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2018年6月11日 (月)

映画「レディ・バード(Lady Bird)」

00 パートナーであるノア・バームバックと共同で脚本を書き、自ら主演した「フランシス・ハ」がアカデミー脚本賞にノミネートされたグレタ・ガーウィグ(Greta Gerwig)。女優としても大活躍で、去年だけでも「マギーズ・プラン」「ジャッキー」「20センチュリー・ウーマン」の3本が日本公開されましたが、いよいよ本作で監督デビューです。今年のアカデミー賞でいきなり監督賞、脚本賞など5部門にノミネートされて話題になりました。

地域性や時代性など監督の自伝的要素を盛り込みながら、高校最終学年の娘とその母親の関係の難しさや可笑しさを描いていく作品です。

わたし自身、母親の言いなりになるのがイヤで早く都会に出たいと思っていた田舎の高校生でしたので、何度も心がかき乱されました。特に母親に向かって“give me a number.....”(私にいくらかかったか言ってみて)という場面は、気持ちがわかり過ぎて心が痛いぐらいでしたが、育った環境が違えば共感できないかも知れませんね。

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主演は「ハンナ」「ブルックリン」のシアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)で、自分のことをクリスティンという本名ではなくレディ・バードと呼ばせている、我の強さと気の弱さが同居する17歳の少女を演じます。

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そしてその母親マリオンを演じたのはローリー・メトカーフ(Laurie Metcalf)。グレタ・ガーウィグの母親は産科で働いていたそうですが、本作のマリオンも病院勤務の看護婦という設定で、舞台がサクラメントであることと並んで、監督の少女時代が強く反映されている部分です。

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物語の幕開けはマリオンが運転する車の中で、クリスティンの大学進学を巡って口論になる場面。家計のことを考慮して地元の州立大学に進むべきだというマリオンに対し、東海岸の大学に進みたいと反駁していたクリスティンが怒りにまかせて車から飛び降りてしまいます。その結果、映画の前半は右手にギプスをした姿で登場することになります。

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彼女が通うカソリック系の高校は裕福な家庭の子女が多いようで、クリスティンは経済的格差に敏感になっています。それが如実に現れるのが、新しく友だちになったジェナという女の子からどこに住んでいるか訊かれたとき。

クリスティンの自宅は彼女が言うところの“wrong side of the tracks”(線路の向こう側の貧困地区)にあるのですが、見栄を張ってボーイフレンドの祖母の家の場所を言ってしまいます。パーティ用のドレスを買いに行くのがリサイクルショップ(Thrift Store)だったりするあたりにも生活レベルが現れているのかも知れません。

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いずれにしても、成績も家柄も誇れるものではなく、いろいろと自信がない割に自意識だけは過剰という、この世代にありがちな難しさを体現しているクリスティン。親友のジュリーと一緒に高校の演劇プログラムに参加し、ダニーという男の子と出会います。彼の祖母が上で書いた家に住んでいるのですが、ロマンティックな関係になりかけたところで、ダニーがゲイであることを知ってしまい、破局を迎えます。

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続いてカイルという気取った男の子と出会い、その仲間であるジェナに近づきたくて上記の見栄を張ることになります。不良っぽくて世慣れた彼女と親しくなるにつれて、ちょっぴり太めで気の良いジュリーとは距離を置くようになり、演劇プログラムからも離脱します。

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カイルに対する憬れが、これまでとは違った世界へ彼女を誘い、さまざまな価値観が揺らぐのです。大なり小なり誰もが通過する道ですね。

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そんなとき、彼女の父親が失業し、ずっと鬱病で苦しんでいたことを知ります。それでも東海岸の大学に進みたいという気持ちは強くなるばかり。近くのカリフォルニア大学デービス校から入学許可が出ているのですが、母親に隠れて東海岸の大学に願書を送り、父親に奨学金申請の協力をしてもらいます。

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結局のところ、母親のマリオンも娘のクリスティンも強情な性格で、一度決めたことは変えたくないという似たもの同士なのです。いつも喧嘩ばかりしていますが、お互いに嫌っているわけではありません。そういった母親の立場や気持ちがわかるようになるまでの娘の成長を描いた映画と言っても良いでしょう。

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もちろん見どころはシアーシャ・ローナンとローリー・メトカーフの丁々発止の演技です。シアーシャ・ローナンのニキビ面が気になるかも知れませんが、彼女は直前までブロードウェイでアーサー・ミラー「るつぼ(The Crucible)」の舞台に立っていて、メイクで肌が荒れていたことを逆に活かして、思春期の少女らしい雰囲気にしたそうです。

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最初のボーイフレンドであるダニーを演じたのは「とらわれて夏」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「スリー・ビルボード」のルーカス・ヘッシズ(Lucas Hedges)、二番目のボーイフレンドであるカイルを演じたのは「クーパー家の晩餐会」「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet)で、人気の若手男優を揃えているあたり、さすがグレタ・ガーウィグです。

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ジェナを演じたのは「ギヴァー 記憶を注ぐ者」に出ていたオデイア・ラッシュ(Odeya Rush)で、ジュリーを演じたのはジョナ・ヒルの妹、ビーニー・フェルドスタイン(Beanie Feldstein)です。

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その他、演劇プログラムの指導神父を「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」のスティーヴン・ヘンダーソン(Stephen Henderson)、父親ラリーを「8月の家族たち」の脚本家であり「ペンタゴン・ペーパーズ」にも出ていたトレーシー・レッツ(Tracy Letts)が演じています。

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公式サイト
レディ・バードLady Bird

[仕入れ担当]

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