映画「シングルマン(A Single Man)」
話題のトム・フォード(Tom Ford)初監督作です。この映画のことを知ったときは、何かで成功すると調子に乗って他の分野に手を出す人っているよね、という印象だったのですが、観に行って驚きました。とても完成度の高い、素晴らしい映画です。
演出も凝っているし、映像や音楽から衣装や小道具に至るまで、すべてがスタイリッシュ。きっとトム・フォードには、自分の美意識や世界観を形にしてくれるスタッフを見出し、それをオーケストレートしていく卓越した能力があるのでしょう。どうやらファッションだけの人ではなさそうです。
映画は、長年のパートナーを交通事故で失い、深い喪失感を抱えて暮らす英国人教授が、パートナーの死から8ヶ月を迎え、自ら命を絶とうと決めた一日を描いたもの。とても美しい、男性同士の純愛ものです。「ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)」もそうでしたが、男女の恋愛より同性愛を描く方が純愛度が高くなるような気がします。
主演の大学教授を演じるのは、「ブリジット・ジョーンズの日記(Bridget Jones's Diary)」のミスター・ダーシー役、コリン・ファース(Colin Firth)。雑誌のインタビューで、トムフォードからメールが来てびっくり、彼が映画を作るというので2度びっくり、そのテーマを知って3度びっくり、と語っていましたが、「アナザー・カントリー(Another Country)」でデビューしたコリン・ファース、同性愛に驚いたりはしないでしょう。
たぶん、トム・フォードも「アナザー・カントリー」のイメージが頭にあって、彼をキャスティングしたのだと思います。事故死したパートナー役のマシュー・グード(Matthew Goode:下の写真)が醸し出す雰囲気に、「アナザー・カントリー」のルパート・エヴェレット(Rupert Everett)を彷彿させるものがありました。
映画の最後で心を通わせる教え子の役、ニコラス・ホルト(Nicholas Hoult:下の写真)が「アバウト・ア・ボーイ(About a Boy)」に出ていたというので調べてみたら、シングルマザーの子どもの役だったのですね。いつの間にか同性愛が似合う美少年に成長していてびっくりしました。彼といい、映画の中盤で出会うジョン・コルタジャレナ(Jon Kortajarena)といい、トム・フォードの面目躍如!というキャスティングです。
ちなみに、このジョン・コルタジャレナは、H&Mやトム・フォードの広告で活躍しているファッションモデル。写真を本人のサイトやmodels.comで見ることができます。
映画ではマドリードから来た役ですが、実際はビルバオ出身だそう。下の写真のシーンでは、少しですが、スペイン語で会話します。
コリン・ファースの知的な雰囲気も素敵でした。トナカイ柄セーターでお馴染みのミスター・ダーシーと打って変わって、この映画ではトム・フォードのスーツをすっきり着こなしています。いい男がいい服を着るのは良いものですね。
同性愛に目覚める前の恋人だったという役のジュリアン・ムーア(Julianne Moore)もソブラニーをくゆらせながら味のある演技を見せています。
公式サイト
シングルマン(A Single Man)
Nicholas Hoult, Julianne Moore, Tom Ford, Colin Firth
[仕入れ担当]