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2019年9月 2日 (月)

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in Hollywood)」

hollywood 映画を撮るのは10本までと公言しているクエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)の9作目。マニアにしかわからないような小ネタ盛りだくさんの上、やたら饒舌な会話劇でクライマックスは血みどろのバイオレンスという、いつもながらのタランティーノ映画でした。主役がレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)とブラッド・ピット(Brad Pitt)の組み合わせだからか幅広い客層で賑わっていましたが、往年のハリウッド映画に対するタランティーノの思いが160分にわたって披露されていきますので、彼の世界観が好きな方でないと長すぎると感じるかも知れません。

映画の舞台は1969年のハリウッド。こう書いただけで米国人ならピンとくる事件、マンソン・ファミリーによるシャロン・テート惨殺を予感させながら展開する物語です。内容はといえば、レオナルド・ディカプリオ演じる往年の人気俳優リック・ダルトンと、ブラッド・ピット演じるその専属スタントマンであるクリス・ブースの二人によるバディムービー。表面的には底抜けに明るくみえながら、泥沼化するベトナム戦争の影が差していたこの時代を、人気絶頂だったロマン・ポランスキーとシャロン・テートの夫婦、下り坂に差し掛かったリック・ダルトンとクリス・ブースのコンビに象徴させて描いていきます。

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リックはTVスターとして成功したものの、最近は新人俳優を盛り立てる悪役の仕事がメイン。当時、ハリウッドの人気俳優は自分と似た姿格好のスタントマンを抱えていたそうで、クリスは彼の専属スタントマンであると同時にドライバー兼雑用係としていつも行動を共にしています。リックはハリウッドの高台にある豪邸住まい、クリスはドライブインシアターの脇のトレーラーハウス住まいと生活レベルは大きく異なりますが、お互いに強い信頼関係で結びついています。

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とはいえ、クリスと違い絶頂を知っているリックにとって凋落は堪えます。豪邸の維持費が重くのしかかり、クリスを雇い続けていられるかも不安です。そんな折、映画プロデューサーのマービン・シュワルツからマカロニ・ウェスタンへの出演を持ちかけられ、ハリウッドで準主役を演じ続けるか、イタリアで主役に返り咲くか、心が揺れます。今をときめくロマン・ポランスキー夫妻が隣の屋敷に引っ越してきて、ますます焦燥感が募るリックですが、本番の前日に酒を飲み過ぎ、セリフをど忘れする醜態をさらして自己憐憫に陥ったりします。

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反戦運動が激化し、ラブ&ピースをお題目にヒッピー・ムーブメントが盛り上がっていたこの時代。クリスは街でヒッチハイクをしていたヒッピーの少女を拾います。

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彼女の行き先はスパーン牧場(Spahn Ranch)で、以前は西部劇の撮影に使われていたことから、クリスにとっても知らない場所ではありません。しかし行ってみると様子がだいぶ変わっていて、何人もの若者が住み着き、ヒッピーコミューンが形成されています。クリスの違和感は、昔なじみの牧場オーナー、ジョージ・スパーンに挨拶しようして阻まれたことで、さらに高まります。

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結局、視力を失ったジョージと会うことはできたのですが、彼はクリスのことを覚えていないばかりか、かなり偏屈になっていて、ヒッピーたちに飼い殺し状態にされている様子です。その後、帰ろうと車の傍らに行くと、前輪のタイヤにナイフが刺さっています。この嫌がらせでクリスの怒りが爆発して一悶着あるのですが、このコミューンこそマンソン・ファミリーで、映画の終盤でもう一悶着起こることになります。

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その頃、リックはTVドラマ「対決ランサー牧場」の撮影現場。ヒッピー風の付け髭で演じるようにいわれて内心くさりながらも、渾身の演技を見せ、監督とミラベラ・ランサー役の子役トゥルディから絶賛されています。心機一転、イタリアで一勝負してみるかと思い始めるリック。そしてクリスを伴ってイタリアでの撮影に向かい、帰国するのが1969年8月9日。ハリウッドの自宅で歴史的な日を迎えることになります。

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全編を通してレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの友情が前面に出ていますので、この2人の丁々発止を観にいく映画だと思います。マーゴット・ロビー(Margot Robbie)演じるシャロン・テートも映画館の場面などとてもチャーミングですが、物語的には準主役級の扱いですし、マンソンファミリーのリネット・スキーキー・フロムを演じたダコタ・ファニング(Dakota Fanning)など特に目立った演技をするわけではありません。こういう役者の無駄遣いができるのもタランティーノならでは、ということなのでしょう。

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無駄遣いといえば、何度も映し出されるハイウェーや街並みの作り込みも、さすがタランティーノというしかありません。行き交うヴィンテージカーを揃えるだけでも大変だと思いますが、その背景となるビルボードや建物すべてで60年代を再現しています。たった数秒のシーンのために、CGを使わず作ってしまうのですから大したものです。

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その他の出演者としては、ジョージ・スパーン役で「ネブラスカ」「ヘイトフル・エイト 」のブルース・ダーン(Bruce Dern)、マービン・シュワルツ役で「Dearダニー」のアル・パチーノ(Al Pacino)といった大御所が登場する他、シャロン・テートの元婚約者ジェイ・セブリング役で「イントゥ・ザ・ワイルド」「ウッドストックがやってくる!」「ある愛へと続く旅」のエミール・ハーシュ(Emile Hirsch)も出ています。割と目立っていたヒッピー娘プシーキャットを演じたのはマーガレット・クアリー(Margaret Qualley)で、数年前にスパイク・ジョーンズが撮ったKENZOのフレグランスのCM(→Youtube)で注目を集めた人。

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そしてエンドロールに挟み込まれるのは、ディカプリオ演じるリック・ダルトンによるレッド・アップルのコマーシャル。タランティーノ映画でお馴染みのタバコですが、その撮影現場の監督としてタランティーノが出てきます。ディカプリオは前作「ヘイトフル・エイト」と前々作「ジャンゴ」、ブラッド・ピットはその前の「イングロリアス・バスターズ」に出演して最近のヒット作に貢献していますので、もしかするとこれがタランティーノの集大成となるのかも知れません。

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公式サイト
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドOnce Upon a Time in Hollywood

[仕入れ担当]

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