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2020年1月30日 (木)

映画「テリー・ギリアムのドン・キホーテ(The Man Who Killed Don Quixote)」

DonQuixote 構想から30年かけて公開に漕ぎ着けたという執念の一作です。どうやらドンキホーテものの映画は製作中断の憂き目に遭いやすいらしく、テリー・ギリアム(Terry Gilliam)監督もオーソン・ウェルズの二の舞になると言われていたようです。

当初はジャン・ロシュフォールとジョニー・デップの組み合わせで企画されていた本作、ジョン・ハートやユアン・マクレガーなどの起用も噂されながら、結局、ジョナサン・プライス(Jonathan Pryce)とアダム・ドライバー(Adam Driver)の組み合わせで着地できたという次第。エンドクレジットで既に鬼籍に入ったジャン・ロシュフォールとジョン・ハートに捧げられています。

それだけ曰く付きの作品ですから、映画界としても待ち焦がれていたようで、一昨年のカンヌ映画祭でクロージング・フィルムとして初上映されました。しかしながらその後も呪われていて、権利関係の問題で公開が遅れ、米国では2019年3月、日本では2020年になってようやく観られるようになりました。

内容はといえば、良い意味でハチャメチャです。ただ思ったほど奇抜ではありません。現実世界と妄想や悪夢が混ざり合いながら、物語の破綻もなく、きれいに着地していきます。安心して映画の世界に身を委ねてしまえば最後まで気持ちよく連れて行ってもらえる一作です。

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アダム・ドライバー演じるCMデイレクターのトビーは、スペインで中国企業のCMを撮影しているのですが、思い通りにいかなくて半ば捨て鉢になっています。クライアントとの懇親会でしょうか。ステラン・スカルスガルド(Stellan Skarsgård)演じるボスを交えた食事の席で、物売りからDVDを買います。それは学生時代の彼が卒業制作として撮った映画で、うさ晴らしにその映画のロケ現場となった村に出かけてみます。

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人里離れた村で、その昔、映画作りに協力してくれた村人たちに会います。トビーとしては単なる卒業制作でしたが、その映画が村人たちに与えた影響は思いのほか大きく、プリンセス役だったアンジェリカはスターを夢見て都会で苦界に落ち、ドン・キホーテ役だった靴職人ハビエルは、いまだに自分をドン・キホーテだと思い込んで鎧を着て暮らしています。

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ご存じのように、小説のドン・キホーテはラ・マンチャの下級貴族(イダルゴ)が騎士道物語を読み過ぎて自分を騎士だと思い込んでしまう話。ハビエルは自分をドン・キホーテだと思い込んでいるわけですから、その時点で二重の思い込みになっていて、彼らが暮らす村の名前がLos Sueños(夢)というあたりを含めて(実際のロケ地はナバラ州ガリピエンソだそうですが)虚実ないまぜな世界がどんどん拡大していきます。

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ハビエルはトビーをサンチョと呼び、愛馬ロシナンテを駆って旅に出ます。巻き込まれたかたちになったトビーと繰り広げるこの冒険譚、ハビエルをジョナサン・プライスが演じているのですが、芝居がかった語りがそれらしくて非常に良い感じです。彼は「恋の選択」ではロンダの闘牛場に行っていましたし、「エビータ」ではファン・ペロン、「2人のローマ教皇」ではホルヘを演じていて、なにかとスペイン語圏に縁があるようですね。

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この映画のヒロインは二人。一人はボスの妻ジャッキで、「9人の翻訳家」のオルガ・キュリレンコ(Olga Kurylenko)が演じています。もう一人が卒業制作映画のプリンセス、現在は娼婦になったアンジェリカで、演じているのはポルトガル人女優のジョアナ・リベイロ(Joana Ribeiro)。トビーはどちらともややこしい関係にあって、トビーとジャッキとボス、トビーとアンジェリカとウォッカ王アレクセイの二つの三角関係が物語のハチャメチャさを加速させます。

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アレクセイはロシア人という設定ですが、演じているジョルディ・モリャ(Jordi Mollà)は「ハモンハモン」でハビエル・バルデムの恋敵を演じていたスペイン人です。その他にも、最近「幸福なラザロ」に出ていたセルジ・ロペス(Sergi López)、アルモドバル作品の常連女優ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)といったスペインのベテランが脇を固めます。

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もちろん、風光明媚な景色も見どころのひとつでしょう。トレド近郊の古城(Castillo de OrejaやAlmonacid de Toledo)、ナヴァラの町(San Martín de Unx)や荒野(Las Bardenas)、サラゴサの修道院(Monasterio de Piedra)、カナリア諸島フェルテベントウーラ島といったスペイン各地の他、ポルトガル・トマールの修道院(Convento de Cristo em Tomar)などでもロケが行われたそうです。

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公式サイト
テリー・ギリアムのドン・キホーテThe Man Who Killed Don Quixote

[仕入れ担当]

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