

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また、マイケル・ムーアは若い世代の動きにも注目します。その代表が銃乱射で17人の同級生を失ったフロリダ・パークランドの高校生たち。銃規制を求めるデモで20万人以上を動員した他、銃規制に後ろ向きな議員を落選させる運動も始めています。彼らの多くが中間選挙の時点で18歳になり選挙権を持つわけで、2020年の大統領選に向けた大きな潮流になるのか、既存の勢力に飲み込まれてしまうのか、11月6日が楽しみなところです。

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映画のエンディング曲は、ボブ・ディランの“With God on Our Side”を、ワールドカップ南アフリカ大会のテーマ曲だった“Wavin' Flag”で知られるK'Naanが歌詞を変えてカバーしたもの。施政者は常に“神は我が方に”と言って戦地に若者を送り込むと皮肉った曲を、ソマリア出身のラッパーが歌うことで、さらにメッセージ性が強化されています。

公式サイト
華氏119Fahrenheit 11/9

[仕入れ担当]

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