映画「少年と自転車(Le Gamin Au Velo)」
もう2週間もしないうちに2012年カンヌ国際映画祭が始まりますね。今年もジャック・オディアール(Jacques AUDIARD)の新作をはじめ、見たい作品ばかりですが、個人的に最も気になるのが、レオス・カラックス(Leos CARAX)の十数年ぶりの長編映画「Holy Motors」。ドニ・ラヴァン(Denis Lavant)主演ということで「おっ!」と思ったら、なぜかカイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)も出るという、わけのわからなさで、今から非常に楽しみな映画です。
さて、この「少年と自転車」は去年のカンヌでグランプリを受賞した作品(パルムドールは「ツリー・オブ・ライフ」)。監督は「ロゼッタ」「ある子供」「ロルナの祈り」などで知られるダルデンヌ兄弟(Jean-Pierre Dardenne、Luc Dardenne)。人の心の動きを静かに追うタイプの監督だと思います。
「少年と自転車」も地味な映画ながら、心の奥底に突き刺さるものがある作品です。主人公は、100人余りの候補からオーディションで選ばれたという1996年12月生まれのトマ・ドレ(Thomas Doret)。鋭い視線が印象的な男の子ですが、自分を養護施設に預けて去った父親を探し求め、その父親に会えたと思ったら、拒絶されてしまう孤独な少年シリルを演じます。
映画のオープニングで、養護施設から逃げ出し、父親と暮らしていた団地を訪ねるシリル。追いかけてきた教師から逃れるためにクリニックに逃げ込み、そこでセシル・ドゥ・フランス(Cécile De France)演じるサマンサに出会います。教師から逃れたい一心でサマンサにしがみついたシリルでしたが、シリルと教師たちのやりとりを聞いていたサマンサは、シリルが父親から買ってもらったという自転車を見つけ出し、後で養護施設に届けてあげます。
父親に会いたいシリルは養護施設から出るチャンスが欲しくて、サマンサに週末だけ里親になって欲しいと頼み込みます。サマンサはそれを受け入れ、シリルの父親探しを手伝います。ようやくレストランの雇われコックをしている父親を見つけ出しますが、彼はサマンサに「シリルは重荷なので、面倒を見て欲しい」と頼み、「もう会いに来るな」とシリルを突き放します。
養護施設でも学校でも孤立しているシリルは、いじめの対象でもあります。ある日、サマンサが取り戻してくれた自転車を奪われ、その犯人を叩きのめした森の中で、団地で暮らす不良少年と知り合います。自分を認めてくれる不良少年にシリルは心を開くようになり、それがきっかけである事件に展開していきます。
この映画を感動的なものにしているのは、実の息子を拒絶する父親に対しても、父親の愛が得られずにイラつく少年に対しても、常に暖かいまなざしが向けられていることだと思います。明らかに悪役である不良少年ですら、その家庭の事情をさりげなく見せることで、彼の抱えている状況を観客に伝えます。それぞれの人が、それぞれの事情で懸命に生きているという当たり前のことが、映画のあらゆる場面に反映されています。
自転車を得たシリルは、ずっと画面の中を走り回っています。常に疾走し続ける姿が、居場所を失い、平穏さを取り戻せない少年の内面を表現しているのだと思います。
ポスターに描かれているのは、終盤、サマンサと一緒にサイクリングに出掛けるシーンです。並走する自転車を延々と長回しで撮った後、草上に座ってサンドイッチを食べるのですが、このときの穏やかな情景と和やかなシリルの表情に、ぐっとくるものがありました。
公式サイト
少年と自転車(Le Gamin Au Velo)
[仕入れ担当]
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