モナド界隈

2019年7月12日 (金)

モダン・ウーマン 国立西洋美術館

日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念した展覧会です。19世紀後半から20世紀初頭、ロシアから独立する前後のフィンランドを生き、同国の近代美術に革新をもたらした7名の女性芸術家たちを紹介。

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フィンランドで最も著名な画家の一人であるヘレン・シャルフべックの《占い師(黄色いドレスの女性)》が、本展イメージポスターに使われています。彼女がフランスから美術雑誌やモード誌を取り寄せ、雑誌の付録にあった型紙でドレスを作ったり、ギャラリー・ラファイエットで衣服を注文するほどファッションに敏感だったというお話はこのブログでご紹介しましたが、描かれている女性もお洒落でしなやかな印象です。

取り上げられている7人の中でもっとも若い世代を代表するエルガ・セーセマンは1940年代にデビュー。緑の帽子と黒い手袋をつけた女性が一人、タバコとカクテルを楽しむ《カフェにて》では、強く近代的な女性をイメージさせます。

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常に自らの芸術を刷新し、革新的な色彩表現を追求し続けたエレン・ステレフの《自画像》。

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木版画も多く手がけたエレン・ステレフは、一枚の版木に複数の色をつけ、すべての色を一度に刷るという独自の手法を用いています。

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新しい時代を切り開いてきた女性たちに出会える機会です。

モダン・ウーマン フィンランド美術を彩った女性芸術家たち
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019modernwoman.html
2019年9月23日(月・祝)まで

[店長]

2019年6月 2日 (日)

クリムト展 東京都美術館

いま上野界隈を騒がせている「クリムト展」に行ってきました。19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムトの作品、日本では過去最大級となる油彩画25点以上が観られます。

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とにかく、たくさんの女性が登場する本展。鮮やかな黄色を背景にカラフルなドレスを着た《オイゲニア・プリマフェージの肖像》、すっきりとしたモノトーンで描かれた《白い服の女》、毛皮や市松模様のドレスがモダンな《女ともだちⅠ(姉妹たち)》など実に多彩です。

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生命の円環をテーマにした《女の三世代》、原寸大で複製された壁画《ベートーヴェン・フリーズ》の展示には圧倒されます。

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クリムトのデザインを参考に弟ゲオルクが制作した鍛金のレリーフ《踊り子》も必見です。家具の装飾として制作されたもので、妖艶なドレスをまとった立ち姿の女性が描かれた作品。彫金師として活躍していたゲオルクは、クリムトのデザインを元に彼の作品を飾る額縁も制作しています。

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赤い色鉛筆を使って描かれた《左向きに立つ裸婦》や《うずくまる二人の女性》、公に発表するのは当時ご法度とされた性的な描写の《横たわる恋人たち》など、クリムトは生涯で数千点ものドローイングを残したそうです。

戦火で焼失してしまい、現存するクリムトのスケッチブックは3冊のみですが、そのうちの1冊が展示されています。

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《ユディトⅠ》や《鬼火》の素描が残された小さな手帳サイズの《赤いスケッチブック》。これを模したメモ帳が、会場最後にあるショップで売られています。

クリムト展 ウィーンと日本1900
https://klimt2019.jp/
2019年7月10日(水)まで

[店長]

2019年4月 9日 (火)

林忠正 - ジャポニスムを支えたパリの美術商 国立西洋美術館

明治初期にフランス・パリで日本美術商として活躍した、林忠正の功績を紹介する展覧会です。国立西洋美術館でル・コルビュジエ展と同時開催している企画展で、同じチケットでどちらもご覧になれます。

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日本の美術や工芸品がヨーロッパで人気を博していたころ、1878年パリ万博博覧会に際し通訳として渡仏した氏は、そのままパリに留まり日本美術を扱う店を構えます。作品の背景や日本文化を豊富な知識で紹介することで、美術愛好家やアーティストたちの信頼を得て交友関係を培っていっそうです。友人たちと交わした多くの書簡が残されており、同じくジャポニスムの立役者として知られる美術商ジークフリート・ビングとの交流などを知ることができます。

