映画「ツリー・オブ・ライフ(The tree of life)」
今年のカンヌ映画祭でパルムドールを獲った作品です。監督のテレンス・マリック(Terrence Malick)の6年ぶりの新作であり、ブラッド・ピット(Brad Pitt)とショーン・ペン(Sean Penn)が共演することでも話題になりました。
この夏いちばんの注目作でしょうから、映画好きなら是非とも観ておきたいところですが、面白かったかと問われると非常に微妙です。描こうとしていることが壮大過ぎて、それをきちんと受けとめられたか、十分に咀嚼できたか、観賞後に自問してしまうような映画です。
舞台はテキサスの田舎町。ブラッド・ピット演じる厳格な父親とジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)演じる従順な母親、その子どもである3人兄弟の成長期を、ショーン・ペン演じる、壮年期に差しかかった長男が回想するというお話です。
アメリカ南部の平凡な家庭が描かれていくなかで、少年時代に抱いていた父親に対する反感、横暴な夫に仕える母親に対する複雑な感情、19歳で亡くなった次男に対する喪失感など、長男が抱えてきた思いが次第に見えてきます。
時間軸でいえば、ベトナム戦争に至るマッチョなアメリカを、911以降のアメリカから振り返る感じでしょうか。今や建築家として成功した長男が、家族に対して赦せなかった部分、和解できなかった部分に思いを馳せ、魂の救済を求めるということなのだと思います。
難解なのは、この家族の物語が地球の創世に繋がっていくところ。そしてBBCのドキュメンタリー映画のような自然の驚異を描いた映像とともに語られる旧約聖書の言葉。ツリー・オブ・ライフという言葉もその一つだそうですが、grace(神の恩寵)とnature(自然)がなぜ対立する概念なのか、私には理解できませんでした。
この映像の一部には、地球の生命の起源を探求する“Q”というプロジェクト名で、70年代にテレンス・マリックが撮っていた映像が使われているとか。確かに美しい映像なのですが長過ぎるようで、客席には、こっくり、こっくりしている人が目立ちました。物語の部分を撮っているのは「天国の口、終りの楽園(Y tu mamá también)」等で知られるエマニュエル・ルベツキ(Emmanuel Lubezki)ということで、映像の完成度は高いと思います。
また、3人の子役は、いずれもオーディションで選んだ素人だそうですが、リアリティがあって良かったと思います。特に長男ジャック(後のショーン・ペン)を演じたハンター・マクラケン(Hunter McCracken)の反抗期の子どもの目には、訴えてくるものがありました。
ちなみにショーン・ペンが働いているオフィスは、ヒューストンのPSP(Page Southerland Page)という設計事務所だそうで、ここのスタッフもエキストラ出演しているそうです。
公式サイト
ツリー・オブ・ライフ(The tree of life)
[仕入れ担当]
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