ラテンビート映画祭「家族のように(Una especie de familia)」
こちらも「ネルーダ」「サマ」と同じくアルゼンチン映画です。今年のラテンビート映画祭は、直前に上映中止になったり、上映日が変更になったりして思うように作品を選べず、結局3作だけの観賞、それもすべてアルゼンチン映画となってしまいました。
本作はディエゴ・レルマン(Diego Lerman)監督の第5作目。先月開催されたサン・セバスティアン映画祭(Festival Internacional de cine de Donostia-San Sebastián)のコンペティション部門で脚本賞を受賞しています。
2014年の最優秀映画賞に「マジカル・ガール」を選んだこの映画祭、今年度の栄冠はジェームズ・フランコ監督・主演の米国映画「The Disaster Artist」に輝きました。ちなみ贈られるコンチャ・デ・オロ(金の貝殻賞)は、サンティアゴ巡礼の目印と同じくホタテ貝のデザインです。
この映画祭にはドノスティア賞という功労賞が設けられていて、今年はリカルド・ダリン、モニカ・ベルッチ、アニエス・ヴァルダが選ばれた関係で、街中いたるところに彼らの写真が飾られていました。どんどんメジャーになってきたリカルド・ダリンと、じわじわ復活を遂げたモニカ・ベルッチはこれからも注目ですね。下はサン・セバスティアンの素敵なお花屋さんのショーウィンドウに並べられていた2人の写真です。
話が逸れてしまいましたが映画「家族のように」のお話です。
物語は、新生児を養子にしようと試みて翻弄される女医が主人公。これも巻き込まれ型サスペンスというのでしょうか。さすが脚本賞を受賞しているだけあって、何かに絡め取られるようにドツボに嵌っていく展開が自然です。
オープニングは夜の街道沿いに佇む女医マレナで、何に躊躇しているかといえば、自分が貰い受けることになっている子どもが産まれるという知らせを受けて、現地に赴くべきか否か決めかねているのです。結局、アルゼンチン北部のミシオネスに向かうことにします。
マレナは女医ですから一種のエリートで、首都ブエノスアイレスでそれなりに裕福な生活をしています。それに対してミシオネスという地域は、パラグアイとブラジルに挟まれた僻地で、住民たちの生活もみるからに厳しそう。その顕著な経済格差が、闇の養子縁組を成り立たせているようです。
アルゼンチンの法律のことはわかりませんが、どうやら新生児を養子縁組することはできないようです。しかしマレナには、成長した子どもを養護施設から迎えるより、産まれて間もない赤ちゃんを貰いたいという強い思いがあるようです。
現地の病院でコスタス医師から迎えられたマレナは、まだ若いマルセラと対面します。既に2人の子持ちのマルセラは3人目を妊娠しており、養子に出すことに対するストレスのせいか身体的にも精神的にも不安定です。少しハラハラさせますが、無事に赤ちゃんが生まれ、その赤ちゃんを一時的に世話してくれる人も見つかって、ひと安心。
と思いきや、マルセラの夫が出稼ぎ先のブラジルで問題を起こし、刑務所に入れられたという話が親族から伝えられます。つまり、これからのマルセラの生活を支えるために、いくらか出して欲しいという要望です。
エリートにとって出せない金額ではないようですが、元もと赤ちゃんの対価を払うつもりはない上に話そのものも眉唾ものです。また、これは闇の取引ですから、この先さらなる要求が続くかも知れません。そう簡単に承諾できない話です。
とはいえ、新生児を抱いてしまったマレナに、赤ちゃんを手放す気持ちは毛頭ありません。結局、別居中の夫に相談して捻出してもらうことになります。それでハッピーエンドに進むと思わせておいて、また新たな困難が立ちはだかるのですが、この先は観てのお楽しみです。
主役を務めたバルバラ・レニー(Bárbara Lennie)はスペイン・マドリード出身の女優。このブログでは店員役で出た「私が、生きる肌」や麻薬捜査官役で出た「エル・ニーニョ」もご紹介していますが、強く印象に残るのはゴヤ賞の主演女優賞に輝いた「マジカル・ガール」のバルバラ役でしょう。
その夫、マリアノを演じたクラウディオ・トルカチル(Claudio Tolcachir)は「失われた肌」にも出ていたというブエノスアイレス出身の俳優、コスタス医師を演じたダニエル・アラオス(Daniel Aráoz)は「ル・コルビュジエの家」で強面の隣人を強烈な個性で演じていたアルゼンチン・コルドバ出身の俳優です。
[仕入れ担当]
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