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2019年2月 3日 (日)

映画「ジュリアン(Jusqu'a la garde)」

00 一昨年のベネチア映画祭で銀獅子賞に輝いた作品です。監督は新鋭のグザビエ・ルグラン(Xavier Legrand)。2013年に発表した初監督作の短編映画「Avant que de tout perdre(すべてを失う前に)」がセザール賞の最優秀ショートフィルムに選ばれ、その物語を膨らませたという本作。引き続きDVがテーマで、演じる夫婦も短編と同じ俳優だそうです。

映画の始まりは裁判所での親権争い。控え室にいた裁判官が廊下を抜け、部屋に入ってそれぞれの弁護人の主張を聞きます。妻ミリアムの弁護人は小学生の息子ジュリアンからの聞き取りを証拠として提出していて、それによるとジュリアンは父親アントワーヌと会いたくないとのこと。高校生の娘ジョゼフィーヌが、以前、父親から暴力を振るわれたことがあるという診断書も提出されています。

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アントワーヌ側の弁護人は、妻ミリアムの誘導による証言だとか、古い話で信憑性がないなどと証拠を否定し、アントワーヌに対する周囲の人たちからの好評価を語って、善き夫でなくても善き父でいられると主張します。つまり、夫婦間の諍いがあるのみで、親子間の問題はないということ。

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この映画、仏語の原題は“保護に至るまで”という意味ですが、英語タイトルは“custody”、つまり親権です。英語タイトルはそもそもの原因を説明したもの、原題は結末を示したものといえるかも知れません。そのどちらでもない邦題は、おわかりのように息子の名前で、彼が最重要人物となって物語が展開します。

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冒頭の調停シーンでは、思い込みの激しい妻が、実際以上に夫の悪い部分をあげつらっているようにも見えます。彼らの外見がそう感じさせるのかも知れません。か細くて神経質そうなミリアムと、小太りで愚鈍な印象を与えるアントワーヌ。子どもに会いたいばかりに、仕事を辞め、妻の実家の近くに引っ越したという話も、一本気で純朴な性格をイメージさせます。

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結果的にジュリアンは共同親権となり、隔週末でアントワーヌと過ごすことになります。とはいえ、アントワーヌが預かる週末になり、ミリアムの両親の家まで迎えに来ても、ジュリアンの体調が悪いと言って彼に渡そうとしません。結局、裁判所の命令に従わないなら訴えてやる、というアントワーヌの脅しに屈することになるのですが、このあたりからアントワーヌの強権的な態度とミリアムの精神的な衰弱が見え始めます。

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ジュリアンを連れ帰ったアントワーヌは両親の家で食事しますので、アントワーヌとミリアムは同郷ということなのでしょう。ブルゴーニュ周辺で撮ったという地方都市らしい閑散とした町並みとは裏腹に、画面の緊張感は次第に高まってきます。ジュリアンが母親の電話番号を隠すのも、居所を知らせないのも、すべてミリアムを守るためなのです。

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最後は思っていた以上にシンプルな展開になります。個人的には、もうひとひねりあるのかと思っていましたが、DVの恐怖を強調するために、夾雑物を省いた方が良いという判断なのでしょう。このような胸騒ぎを誘うような盛り上げ方がグザビエ・ルグラン監督のスタイルなのかも知れません。

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母親ミリアムを演じたのはレア・ドリュッケール(Léa Drucker)、物語の肝になる少年ジュリアンを好演したのはトーマス・ジオリア(Thomas Gioria)、その姉ジョゼフィーヌを演じたのはマティルド・オネブ(Mathilde Auneveux)。いずれもDVと共存してきた家族のリアルをうまく醸し出していたと思います。

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そしてアントワーヌを演じたドゥニ・メノーシェ(Denis Ménochet)。鷹揚なように見えて、カッとなると抑えられない男は適役でしょう。ランス・アームストロングのドーピング疑惑を描いた映画「疑惑のチャンピオン」でUSポスタルチームのディレクターを演じていた人です。

公式サイト
ジュリアン

[仕入れ担当]

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