日本に西洋絵画を展示する美術館を建設したいとの考えから、モネ、ドガ、ピサロらと作品を交換。蒐集した500から600の西洋美術を日本に持ち帰ったそうですが、残念ながら美術館建設は実現せず、コレクションのほとんどが売りに出されたそうです。大量の日本美術を国外に流出させたという文脈で批判的に語られたこともあったそうですが、19世紀西洋での日本ブームを支え、浮世絵人気を定着させた人物として再評価されています。

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林忠正 - ジャポニスムを支えたパリの美術商
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019hayashi.html
2019年5月19日(日)まで

[店長]

2019年4月 7日 (日)

ル・コルビュジエ 絵画から建築へ - ピュリスムの時代 国立西洋美術館

上野・国立西洋美術館の開館60周年を記念して開催されている展覧会です。同館の設計者であり、近代建築の三大巨匠の一人に数えられるル・コルビュジエの若き頃、故郷スイスを離れ、フランス・パリで活動をし始めた約10年間にフォーカスしています。

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1918年末より、画家アメデ・オザンファンと共に、機械文明の進歩に対応した「構築と総合」の芸術を唱えるピュリスム(純粋主義)の運動を推進。絵画制作に取り組む中で、1920年代パリの美術界で出会った芸術家たちとの交流が、新しい建築の創造に繋がっていきます。

オザンファンに油彩の技法を教わり、ピュリスムの画家として駆け出した頃の静物画から、当初は対峙していたキュビスムに共感し、制作された後期の油彩画《多数のオブジェのある静物》に至るまで、大きく展開する造形思考の変化は見どころです。

交流のあったパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックの絵画や、アンリ・ローレンスの彫刻も展示されており、フェルナン・レジェ本人から譲り受け自宅に飾っていた《横顔のあるコンポジション》は、その様子を撮影したブラッサイの写真と合わせて観ることができます。

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2016年にユネスコ世界文化遺産に登録された同館の話も聞ける音声ガイドを借りての鑑賞がお勧めです。

ル・コルビュジエ 絵画から建築へ - ピュリスムの時代
https://lecorbusier2019.jp/
2019年5月19日(日)まで

[店長]

2018年12月16日 (日)

ムンク展 東京都美術館

エドヴァルド・ムンクの画業60年を振り返る大回顧展です。

盗まれても盗まれても元の美術館に戻ってくる代表作《叫び》のテンペラ・油彩画をはじめ、家族や自身を描いた初期の頃のポートレート、愛や嫉妬、孤独や絶望など感情を強烈に描いた木版画、故郷オスロの自然を描いた風景画、明るい色で表現された晩年の油彩画まで、多彩なムンク作品100点が並びます。

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暗闇に浮かぶリトグラフの自画像から始まる本展。1882年19歳のときに初めて自画像を描いたそうですが、生涯で手がけた自画像は80点を超えます。

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こちらは、展覧会の最後を飾る晩年のムンク。写真や映画が好きで、コダックカメラや映画用のカメラも持っていたそうです。自画像の元にした貴重な自撮り写真も観られます。

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新しい技法や表現を探求し、代表作を世間に広めるためムンクは同じ主題を繰り返し製作したそうです。また自分の作品を「子どもたち」と呼び、手元にも多く残したそう。

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これまで目にする機会の少なかった風景画や、美しい色使いの油彩画でムンクのイメージが変わります。

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展覧会ショップに並ぶユニークなコラボ商品も見逃せません。頬に手を添えて悶えるピカチュウや、叫びがうごめくアヤメ(Ayamé)のソックスもあります。

ムンク展 - 共鳴する魂の叫び
https://munch2018.jp/
2019年1月20日(日)まで

[店長]

2018年12月11日 (火)

日本を変えた千の技術博 国立科学博物館

西洋の技術が日本に導入された明治から現代までの、暮らしや社会を大きく変えてきた科学や技術の貴重な遺産が上野・国立博物館に集められています。

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日本初の家庭電化製品は、1894年に製造された電球付き電気扇風機。ですが、当時ほとんどの家庭に電気は通じてなくコンセントがなかったそうです。

