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2020年1月20日 (月)

映画「ジョジョ・ラビット(Jojo Rabbit)」

JojoRabbit ナチスを題材にした映画は数多ありますが、これは出色の作品だと思います。監督は「マイティ・ソー バトルロイヤル」のタイカ・ワイティティ(Taika Waititi)。ニュージーランド出身で父親はマオリですが、母親がロシア系ユダヤ人だそうです。自身の複雑なバックグランドのおかげか、巨悪ナチスを撃ち、弱きユダヤ人を救うという単純な構図に陥ることなく、ヒトラーユーゲント(ナチスの青少年組織)での活躍を夢見るドイツ人少年の成長を通じて戦争の愚かしさをユーモラスに描いていきます。

映画の幕開けはナチスに熱狂するドイツ人たちの映像。BGMに使われているビートルズ"Komm, gib mir deine Hand"("I Want To Hold Your Hand"のドイツ語バージョン)の快活な曲調が、ヴェルサイユ体制打破ですべてが好転するというヒトラーの主張を盲信する大衆にしっくりかみ合います。

この映画、語り口も面白いのですが、使われている音楽も絶妙で、同時代のジャズナンバーや心象風景に重ねたトム・ウエィツ"I Don't Want to Grow Up"などを織り込みながら、エンディングはデヴィッド・ボウイ"Helden"("Heroes"のドイツ語バージョン)で締めくくります。ご存じのように"Heroes"はベルリンの壁を借景に作られた曲で、歌詞の内容を含めて余韻を残してくれるうまい選曲だと思います。

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時代は第二次世界大戦末期。主人公のジョジョはナチスに傾倒する10歳の少年で、空想上の友だちがアドルフ・ヒトラーというあたりが風変わりですが、そのヒトラーに励まされながら日々の困難を乗り越えています。

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愛国少年の一員としてヒトラーユーゲントのキャンプに参加し、そこで勇敢さを示すためにウサギを絞め殺してみろと指示されます。しかし気弱な彼にそんなことはできません。ウサギを地面おろして逃がそうとするジョジョ。仲間たちはそんな彼を笑い、“ジョジョ・ラビット”とあだ名を付けます。

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いたたまれなくなってその場から逃げ出したジョジョを空想上のヒトラーが励まします。そして投擲訓練をしていた仲間たちのところに駆け戻り、M24型柄付手榴弾を放るのですが、木の枝にぶつかって戻ってきた手榴弾が目の前で爆発してジョジョは大けがを負ってしまいます。

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命は助かったものの左頬に大きな傷跡が残ります。負傷した片脚のリハビリが終わるまで訓練にも参加できませんし、その後、兵士として動員されていく仲間たちを見送りながら街で後方支援することになります。愛国少年としての自尊心はボロボロです。

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そんなある日、自宅2階の壁の中に潜んでいるユダヤ人の少女を発見します。実はジョジョの母親ロージーは反ナチ運動(Free-Germany Movement)に参画していて、亡くなった娘(ジョジョの姉)インゲの友人だったエルサを匿っていたのです。

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ユダヤ人を見つけたら通報しなくてはいけませんが、通報すれば匿った母親ロージーも罪に問われます。黙っているしかないわけです。そうやってなし崩し的にエルサと交流していくうちに、ジョジョはさまざまなことを学んでいきます。彼の成長は、戦中の人々の気付きでもあり、エルサが言う“あなたはナチじゃないのよ、妙な制服を着て、仲間に加わりたいだけの10歳の子どもなの”というセリフは、ジョジョを諭すと同時に全体主義の本質を言い当てています。

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負傷が幸いして戦場に狩り出されなかったジョジョは、エルサとの対話を通じ、空想上の友だちであるヒトラーの存在を追いやっていきます。戦地で片目を失い、後方部門であるヒトラーユーゲント指導官に回されたクレツェンドルフ大尉も、市井の人々と過ごすうちにナチスの価値感から外れていきます。ジョジョと空想上のヒトラーの関係が、ジョジョとクレツェンドルフ大尉の関係に置き換わり、そこでまた一つ、ジョジョは学びを得ることになります。

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そのクレツェンドルフ大尉を演じたのが「スリー・ビルボード」「バイス」のサム・ロックウェル(Sam Rockwell)で、いつもながらの無頼な佇まいが良い感じです。そして空想上のヒトラーを演じたのが監督のタイカ・ワイティティ、同じく嫌われ役のディエルツ大尉を演じたのが「ファイティング・ファミリー」監督のスティーブン・マーチャント(Stephen Merchant)。この3人の個性のぶつかり合いが映画に膨らみをもたせます。

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母親ロージーを演じたのは最近も「マリッジ・ストーリー」で素晴らしい演技を見せていたスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)。芸達者のうえに声もいいですね。彼女のキュートなファッションも見どころの一つなのですが、監督のインタビューによると、敗戦を覚悟したドイツ人たちは毎日ドレスアップしていて、それを反映させたそうです。

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もちろん最大の見どころはジョジョ役のローマン・グリフィン・デイビス(Roman Griffin Davis)の好演。エルサを演じたトーマシン・マッケンジー(Thomasin McKenzie)、ヒトラーユーゲント指導員のミス・ラームを演じたレベル・ウィルソン(Rebel Wilson)も印象に残りました。

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脇役の子役ながら大きな存在感を示すのが、ジョジョの親友ヨーキーを演じていたアーチー・イェーツ(Archie Yates)。太めでトロそうな外見とは裏腹に、鋭い指摘をしたり、冷静な視点でジョジョを力づけたりします。動員から戻ったヨーキーが言う“世界中が敵になってしまい、残る味方は日本人だけだけど、まったくアーリア人には見えない”というセリフは、ナチスの優生政策を支えたアーリアン学説のご都合主義や、当時、日本人を“名誉アーリア人”と位置づけていたばかばかしさを嗤っているのでしょう。

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公式サイト
ジョジョ・ラビットJojo Rabbit

[仕入れ担当]

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