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2018年1月15日 (月)

映画「ジャコメッティ 最後の肖像(Final Portrait)」

00 このブログでも昨夏、国立新美術館で開催された大回顧展をご紹介(こちら)したアルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)。独特のフォルムを持つ彫刻作品が有名ですが、油彩などの絵画作品もたくさんあります。

本作は、彼の肖像画のモデルとなった米国人の美術評論家ジェームズ・ロード(James Lord)が著した回顧録“A Giacometti Portrait (邦訳:ジャコメッティの肖像)”をベースに、ジャコメッティの晩年の素顔を描いた映画です。回顧録の原題のとおり、1点の肖像画を描きあげるまでのエピソードで構成されています。

監督は、俳優としての方が有名なスタンリー・トゥッチ(Stanley Tucci)。監督した作品を挙げるより、「ハンガー・ゲーム」シリーズのシーザー・フリカーマン役、「スポットライト」の弁護士役、「ラブリーボーン」の犯人役といった方がわかりやすいでしょう。

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映画は1964年の秋、パリ取材中にジャコメッティから肖像画のモデルを務めて欲しいと請われたロードが、イポリット・マンドロン通り46番地(ストリートビュー)にあったジャコメッティのアトリエを訪問する場面からスタート。

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当初は2〜3日で終わると思っていたロードでしたが、ジャコメッティの描き直しやさまざまな要因で18日間にわたってモデルを務めることになります。

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アトリエには、妻のアネット、ジャコメッティの弟でありアシスタントでもあったディエゴがいる他、お気に入りの娼婦カロリーヌも出入りしていました。

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問題はそのカロリーヌ。彼女にジャコメッティが翻弄され、間接的にロードも振り回されることになります。

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もちろん、アネットはカロリーヌの存在をよく思っていません。時には不満を示して衝突することもありますが、かろうじてディエゴがバランスをとっている状態です。

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そんな彼らの日常にロードが忍耐強く付き合い、観察し続けた日々を描く本作。このとき完成した肖像画は現在、クリスティーズ(こちら)で2000万ドル強で売られています。

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面白いのは、ジャコメッティの身勝手さと、歯に衣着せぬ物言い。たとえば、ピカソの彫刻に協力したとドラ・マールから聞いたが、というロードの質問(ロードはピカソとも親しかったようで“Picasso and Dora”という著作もあります)をきっかけに、ピカソに対する悪態をつきまくります。ちなみにこのシーン、アトリエ近所のモンパルナス墓地を散歩しているように見えますが、本作はすべて英国内で撮影されたそうです。

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また、オペラ座(ガルニエ宮)の天井画をシャガールが描いたことについても、あんなもの呼ばわりして腐します。そういった偏屈なキャラクターを「英国王のスピーチ」「鑑定士と顔のない依頼人」のジェフリー・ラッシュ(Geoffrey Rush)が飄々と表現しているところが見どころでしょう。

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使われている音楽も洒落ています。特に、先ごろ亡くなったフランス・ギャル(France Gall)の“Jazz a gogo”はこの時代の雰囲気を伝えるだけでなく、いま聴いてもとてもいい感じでした。

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ジェームズ・ロードを演じたのは「ソーシャル・ネットワーク」「J・エドガー」「コードネーム U.N.C.L.E.」「ノクターナル・アニマルズ」と順調にキャリアを積み、4月公開の「君の名前で僕を呼んで」への期待も高まるアーミー・ハマー(Armie Hammer)で、弟ディエゴ役は同監督の処女作にも出演したというトニー・シャルーブ(Tony Shalhoub)。

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その他、妻アネット役を「サガン」のシルヴィー・テステュー(Sylvie Testud)、娼婦カロリーヌ役をクレマンス・ポエジー(Clémence Poésy)が演じています。

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公式サイト
ジャコメッティ 最後の肖像Final Portrait

[仕入れ担当]

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