下の写真の長い棒は、全長1メートル、重さ5キログラムもある耐久電熱投げ込み湯沸器。お風呂の湯沸かし用で、使う人も重労働だと思いますが、戦後の燃料不足の時は人気だったそうです。写真左のお釜のようなものは洗濯機。電気を使わない手回し式で、エコのはしりといったところでしょうか。

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西洋医学を取り入れた製法の化粧水は明治の頃から開発されていましたが、大正時代になると女性の職種が増え、それと共に多くの化粧品や洗顔クリームが登場。また高価な絹の代わりにナイロン素材が開発され、おしゃれに欠かせないストッキングや靴下が女性のファッションを華やかにしていきます。

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ほかにも1.2インチの液晶画面がついた世界初のテレビウォッチ、100年も前に走っていた電気自動車ミルバーン、当時の乗用車と同じくらいの価格で重さが25キログラムもある電子式卓上計算機など、幅広い分野の“凄い技術”が観られます。

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さまざまな研究秘話や、当時のエピソードがわかりやすく解説されていて、大人から子どもまで楽しめる展覧会です。

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明治150年記念 日本を変えた千の技術博
http://meiji150.exhn.jp/
2019年3月3日(日)まで

[店長]

2018年10月16日 (火)

マルセル・デュシャンと日本美術 東京国立博物館

フィラデルフィア美術館が誇る世界有数のマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)コレクションがずらりと並ぶ展覧会です。デュシャン没後50年を記念した巡回展で、油彩画やレディメイド、関連する貴重な資料や写真など150点あまりの展示作品とともに、60年以上にわたる創作活動に迫ります。

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デュシャンといえば、大量生産の既製品を用いた《自転車の車輪》、《泉》、《瓶乾燥機》などのレディメイド作品が有名ですが、本展では10代から20代半ばまで描いていた絵画作品も数多く紹介しています。

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故郷を描いた風景画や、家族を描いた肖像画のほか、1912年に制作され、名前を広く知らしめることとなった《階段を降りる裸体 No.2》は必見です。

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1920年代になると、ローズ・セラヴィという女性の別人格を作り出し、創作活動をするのですが、そのローズになりきったデュシャンのポートレートをマン・レイが撮影しています。ゴージャスな毛皮をまとい、ジュエリーを着け、ハットをかぶった女装のデュシャンはとても妖艶です。

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ローズ・セラヴィ名義の作品《トランクの中の箱》は、革製のトランクの中にデュシャンのさまざまな作品のミニチュア、写真などが収められていて、丸ごと持ち帰りたくなります。

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本展は二部構成になっていて、第二部では東京国立博物館ならではの試みとしてデュシャンの作品と日本美術を見比べることで日本の美の新しい楽しみ方を提案しています。

マルセル・デュシャンと日本美術
http://www.duchamp2018.jp/
2018年12月9日(日)まで

[店長]

2018年10月 8日 (月)

標本づくりの技 国立科学博物館

自然史や科学技術史を研究し、広めていく博物館活動の基盤となる “標本づくり” に迫ります。

現在460万点の標本資料を所有する国立科学博物館では、日々、モノの収集と標本化の作業が行われ、毎年9万点以上の標本が蓄積されているそうです。貴重な標本と合わせて、できるだけ長く保管するための技や道具を紹介しています。

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こちらは、ジャコウネズミの生態も表現した骨格標本です。親の尾っぽを子どもたちがくわえ、数珠つなぎになって移動するキャラバン行動を表しています。

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こちらはボウズガレイの末梢神経と硬骨を紫色に染めた液侵標本です。高度な技術で作られた良質な標本で、学術的に大変貴重だそう。

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博物館には、人類、植物、地学、理工学、動物の5つの研究部があり、それぞれの標本づくりの専門的な知識や技を極めたスペシャリストが揃っています。

動物の骨格標本や仮剥製を作るには鮮度が命なのですが、素早いメスさばきで皮を剥ぎ、肉を取り除く解剖のスペシャリストがいれば、標本をより分かりやすく立体的に作成するために、複数の写真から3Dモデルを復元するフォトグラメトリーという手法を研究するスペシャリスト、研究発表用の写真や標本の写真、展示風景を撮影する写真のスペシャリストまでいて、実にさまざまです。博物館で働くスペシャリストたちのプロフィールや標本づくりのコツを紹介する展示は見逃せません。

