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2019年8月 5日 (月)

映画「さらば愛しきアウトロー(The Old Man & the Gun)」

Theoldman ロバート・レッドフォード(Robert Redford)引退作という宣伝文句だけでは彼に思い入れのある人しか関心を持たないかも知れませんが、監督が「ア・ゴースト・ストーリー」のデヴィッド・ロウリー(David Lowery)、共演者がケイシー・アフレック(Casey Affleck)、トム・ウェイツ(Tom Waits)、シシー・スペイセク(Sissy Spacek)といった面々だと聞けば、映画好きの人なら気になるところでしょう。実際のところ、主役をロバート・レッドフォードが演じているというものの、ケイシー・アフレックとシシー・スペイセクの演技が印象に残る作品です。

オープニングで示されるように“概ね実話に基づく物語”ということで、あまりドラマティックな展開にはなりません。ディテイルで見せるタイプの映画だと思います。ロバート・レッドフォード演じる“紳士的な”銀行強盗フォレスト・タッカーと、彼が心を許す同世代の女性ジュエル、彼を追う若い刑事ジョン・ハントを軸に話が進み、小気味良い大団円を迎えます。

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脚本もデヴィッド・ロウリー監督が執筆していますが、その元になったのはデイヴィッド・グラン(David Grann)が2003年にニューヨーカー誌(The New Yorker)に発表した同タイトルの記事。話が逸れますが、デイヴィッド・グランはいま非常に勢いのあるライターで、彼が執筆したノンフィクション“Killers of the Flower Moon”もスコセッシ監督、ディカプリオ主演で映画化が進められているようです。そのノンフィクションの邦訳「花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」もとても読み応えある面白い作品ですので読書好きの方にはお勧めです。

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映画の始まりはフォレスト・タッカーが銀行強盗を働く場面。ジャケットの内側の拳銃をチラッと見せ、現金を要求してバッグに詰めて貰うだけ。なんともシンプルです。その後、警察の追尾を振り切って逃走中、運転していたピックアップトラックがエンストし、路肩でボンネットを開けていたジュエルと知り合います。演じてるシシー・スペイセクは1949年生まれですが、いまだとってもチャーミングで、彼女に惹きつけられていくフォレスト・タッカーと同じように、観客もどんどん魅了されていってしまいます。

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フォレスト・タッカーは10代で自動車を盗んで逮捕されたことを皮切りに、脱獄と犯罪と収監を繰り返し、生涯で400万ドル以上の銀行強盗をはたらいたそうです。犯歴と並行して3度ほどの婚姻歴もあり、その最後の相手が映画で取り上げられているジュエル。実際にはフォレストの正体を知らなかったと証言しているそうですから、エンディングの場面は映画を盛り上げるための演出でしょう。

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また、フォレストとジュエルが結婚したのは1982年ですが、映画では時代設定を少しズラして80年頃に置き換えることで、ロバート・レッドフォードが活躍した70年代を連想させる仕掛けになっています。スーパー16フィルムで撮った映像や、頻繁に登場するブルージェイレストラン(Blue Jay Restaurant)の佇まいが古き良きアメリカの雰囲気を醸し出し、多くのファンが望むであろうロバート・レッドフォード像を支えます。

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フォレストと組んで銀行強盗をはたらくのは、トム・ウェイツ演じるウォラーとダニー・グローバー(Danny Glover)演じるテディで、この一味は当局から“Over-the-Hill Gang”と呼ばれていたそうです。老いぼれという意味に脱獄犯のイメージを絡めているのでしょう。ちなみに原題は「老人と海(The Old Man and the Sea)」に引っかけているのだと思いますが、ストーリー的な共通性があるようには思えませんでした。

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この老人3人組が、銃を使わない“紳士的な”銀行強盗を繰り返すわけですが、彼らを追う警察は銃を使います。フォレストも撃たれますし、テディも撃たれます。しかし、ウォラーだけはなぜか最後まで無事で、トム・ウェイツもこういう役にキャスティングされるようになったのだな、と不思議な感慨を覚えました。見た目も、昔のようなイカレた感じはしません。ウォラーがテディに“アルゼンチン人の恋人と移住しようと思っている”と話すくだりで、アルゼンチンには詩人が多いよな、それはチリだろ、といった会話がなされ、ちょっとインテリっぽさを示したりもします。といっても、アルゼンチンにも詩人は多いと思いますが・・・。

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ということで、クスッと笑わせるシーンあり、旧作の引用ネタあり、ロマンスありと、バランスの良い作りで、ロバート・レッドフォードの魅力を伝えていく映画です。キンクスの“Lola”はじめ使われている音楽も小気味よく、美術の良さ、共演者たちの魅力と相まって映画そのものの完成度も高いと思います。リラックスして映画を楽しみたいときにお勧めです。

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公式サイト
さらば愛しきアウトローThe Old Man & the Gun

[仕入れ担当]

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