映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(The Founder)」
ハンバーガーチェーン・マクドナルドの「創業者」であるレイ・クロック(Ray Kroc)を描いた映画です。なぜ「創業者」とカギ括弧に入れたかといえば、最初にハンバーガーショップ・マクドナルドを始めたのはマクドナルド兄弟で、彼らが考え出したやり方を広めてフランチャイズチェーンを築き上げたのがレイ・クロックだからです。
物語はミルクシェイク製造器の冴えないセールスマンだったクロックが、マクドナルド兄弟を説得して内部に入り込み、業容を拡大していくというもの。ビジネスマンの半生記というと、老人の自慢話のようなウンザリさせられるものも多いのですが、この映画はかなり楽しめると思います。
その理由の1つが、マクドナルドをオープンに描いているから。本作はマクドナルドから協力を得ていませんので、まったく宣伝臭がないばかりか、誹謗中傷と誹りを受けそうなエピソードまで平気で取りあげています。
そしてもう1つが、クロックがとんでもない人間だから。エゴが強くて独善的で、まったく共感できない小悪党です。起業家の映画でいえば「スティーブ・ジョブズ」や「ソーシャル・ネットワーク」も主人公を“イヤな奴”として描いていましたが、ジョブズやザッカーバーグが信念を押し通す身勝手な人間だとすれば、クロックは小賢しく立ち回ることで生き抜いてきたセコい人間。
そのあたりを躊躇なく描ききっているところが、この映画に説得力と躍動感、ある種のリアリティを与えているのだと思います。
クロックの胡散臭さを際立たせる話として、彼は寝る前にクラランス・フロイド・ネルソン博士(Dr. Clarence Floyd Nelson)という架空のモチベーショナル・スピーカーが録音した"The Power Of The Positive"というレコードを聴きます。これでヤル気を奮い立たせ、ぱっとしないセールスマン稼業を続けてきたわけです。
マクドナルドの経営に参画し、フランチャイズ化に成功すると、レコードの語りそのままを関係者の前で語り始めます。その〆は“franchise, franchise, franchise”の三唱。元マイクロソフトCEOスティーブ・バルマーの“Developers, Developers, Developers”と同じノリですが、業者に対する気持ちは皆無で、自分中心の性格は変わりません。
そのレイ・クロックを演じたのが「バードマン」のマイケル・キートン(Michael Keaton)で、醸し出す雰囲気がクロックのイカサマっぽいキャラクターにぴったりです。そしてその最初の妻エセルを演じたのがローラ・ダーン(Laura Dern)。このところ「ザ・マスター」「きっと、星のせいじゃない。」「わたしに会うまでの1600キロ」とよく見かける女優さんですが、今回も作り笑いが貼り付いたような表情で幸の薄そうな役をリアルに演じています。
最初の妻と書いたのは、レイ・クロックは3度結婚していて、映画では3番目の妻になるジョーンとの関係が描かれますが、中継ぎ的にジョン・ウェインの秘書だったジェーンという女性とも結婚しています。簡単に言えば、ジョーンと再婚したくてエセルと離婚したものの、ジョーンが離婚したくないと言い出したので諦めてジェーンと再婚。その後、ジョーンの気が変わって離婚したので、慌てて自分も離婚してジョーンと再婚という流れ。当然とも言えますが、女性に対する倫理観もゼロです。
そして最終的に兄弟からマクドナルドを奪い取るという暴挙に出ます。マクドナルド兄弟が、高品質の商品を短時間で提供するために創り上げた高効率オペレーションを、その核となる部分だけ頂戴して、品質よりコスト重視の事業展開を始めるのです。一例として、ミルクシェイクの原料を生乳から粉ミルクに変えて光熱費削減を図ろうとする逸話が出てきます。
そのきっかけになるのが、上記のジョーンとその夫ロリー・スミスがフリーザーの電気代がかかって大変だと言ったこと。そしてジョーンがコスト削減策として示すのがパウダー状のミルクシェイク・ミックスで、マクドナルド兄弟は生乳しか認めないと反対しますが、クロックがそれを押し通したことで、彼らの関係もマクドナルドの経営姿勢も変化していきます。
ということで、マクドナルド成功の裏側を描いた本作、ハンバーガー好きでなくても楽しめる1本だと思います。ちなみに、監督を務めたのは「しあわせの隠れ場所」「ウォルト・ディズニーの約束」のジョン・リー・ハンコック(John Lee Hancock)で、エンディング近くに記者の役でカメオ出演しています。
公式サイト
ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(The Founder)
[仕入れ担当]
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