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2018年12月 3日 (月)

映画「バルバラ セーヌの黒いバラ(Barbara)」

00 現在、Bunkamura ル・シネマで上映中の映画です。

チキンとプラム」「毛皮のヴィーナス」のマチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)が、「さすらいの女神たち」に続いて監督と俳優を兼務した本作。伝説的シャンソン歌手、バルバラの伝記映画を撮影中の監督という役で出ているのですが、その劇中劇でバルバラ役を務める主演女優を、私生活で元パートナーだったジャンヌ・バリバール(Jeanne Balibar)が演じるという、ちょっとややこしい仕掛けになっています。カンヌ映画祭“ある視点”部門(Un Certain Regard)で詩的映画賞(Prix de la poésie du cinéma)を受賞したというポエティックでフランス映画らしい作品です。

フランスの国民的歌手だったバルバラは1930年6月9日生まれ。今年の春に観たシャンソン歌手の「ダリダ」は1933年生まれですから同時代に活躍したシンガーですが、明るく力強い打ち出しのダリダとは反対に、バルバラはピアノの弾き語り主体の歌い手で、邦題のサブタイトル通りの印象。彼女の私生活には謎が多いそうですが、ユダヤ系であるが故に迫害された少女時代、晩年に自伝で明かされた実父による性的虐待、エイズによる最期など実人生も暗いイメージに包まれています。

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映画監督のイブ。少年時代から思い入れのあるバルバラの映画を撮影中です。そのバルバラを演じる主演女優がブリジット。監督はバルバラを知る関係者にインタビューして知識を積み上げ、主演女優はバルバラの歌声や動作を真似して彼女になりきろうとします。

撮影が進むにつれて、イブの内面にあるバルバラのイメージがどんどん膨張していき、彼の意識の中にあるバルバラと、バルバラを演じるブリジットの区別が曖昧になっていきます。またブリジットも、自らの価値感とバルバラの価値感が混ざり合い、演じる役柄と日常の境界がおぼろげになっていきます。

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その結果、観客が目にしているジャンヌ・バリバールが、ブリジットなのかバルバラなのか、次第にわからなくなっていきます。さらに映画の中で監督を務めているのがマチュー・アマルリック演じるイブ、その映画を撮っているのがマチュー・アマルリックという入れ子の構造になっていることと、バルバラが歌った数々の名曲と実際のステージ映像が散りばめられていることで、事実と創作の垣根もなくなっていきます。その重層的な作りが、バルバラのミステリアスな存在感、複雑な精神性を表出させていくわけです。

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“16歳のとき、好きなことをやりなさいとあなたに囁かれた”と語るイブにとって、バルバラは人生に希望を与えてくれた女神のような存在です。そんなバルバラが憑依したかのように演じるブリジットのことも次第に神格化していってしまいます。そして、そのブリジットを演じるジャンヌ・バリバールがイブを演じるマチュー・アマルリックの元パートナーであることで、観客は迷宮のような世界に引き込まれてしまうのです。

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そういった意味で本作は、映画「ダリダ」のように実在人物の伝記的事実を教えてくれる映画ではありません。ある程度、バルバラのことを知っている人が、その生き方をどのように描くか観に行くタイプの映画ですので、ジャンヌ・バリバールの演技こそ最大の見どころといって良いでしょう。

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悲しみよ こんにちは」でペギー・ロッシュ、「グレース・オブ・モナコ」で伯爵夫人を演じて、脇役ながら大きな存在感を示したジャンヌ・バリバール。本作でも内面に抱える様々な感情、ころころと変わる喜怒哀楽を巧みな演技力で表現しています。これでセザール賞の主演女優賞に輝いたというのも納得です。

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オープニングのクレジットから洒落た映像で雰囲気を作り上げていく映画です。シャンソン好きの方はもちろん、クリストフ・ボーカルヌ(Christophe Beaucarne)の映像がお好きな方にもお勧めです。

公式サイト
バルバラ セーヌの黒いバラBarbara

[仕入れ担当]

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