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研究部ごとの作業現場も見どころです。実際に使われている道具が並び、液剤の分量などを書いた細かいメモなどもあり、リアルに再現されています。

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企画展 標本づくりの技 職人たちが支える科博
https://www.kahaku.go.jp/event/2018/09hyouhon/
2018年11月25日(日)まで

[店長]

2018年9月 4日 (火)

おべんとう展 東京都美術館

タイトルを見た時から気になっていました♪ 食べることだけでなく、人と人や社会をつなぐコミュニケーション・ツールとしても活躍する “おべんとう” がテーマです。現代作家のインスタレーションや写真作品などを観て、聞いて、触れて新しい発見を体験します。

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オランダの作家マライエ・フォーゲルサングの《intangible bento》は、お弁当箱の中に入り込み、そこに住む精霊のメッセージを聴きながら探検するというインスタレーションです。香りのするブースや、参加者たちがお弁当の思い出を短冊に綴るブースがあり、懐かしい記憶を辿ります。

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小山田徹氏の《お父ちゃん弁当》は父親である美術家の小山田氏が、小学2年生の娘さんのアイデア画に基づき、幼稚園に通う息子さんのために作ったお弁当の数々です。

下の写真は、割れたたまごを表現していますが、アイデアが斬新! 娘さんからの「作れる?」という挑戦状のようでもあります。

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悪い顔をしたパンダのほか、お昼ごはんを食べる時間を示した時計や、桜島の噴火をデザインしたものもあります。フタを開けたときの息子さんの驚いた顔や笑った顔、指示が難解すぎて困っているお父ちゃんの顔が思い浮かぶようです。

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江戸時代にお花見や舟遊びに使われていた豪華なお弁当箱や、少女漫画のキャラクターがプリントされたアルマイトのお弁当箱、世界各国のユニークなカタチのお弁当箱も観られます。

おべんとう展
http://bento.tobikan.jp/
2018年10月8日(月・祝)まで

[店長]

2018年9月 2日 (日)

特別展 昆虫 国立科学博物館

地球上に存在する生物種の半数以上を占めるといわれる “昆虫” をテーマにした展覧会に行ってきました。エアコンの送風技術に活かされているトンボのハネ、痛みの少ない注射針のヒントになっている蚊の口など、神秘的な体のしくみや、能力、生態についてを標本や巨大な模型、貴重な映像などで学んでいきます。

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4.8億年も前に出現してから、したたかに生き延びた昆虫は、現在確認されているだけでも100万種以上。頭の上にアンテナを立てたようなヨツコブツノゼミ、お尻から細長い産卵管を垂らすウマノオバチ、身を守るために擬態するオオコノハムシなど奇妙なカタチをしたヤツがいれば、鮮やかなボディをもつプラチナコガネやホウセキゾウムシ、美しい色柄のチョウもいます。それぞれ噛む、吸う、舐めるための口をもち、幼虫から成虫までの過程で身体だけでなく口のカタチも変態していくのだそうです。

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世界で最大級のチョウとして知られているのは、アゲハチョウ科のトリバネアゲハの仲間。ハネを広げた時のサイズはオスが220mm、メスは280mmに達するそうですが、あまり大きいと不気味に見えるかも知れません。。。

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こちらは三角ケースといわれるもので、蝶などを採取したときに三角紙に包んで持ち運ぶときに使います。

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捕まえたチョウを標本にするには、まず胸部を指で圧迫して殺虫。展翅板に身体を固定してから、針先などでハネや足のカタチを整え乾燥させるそうです。

数万点におよぶ標本コレクションの中には、管理担当者が最後まで公開をためらったという世界に一つだけのヤンバルテナガコガネのホロタイプ標本もあり。

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未知なる昆虫の世界に夢中になります。

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特別展 昆虫
http://www.konchuten.jp/
2018年10月8日(月・祝)まで

[店長]

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