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2015年6月 8日 (月)

映画「追憶と,踊りながら(Lilting)」

00 ベン・ウィショー(Ben Whishaw)のしっとりとした佇まいが心に残る良作です。

監督はカンボジア生まれの英国人で、いまだに英国に溶け込めない自らの母親から着想を得て本作の脚本を練り上げたという新人、ホン・カウ(Hong Khaou)。2006年の「パフューム」を観て、ベン・ウィショーを起用したいと思いながらも、低予算映画であることで躊躇していたそうですが、思い切って脚本を送ったところ、すんなり快諾が得られて撮影にこぎつけたという美しい前日譚つきの映画です。

私も「パフューム」のベン・ウィショーは鮮明に覚えていますし、「テンペスト」や「007 スカイフォール」での演技にも注目していましたので、有名になった今、敢えて無名の監督の作品に出ると知って公開を楽しみにしていました。

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物語は、ベン・ウィショー演じるリチャードと、チェン・ペイペイ(鄭佩佩)演じる老婆ジュンを中心に展開します。

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華人のジュンは、カンボジアから英国に移住してきて何年も経つのに英語を話せません。ですから英国社会と橋渡ししてくれる、ひとり息子のカイだけが頼り。しかし、カイはリチャードと交際しており、彼と一緒に暮らしたいがために、母親のジュンを老人施設に入れてしまいます。

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そんなカイの態度をリチャードは非難していて、ジュンにカミングアウトして3人で暮らせるようにしようと迫ります。

絶対にジュンが受け入れるはずないと突き放していたカイも、次第に考えが変わっていきます。2人が暮らす家にジュンを招待し、リチャードの手料理を食べながら自分がゲイであることを打ち明けようと決心します。

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そんな矢先、カイが事故死してしまいます。一人息子のカイを失ったジュンの辛さを思い、なんとかジュンを支えたいと思うリチャード。お互いの共通言語がありませんので、ヴァンという女性通訳を雇い、少しずつ心を通わせ、少しずつ理解を深めていきます。

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リチャードとジュンの仲立ちをするだけでなく、ジュンに思いを寄せる初老の英国人、アランとのコミュニケーションを手助けしたり、時々ちょっとお節介な口添えをしたりするヴァンがなかなか良い感じです。演じたナオミ・クリスティ(Naomi Christie)は映画初出演だそうですが、とてもうまいキャスティングだと思いました。

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また、カイを演じたアンドリュー・レオン(Andrew Leung)も演劇学校を出たばかりの新人。彼が漂わせている繊細な感覚が非常にリアルで、カイとリチャードだけのシーンはあまり多くないのに、互いを思う気持ちがひりひりと伝わってきます。

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そしてジュンを演じたチェン・ペイペイ。アン・リー監督の「グリーン・デスティニー(臥虎藏龍)」にも出ていた香港女優ですが、本作ではうって変わって、寂寞とした暮らしの中にありながら、強い意志を秘めた老婆を静かに演じています。諦念と希望の間を漂うような表情の変化が印象的です。

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もちろん、ベン・ウィショーの名演は言うに及びません。さらっと演じているようで、隅から隅まで意識が行き渡っていて、強く感情が揺さぶられます。特に、心の奥底まで沁みてくるような彼の語りは必見です。

公式サイト
追憶と,踊りながら(Lilting: facebook

[仕入れ担当]

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