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2019年11月25日 (月)

映画「アイリッシュマン(The Irishman)」

irishman マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)が監督を務め、ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)、アル・パチーノ(Al Pacino)、ジョー・ペシ(Joe Pesci)、ハーベイ・カイテル(Harvey Keitel)といった熟練の俳優たちが出演する豪華な作品です。テーマは全米トラック運転組合(IBT: International Brotherhood of Teamsters: )のリーダーだったジミー・ホッファ(Jimmy Hoffa)の失踪事件で、彼の盟友だったフランク・シーラン(Frank Sheeran)の語りを通じて事件の真相が明かされていきます。

ジミー・ホッファという名前に馴染みのある日本人はあまりいないと思いますが(現在は米国でも知られていないことが映画の中で描かれます)、1960年代には組合員150万人を擁する米国最大の労働組合を牛耳る男として、圧倒的な影響力と知名度をもつ人物だったそうです。イタリア系ではないようですが、演じたのは、最近も「Dearダニー」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で活躍しているアル・パチーノ。

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この物語のもう一人の重要人物が、ジョー・ペシ演じるラッセル・バッファリーノ(Russell Bufalino)。シシリア生まれで、ペンシルベニア州の北部、N.Y.に近いエリアを根城とするマフィアだった彼は、従兄弟のビル・バッファリーノがホッファの弁護士だった関係で接点をもち、ホッファの一存で運用されていたIBTの年金基金をマフィアの関係先であるラスベガスのカジノなどに融資させることで互いに甘い汁を吸っていたようです。

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そのバッファリーノの子飼いだったのがフランク・シーラン(Frank Sheeran)で、ロバート・デ・ニーロが演じています。彼は第二次大戦中はイタリアで闘い、除隊後はトラック運転手として食肉を運んでいたのですが、商品の横流しで荷主ともめた際にマフィアと繋がりを持ちます。その後、殺人の依頼をうまくこなしたことで信頼を勝ち得て、アイルランド系であるにも関わらず(マフィアはシシリア出身者のみ)ファミリーの一員のようになり、ホッファの後押しでIBTの支部長まで上り詰めた男です。

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つまり、バッファリーノとホッファの双方から信頼され、いずれともうまく付き合うことで、カネと地位を得ていったのがフランク・シーラン。

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ですから、常に冷静沈着な調整役としての役回りとなり、ロバート・デ・ニーロが演じているにもかかわらず、怒鳴ったりキレまくったりすることはありません。アル・パチーノ演じるホッファが熱くなるたびに、なだめすかして交渉の席につかせるという、デ・ニーロらしからぬキャラクターを演じることになります。

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本作は晩年のシーランが、老人介護施設で自らの半生を回想するかたちで展開します。始まりはチョイ悪のトラック運転手がマフィアの手先になるまでの話。要はカネのために人を殺したわけですが、その仕事で定評を得たシーランは、関係者からこう話しかけられます。I Heard You Paint Houses(壁を塗るそうだな)。これは映画の原作となった書籍のタイトルでもあるのですが、血塗られた仕事、つまり人殺しを請け負っているという意味です。

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そしてホッファと繋がり、彼とマフィアの間をうまく立ち回ることで地位を確立していいくわけですが、その半世紀あまりを、カストロ暗殺計画とキューバ危機、ジョン・F・ケネディの大統領就任と暗殺、その弟ロバート・ケネディ司法長官によるホッファの起訴といった時代背景、彼らの父ジョセフ・P・ケネディが禁酒法時代に築いたマフィアとの繋がりなどを絡めながら描いていくのがこの映画。3時間半におよぶ大作ながら、内容の濃さと俳優の巧さのおかげで退屈させません。スコセッシ監督にとってマフィア映画の集大成となるのではないでしょうか。

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シーランに関係するマフィアの大多数は、その筋では有名だったでしょうが、一般にはあまり知られていないわけで、スコセッシ監督は各々の登場人物の死に様をテロップで入れることでその人物像を簡潔に説明してくれます。この世界の人は最期を見れば人生のすべてがわかりますので、シンプルでうまいやり方だと思います。

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冒頭で記した以外のキャストとしては、シーランの娘ペギーを「ピアノ・レッスン」の娘役だったアンナ・パキン(Anna Paquin)、ホッファの義理の息子チャッキー・オブライエンを「ザ・マスター」の息子役以来、「ブラック・スキャンダル」「ブリッジ・オブ・スパイ」「疑惑のチャンピオン」「ペンタゴン・ペーパーズ」「バイス」と活躍しているジェシー・プレモンス(Jesse Plemons)、そしてトニー・プロことアンソニー・プロヴェンツァノを「裏切りのサーカス」「ロケットマン」のスティーヴン・グレアム(Stephen Graham)が演じています。

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公式サイト
アイリッシュマン facebook

[仕入れ担当]

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