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2019年3月11日 (月)

映画「天国でまた会おう(Au revoir là-haut)」

0 フランスの小説家、ピエール・ルメートル(Pierre Lemaitre)が書いた2013年ゴンクール賞受賞作の映画化です。ミステリで有名な作家ですが、本作は第一次世界大戦を背景にしたサスペンスで、その根底にあるのは戦争の愚かしさ。戦争を利用して成り上がった美青年の中尉と、その配下で苦汁をなめた元兵士たちの物語です。

タイトルは独仏開戦から間もない1914年12月4日に敵前逃亡の汚名を着せられ、見せしめに銃殺された6名の兵士の一人ジャン・ブランシャール(Jean Blanchard)が妻に遺した言葉から取ったもの。これだけでも戦争に対する作者の立ち位置は明白です。小説ではエピグラフにこの言葉を掲げ、後書きではブランシャールはじめ第一次世界大戦で亡くなったすべての国々の人に思いを馳せると記しています。ちなみにこの6名は1921年1月29日に名誉回復されたそうで、フランスでは Martyrs de Vingré(ヴァングレの殉死者たち)として知られているようです。

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こういったベストセラー小説の映画化には珍しく、小説の枠組みを活かしながら、ひと味ちがった面白さを与えてくれる作品です。映像的な起爆力がある場面を徹底して強化しただけでなく、小説になかったエピソードや設定で盛り上げ、マスクの工夫など視覚的な楽しみも付け加えています。原作者が脚本に参加しているだけのことはあります。

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映画の幕開けは、主人公のアルベールがモロッコで尋問を受けている場面。これは映画で新たに加えられた設定で、時系列に進んでいく小説とは違い、アルベールが過去を振り返って告白するというスタイルが取られます。これはうまい作りで、物語をわかりやすくしているだけでなく、最終的にこの尋問シーンに戻ってくることで別の階層のエンディングを創り出します。

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そして時代は戻って1918年11月2日。物語の舞台は独仏戦線113高地の塹壕です。休戦が噂され(10日後に休戦になります)厭戦感が漂う中、老兵と新参兵が偵察に行くように命じられます。敵のドイツ軍も、フランス軍と同じく休戦を待ってジリジリしているに違いないのですが、上から命令が出た以上、前線まで這って行くしかありません。どうせドイツ軍も偵察ぐらい放っておくだろうと、誰もが甘く見ていましたが、それに反して二人はいきなり銃撃されて斃れます。塹壕の兵士たちがいきり立つより早く、後方の砲兵隊がドイツ軍めがけて一斉射撃を開始して混戦の始まりです。

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従軍前はパリ共同銀行で経理の仕事をしていたという無口な青年アルベールも、塹壕から出て突撃の隊列に加わります。ジグザグに走っているうちに、偵察に出て撃ち殺された老兵の遺体を見つけます。そして、この老兵が背中から銃弾を受けていることに気付くのです。

老兵の背中に2発、新参兵の背中に1発の計3発。塹壕で聞いた銃声と合っています。そして味方の誰が彼らを撃ったのか、休戦で功績を上げられなくなることを厭う人間が誰か思い当たった瞬間、背後から自分に向かって突進してくるプラデル中尉を目にします。万事休すと思いきや、砲弾の穴に落ち、そのまま生き埋めになっていまうアルベール。

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その彼を助けてくれたのが、絵の上手なエドゥアールでした。しかし、アルベールを穴から引きずり出すと同時に近くに爆弾が落ち、顔面を大きく負傷してしまいます。

アルベールは野戦病院からパリまでエドゥアールに付き添って面倒をみます。面倒を見るというのは、食事の手伝いとモルヒネを調達すること。顎を失っているので、挽きつぶした食材を喉から注入しなくてはならず、また痛み止めを使いすぎてモルヒネ中毒になってしまったので常にどこかで入手して確保しなくてはならないのです。

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除隊後の公的保障はないようで、アルベールが働いて二人の生活の糧を得なくてはなりません。ボンマルシェでエレベーター係(liftier)をしたり、路上で広告塔(Homme-sandwich)を務めたり苦労するのでですが、そこでエドゥアールが目をつけたのは、これから各地に建てられる戦没者追悼記念碑。デザインを描いてカタログを作り、発注されたら前払金を持ち逃げしようというアイデアです。公金詐欺で捕まったら大変なことになるとアルベールは反対しますが、国に命じられて戦争に行き、このありさまなわけで、結局、エドゥアールに押し切られるかたちでカタログの制作資金を集めることになります。

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そこにエドゥアールの姉マドレーヌと、姉弟の父であり資産家のマルセル・ペリクール、うまくマドレーヌを言いくるめて彼女の夫に収まっていたプラデルが絡んできて、縦横無尽に物語が展開していきます。プラデルは名家の一員になっただけでなく、義父のマルセルから疎まれながらも、戦後処理事業を詐欺的なやり方で成功させているところがミソ。

対するエドゥアールは、借りている部屋の大家の娘(映画では引き取られた孤児ですが原作では実の娘)であるルイーズの協力を得ながら詐欺の準備を着々と進めていきます。

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そのエドゥアールを演じたのが「BPM ビート・パー・ミニット」のナウエル・ペレーズ・ビスカヤート(Nahuel Pérez Biscayart)。せっかくの美形なのに、マスクで顔を隠す役は勿体ないと思いましたが、目元だけで感情を伝える演技が絶妙でした。ピカソ風やデュシャン風のユーモラスなマスクも、過酷な状況に緩急をつけていて良かったと思います。

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アルベールを演じたのは本作の監督であり、脚本も書いているアルベール・デュポンテル(Albert Dupontel)。どちらかというと役者としての活動の方がメインの人で「ロング・エンゲージメント」や「モンテーニュ通りのカフェ」に出ていたようです。とはいえ本作を観る限り、資金調達の面でも演出の面でも監督としての力量はかなりのものだと思いました。

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エドゥアールの父マルセルを「サラの鍵」「預言者」「パリよ、永遠に」「男と女、モントーク岬で」の名優ニエル・アレストリュプ(Niels Arestrup)、姉マドレーヌを「灯台守の恋」のエミリー・ドゥケンヌ(Émilie Dequenne)、原作では美青年という設定のプラデルを「エル ELLE」のローラン・ラフィット(Laurent Lafitte)が演じています。

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また、大家の娘ルイーズをエロイーズ・バルステ(Héloïse Balster)、ペリクール家の使用人でアルベールが惹かれるポリーヌを「ロープ/戦場の生命線」のメラニー・ティエリー(Mélanie Thierry)が演じていています。メラニー・ティエリーは公開中の「あなたはまだ帰ってこない」で主役マルグリット・デュラスを演じている注目株で、どことなくレア・セドゥに似た顔立ちの女優です。

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クライマックスシーンは原作も映画もボンマルシェ前のホテルルテシア(Lutetia)ですが、映画ではある種の和解が描かれます。個人的には路上で衝撃的な邂逅をする原作よりも良かったと思いますが、プラデルの扱いについては原作の厳しさを残して欲しかったと思います。ついでに記しますと原作のアルベールはモロッコではなく、トリポリ経由でベイルートに落ち着きます。

公式サイト
天国でまた会おう

[仕入れ担当]

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