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2018年7月23日 (月)

映画「ウインド・リバー(Wind River)」

00 米国のインディアン居留地(リザベーション)で5番目の規模をもつというワイオミング州ウインド・リバーを舞台にしたサスペンスです。「ボーダーライン」の脚本家テイラー・シェリダン(Taylor Sheridan)の初監督作で、この脚本家らしい辺境の闇をベースにした人間ドラマが展開します。撮影監督は「ハッシュパピー バスタブ島の少女」「きっと、星のせいじゃない。」のベン・リチャードソン(Ben Richardson)。寂寞とした映像が物語とうまくかみ合い、去年のカンヌ映画祭で「ある視点」部門の監督賞に輝いています。

映画の始まりは雪の中をよろよろと走る若い女性の姿。何かから逃げているようで、何度も倒れながら前進しようと必死です。冬場は氷点下30度まで冷え込むというウインド・リバーの雪原。この寒さの中を走り続けると、吸い込んだ冷気で気管の細胞が凍って窒息するそうです。そんな過酷な場所を6マイル(約10キロ)も裸足で走ってきた女性が、ネイティブ・アメリカンのナタリー・ハンソン。彼女が行き倒れで見つかったことで物語が動き始めます。

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第一発見者は合衆国魚類野生生物局(U.S. Fish and Wildlife Service)のハンター、コリー・ランバート。害獣駆除のため雪原に残されたプーマの足跡を追っているうちに、人の倒れた跡と血痕、そこから続く足跡を見つけます。そして雪に半分埋まったナタリーを発見するのですが、実は彼女、コリーの娘エミリーの親友だった少女なのです。

コリーはネイティブ・アメリカンではありませんが、当地出身の妻ウィルマと結婚してエミリーと息子のケイシーをもうけ、居留地の生活に馴染んでいます。ナタリーの両親であるマーティン、アニーとも旧知の間柄です。

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コリーは部族警察長のベンに連絡し、殺人の疑いがあるということで一緒にFBI捜査官の到着を待ちます。

ここが米国の特殊事情で、インディアン居留地には部族警察があるのですが、殺人事件のような重要犯罪は連邦捜査局の担当になり、行き倒れのような事故死の場合は部族警察の担当になるとのこと。自治権があると言われながら、実質的に連邦政府に従属している居留地制度の矛盾が透けて見えるシーンです。

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FBIから派遣されてきたのはジェーンという若い女性の捜査官。吹雪の中、道路を見失って立ち往生した上に、車から降りてきたらFBIのジャンパーを羽織っただけの薄着で、待っていた2人は最初からやれやれ気分です。コリーはジェーンをウィルマの実家に連れて行き、娘エミリーの防寒着を貸し与えてから現場に案内します。

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現場で遺体を見たジェーンは、検察医に送るように部族警察に指示し、医師にレイプキットを用意して待つように伝えて欲しいと言い添えます。つまりナタリーはどこかで暴行され、そこから裸足で逃げてきて命を落としたという見立てです。映画を観ていて驚いたのは遺体を運ぶために周りの雪をチェーンソーで切り始めること。固く凍り付いていて、下の雪ごと切り出すしかないのでしょう。

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集落に戻ったジェーンはベンと共にナタリーの実家を訪ね、彼女の父親マーティンと、心を病んだ母親アニーと会います。ナタリーは事件の夜、恋人のマットと会っていたことが分かりますが、その後、彼の遺体が雪原で発見されることに……。

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ナタリーの兄チップがドラッグディーラー仲間と暮らすトレーラーハウスに踏み込むなどして事件の真相に近づいていくのですが、謎解きが単純な1本線で進みますので、ミステリー作品としての面白さはあまりありません。どちらかというと、娘を失ったマーティンと自らの過去と向かい合うことになるコリーの心の交流、辺境の現実を知ったジェーンの精神的成長といったあたりにポイントを置いている印象です。

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それにも増して重要なのは、インディアン居留地のリアルを真っ正面から描いていること。この映画は試写会で観たのですが、終映後、池上彰さんのトークショーがあり、映画のバックグラウンドであるネイティブ・アメリカンの社会的位置付けを解説されていました。

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白人の入植で荒れ地に追いやられた彼らは、それまで収入源だったバッファローの代わりにカジノの経営許可を与えられたそうです。その売上で自治区運営が賄われる反面、部族の自尊心や勤労意欲は失われていきます。ナタリーが恋人マットからカリフォルニアのオーハイ(Ojai)に行って一緒に暮らそうと誘われるシーンが出てきますが、この地域の若者にとって出ていけるなら出ていきたい場所なのです。

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結果的に残った若者はアルコール依存や薬物中毒になり、犯罪率も高くなっているそうです。映画の終わりに“失踪者の統計にネイティブ・アメリカンの女性のデータは存在しない。実際の失踪者の人数は不明である”というテロップが表示され、その犯罪の多くが女性への暴力であることが示唆されます。

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池上さんによると、同様の原住民が暮らすカナダで行われた調査では、1980年から2012年の32年間に行方不明になったか殺害されたネイティブ・アメリカンの女性は1,181人だったとのこと。実際には更に多く、その数が2倍から3倍に上るだろうと言われているそうです。映画の冒頭で示される通り、そのような数々の犯罪にインスパイアされた作品です。

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またこれもトークショーで知ったことですが、映画の序盤で逆さまに掲げられた星条旗が映り込むのは、この地域がアンチ連邦政府であることを示すものだとのこと。インディアン居留地では白人や連邦政府への反感が根強く、FBI(連邦捜査局)やBIA(インディアン管理局)に否定的な人が多いそうです。この映画でいえば、行政官である部族警察長やコリーはFBIに一定の理解を示しますが、ウィルマの実家や被害者ナタリーの両親はジェーンに心を開きません。このような背景を知った上で観ると、また味わいも違ってくるかと思います。

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主な出演者は、主役ジェーンを演じたエリザベス・オルセン(Elizabeth Olsen)と、その協力者となるコリーを演じたのがジェレミー・レナー(Jeremy Renner)。近作「メッセージ」での演技はいまいちだったジェレミー・レナーですが、本作では「アメリカン・ハッスル」「エヴァの告白」に通じる誠実さを前面に出した演技が良い感じでした。カーハートのチョアコートが良く似合っていますね。

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公式サイト
ウインド・リバーWind River

[仕入れ担当]

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