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2018年12月27日 (木)

映画「シシリアン・ゴースト・ストーリー(Sicilian Ghost Story)」

00 陽光あふれるシチリアの風景と、幻想的な映像で描かれる暗黒世界のコントラストが印象的な作品です。撮影は「きっと ここが帰る場所」「イル・ディーヴォ」「グレート・ビューティー」「グランドフィナーレ」などパオロ・ソレンティーノ作品を撮ってきたルカ・ビガッツィ(Luca Bigazzi)。彼ならではの美しい映像を心ゆくまで堪能することができます。

監督はアントニオ・ピアッツァ(Antonio Piazza)とファビオ・グラッサドニア(Fabio Grassadonia)の2人。ファビオ・グラッサドニアは本作で今年のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリアで最も権威ある映画賞)の脚色賞を受賞しています。

物語はシチリア島で1993年に実際に起きた誘拐事件を下敷きにしています。パレルモ出身の監督たちは、25年前にこの事件の報道に触れ、大きな衝撃を受けたそう。というのは誘拐されたのがまだ13歳の少年で、779日間の監禁後に殺され、硝酸で溶かされて川に流されるという凄惨なものだったから。

そんなやりきれない事件を、マルコ・マンカッソーラ(Marco Mancassola)という1973年生まれの作家が、“Un cavaliere bianco(白い騎士)”という寓話的な小説に仕上げました。作者の言葉によると、半分は本当に起きたこと、残りの半分はフィクションだそう。誘拐された少年ジュゼッペに恋する少女ルナ(小説ではシルヴィア)を創造したことで、悲惨な事件をファンタジックな物語に昇華させています。

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映画の幕開けは地下を流れる水脈のイメージ。それが路傍の水栓まで辿り付いたところで蛇口をひねっている少年がジュゼッペです。水を飲んだ少年は、同級生たちが下校していく道路からはずれて木立の奥に向かいます。手紙を握りしめて彼を追う少女がルナ。そんな2人の姿が初々しくて、シチリアの美しさと相まって、この1シーンだけで酔いしれてしまいそうです。

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ジュゼッペが自宅の納屋から持ち出したバイクに2人乗りして山の中の馬場へ。13歳なのに乗れるの?と訊いたルナに、大丈夫と答えるジュゼッペ。会話の隅々から彼の家族の特殊性が見え隠れします。

障害馬術の練習なのか、何度もバーを跳び越えて馬場を周回するジュゼッペと、それに見とれているルナの佇まいが晴れ渡る青空と穏やかに調和します。

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しかし、そんな2人の関係もここまでです。厩舎に馬を戻しに行ったジュゼッペが戻って来ることはありませんでした。ルナの肩越しに映り込む、馬場の向こう側を走って行った車が彼を連れ去ってしまったのです。

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ジュゼッペの父親は元マフィアで、警察に逮捕され、司法に協力し始めた人(pentito)でした。ジュゼッペを誘拐したマフィアは、獄中の父親に脅しをかけて黙らせようとしたのです。

そんな背景がありますので、街の人々も学校の教師たちも、ジュゼッペの一件に触れようとしません。ルナの両親、特に母親は、以前からジュゼッペと接触することすら否定的でした。あの家はウチとは違う、というのです。ですから、トラブルに巻き込まれたジュゼッペに関わることは厳禁です。

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ルナの母親は四角四面な健康マニアで、ただでさえ自分が良いと信じたことを周囲に押しつける人。母親の束縛から逃れたい、自由に生きたいというルナの気持ちが、ジュゼッペに対する思いと繋がっているのです。当然のように、ルナと母親は衝突を繰り返します。

彼女の唯一の味方が親友のロレダーナ。学校のクラスも一緒ですし、夜中に懐中電灯を使ってモールス信号でお喋りする仲良しです。彼女の協力でビラ配りをしてみますが、やはり芳しい反応ありません。ルナの夢に出てくるイメージを唯一の手がかりに自力でジュゼッペを探しますが、次第に彼女の心も衰弱してきます。

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そんな一途で健気な少女を演じたのは、ポーランド出身で現在はパレルモの高校(Liceo Scientifico S. Cannizzaro)に通っているというユリア・イェドリコブスカ(Julia Jedlikowska)。キリッとした表情の似合う少女です。意志の強さと思春期の揺らぎをうまく醸し出しながら、難しい役を上手にこなしています。

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誘拐される少年ジュゼッペを演じたガエターノ・フェルナンデス(Gaetano Fernandez)は地元パレルモ出身、どことなくティモシー・シャラメを彷彿させる美少年です。映画で使われてるSoap&Skinの楽曲がスフィアン・スティーヴンスと雰囲気が似ていることから「君の名前で僕を呼んで」を思い出してしまいますが、場所は北イタリアと南イタリアと正反対ですし、テーマも内容もまったく違います。

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ルナの父親を演じたヴィンチェンツォ・アマート(Vincenzo Amato)もパレルモ出身だそう。「ジョルダーニ家の人々」で建築家になるニーノの担当教官だった教授を演じていた俳優です。母親を演じたザビーネ・ティモテオ (Sabine Timoteo)はスイス出身の元バレリーナだそうで、神経質そうな役柄が良く似合っていました。

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2時間強の長めの映画ですし、暗めの映像が続きますので、集中して観るとちょっと疲れるかも知れませんが、見応えのある作品です。元気なときにじっくりご覧になってみてください。

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公式サイト
シシリアン・ゴースト・ストーリーSicilian Ghost Story

[仕入れ担当]

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