映画「人生スイッチ(Relatos salvajes)」
風変わりな作品ですので、スペイン語やラテン映画に関心ある人しか観ないだろうと思って映画館に行ったら、平日にもかかわらず満席で、ちょっとびっくりしました。
ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar)がプロデュースしたとか、カンヌ映画祭の外国語映画部門に出品されたといっても、それほど話題になっているとは思えませんし、出演者も、近作では「瞳の奥の秘密」「ホワイト・エレファント」のリカルド・ダリン(Ricardo Darín)、「幸せパズル」のマリア・オネット(María Onetto)、古くは「トーク・トゥ・ハー」のダリオ・グランディネッティ(Darío Grandinetti)ぐらいしか日本で紹介されていないでしょうから実に不思議です。
宣伝文句によると、本国アルゼンチンでは「アナと雪の女王」の2倍以上の興行収入を記録したそうで、アルゼンチンの人たちは変わってるなぁと思っていたのですが、日本人もかなり変わってますね。
作品は、ブラックコメディというより不条理劇といった方が良さそうな短編を6つ並べたもの。それぞれの作品には特に関連性はなく、ストーリーに何らかの法則性や一貫性があるわけでもありません。強いていえば、ドツボにはまって引き返せなくなってしまう展開というあたりが共通項でしょうか。
1番目の「おかえし(Pasternak:パステルナーク)」は、ダリオ・グランディネッティ演じる音楽評論家が、飛行機で隣り合わせたモデルとお喋りするうちに、パステルナークという共通の知人がいることがわかり、世間は狭いという話になるのですが、前の席の婦人がパステルナークは自分の教え子だと言い始め、そのうち機内全員がパステルナークと関係があることがわかるというストーリー。何故そんな偶然が起こったかというブラックなオチが用意されています。
2番目の「おもてなし(Las Ratas:鼠たち)」は、雨の夜、郊外のレストランに傲慢な中年客が来店し、接客したウェイトレスは、その男が親を破滅させた高利貸しだと気付きます。ポテトに殺鼠剤を入れてやろうという調理人の女性をウエイトレスが止めるのですが、いつの間にか入れてしまい、それを高利貸しが食べ始めて、さぁどうなることでしょうというお話。
3番目の「エンスト(El más fuerte:最強の男)」は、文字通りのスラップスティック・コメディです。田舎道をノロノロ走っているポンコツ車を、悪態をつきながら追い越したAUDI(最上段の写真)。その先でパンクしてしまい、路肩で修理しているとポンコツ車が追いついてきます。根に持っていそうな運転手を見て、慌てて車内に逃げ込むのですが、彼は車を駐めて降りてきて、と展開していきます。
4番目の「ヒーローになるために(Bombita:爆弾ちゃん)」は、建物の解体などを請け負う爆弾技師をリカルド・ダリンが演じる、本作の中では割とまともなお話です。仕事帰りに娘の誕生会用のケーキを買っていると、車がレッカー移動されてしまいます。
駐車禁止の表示がなかったと文句を言いますが相手にされず、レッカー代をとられた上に誕生会にも間に合わなくて散々です。翌日、違反金を払いにいった警察で一悶着起こして、自治体が得意先である会社から解雇され、妻からは離婚を迫られて、どんどん追い込まれていってしまう中年男性の悲哀と一発逆転を描いていきます。
5番目の「愚息(La Propuesta:提案)」は、金持ちの一人息子が車でひき逃げしてしまい、弁護士は両親に、使用人にお金を払って罪を被ってもらおうと提案。しかしその企みを検察官が見破り、彼も買収しようとして金額が嵩んだことから、父親が息子に自首を勧めてみんなの狸の皮算用が狂ってしまうというお話。母親役を「幸せパズル」そのままのマリア・オネットが演じています。
6番目の「Happy Wedding(Hasta que la muerte nos separe:死が我らを分かつまで)」はインターコンチネンタルで豪華な結婚式を挙げていた新婦が、新郎の友人卓にいる女性が新郎の浮気相手だと気付きます。そしてスラップスティックな展開に繋がっていくのですが、最後はまさかのエンディングで観客を唖然とさせる仕掛けになっています。
ということで、万人受けする作品とは思えないものの、それぞれのストーリーも分かりやすいし、けっこう楽しませてくれる映画です。スペイン語がわかる方は是非、わからない方も暇つぶしにご覧になってみてください。
公式サイト
人生スイッチ(Relatos salvajes)facebook
[仕入れ担当]
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