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2019年7月29日 (月)

映画「シンク・オア・スイム(Le grand bain)」

Grandbain 往年のフランス映画スターたちが水着姿でメタボ腹をさらし、中年男性の悲哀を滲ませる映画です。登場するのは「毛皮のヴィーナス」「バルバラ」のマチュー・アマルリック(Mathieu Amalric)、「疑惑のチャンピオン」のギョーム・カネ(Guillaume Canet)、「ベティ・ブルー」「青い夢の女」のジャン=ユーグ・アングラード(Jean-Hugues Anglade)、「ゲンスブールと女たち」でボリス・ヴィアン役だったフィリップ・カトリーヌ(Philippe Katerine)、「ココ・アヴァン・シャネル」「神様メール」のブノワ・ポールヴールド(Benoît Poelvoorde)、「セラヴィ!」のアルバン・イワノフ(Alban Ivanov)といった面々。彼らが演じる公営プールの常連たちがシンクロナイズド・スイミング・チームを結成し、世界選手権を目指します。

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物語の元ネタは、実際にスウェーデンで結成された中年男性のシンクロナイズド・スイミング・チーム。彼らが非公式の世界選手権に出場するまでの経緯を描いた"Men Who Swim"という映画も作られていて、そちらには本作の邦題と同じ"Sync or Swim"という副題がついています。このタイトル、実は“シンク”の部分がシンクロナイズドを意味する"sync"と沈むことを意味する"sink"のダブル・ミーニングになっていて、後者を使った"Sink or Swim"を和訳すると“イチかバチか”の意味になるという仕掛け。ちなみに原題は“大きな風呂”ではなく、プールなどの深い部分(deep end)を指しているそうで、上級者向きの難しいチャレンジを含意しているようです。

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主役級の役者を揃えていますが、主人公はマチュー・アマルリック演じるベルトランということになりそうです。鬱病を患って2年ほど失業している彼は、ソファーに寝転んでゲームばかりしている毎日。妻の姉夫婦から同情とも憐憫ともいえない視線を向けられ、仕事を用意してあげると言われても落ち込むばかりです。そんな彼が気分転換に出かけた公営プールで、男子シンクロナイズド・スイミング・チームの募集案内を見つけ、吸い込まれるように入会してしまいます。きっと自分の居場所が欲しかったのでしょう。

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それは他のメンバーも同じで、皆それぞれ個人的な問題を抱え、その多くが中年の難しさを味わっています。たとえばギョーム・カネ演じるロランは、妻にも母にも邪険にされていつも怒りをたぎらせています。また、ジャン=ユーグ・アングラード演じるシモンは、ミュージシャンとして大成する夢を捨てきれず、キャンピングカーで生活しながら、離婚した妻と暮らす娘が通う学校の給食係をしています。フィリップ・カトリーヌ演じるティエリーは内気な性格のせいで女性と縁がなく、ブノワ・ポールヴールド演じるマルキュスは何度も事業を破綻させている実業家です。

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そんな彼らが、ノルウェーで開催される男性シンクロナイズド・スイミング世界選手権にフランス代表として出場しようとエントリーしてしまいます。もちろんそこまでの実力も自信もなく、メンバー内にも異論がありましたが、自分たちには“メダルが必要”という意見でまとまるのです。

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とはいえ、課題は技術や能力だけではありません。彼らのコーチ、デルフィーヌも、表面的にはしっかりしていますが、密かに心の闇を抱えています。元々はシンクロナイズド・スイミングの選手として有望視されていたものの、ペアを組んでいたアマンダが事故に遇い、共に選手生命が絶たれてしまいます。そして酒浸りになってアルコール依存症という転落の人生。その後、ある男性と出会って愛に救われたと言っていますが、これもまた問題ありで、練習も大詰めなのにプールに現れなくなってしまいます。

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代わりにコーチになってくれたのが車いすのアマンダ。しかしこれも善し悪しで、彼女の強烈なスパルタ式トレーニングに男性陣のストレスが爆発し、チームが壊れかけたりしますが、メンバーの奔走のおかげで何とかノルウェーの大会に漕ぎ着けます。中年男性たちと女性コーチのコントラスト、冴えない人生模様とプールでの頑張りのコントラストが切なくも可笑しい映画です。

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もちろん見どころは往年のスターたち。特に1996年のオリンピック選手だったジュリー・ファーブルについて7ヶ月練習したというシンクロの場面は必見です。体型でいえば、若い頃のイメージを保てているのはギョーム・カネぐらいでしょうか。ジャン=ユーグ・アングラードはその昔、衣装なしで「真夜中の恋愛論」に出ていましたが、あの面影はまったくありませんでした。マチュー・アマルリックも裸は厳しいでしょうね。本作の監督であり、もともと俳優でもあるジル・ルルーシュ(Gilles Lellouche)ですら“自分が水着で演技するなんて想像できない”と言い放っているほどですから、人に見せられる体型を保つのは大変そうです。

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女優では、デルフィーヌ役のヴィルジニー・エフィラ(Virginie Efira)は「エル」で向かいの銀行員の妻を演じていた人。アマンダ役のレイラ・ベクティ(Leïla Bekhti)は「預言者」や「ジョルダーニ家の人々」に出ていたようです。また、ロランの母親役のクレア・ナデュー (Claire Nadeau)は自身がセザール賞の助演女優賞にノミネートされた「とまどい」でジャン=ユーグ・アングラードと共演しています。そしてシモンの娘ローラを演じていたノエ・アビタ(Noée Abita)はこの前作にあたる2017年のデビュー作でいきなり主演に抜擢された期待の新鋭です。

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公式サイト
シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢Sink or Swim

[仕入れ担当]

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