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2020年3月 9日 (月)

映画「黒い司法 0%からの奇跡(Just Mercy)」

justmercy 昭和のTVドラマのような邦題のせいか、あまり目立っていない印象ですが、主演が「クリード」のマイケル・B・ジョーダン(Michael B. Jordan)、助演が「ジャンゴ」のジェイミー・フォックス(Jamie Foxx)、監督が「ショート・ターム」「ガラスの城の約束」のデスティン・ダニエル・クレットン(Destin Daniel Cretton)という、映画好きなら注目すべき作品です。

米国の弁護士ブライアン・スティーブンソン(Bryan Stevenson)の初期の活躍にフォーカスした実話ベースの物語。本人が2014年に発表したウォルター・マクミリアン(Walter McMillian)死刑囚に関する回想録、Just Mercy: A Story of Justice and Redemptionをベースに、裁判制度の歪みを正そうと奮闘する若い弁護士の姿を描いていきます。

スティーブンソンが活躍するアラバマ州は、ハーパー・リー(Harper Lee)の同名小説をグレゴリー・ペック主演で映画化した「アラバマ物語(To Kill a Mockingbird)」の舞台で、モンロー郡博物館(Monroe County Museum)には「アラバマ物語」に関連する展示もあるそうです。本作「黒い司法」も同じく黒人被告を弁護する物語であり、劇中で何度も「アラバマ物語」に言及されます。

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ハーバード・ロースクール出身のエリート弁護士であるスティーブンソンが、なぜ片田舎のアラバマ州で仕事をしようと思ったか。学生時代にジョージア州を本拠とするNPOの Southern Center for Human Rights で働き、同年代の黒人死刑囚と出会ったことがきっかけになったといいます。黒人受刑者の多くが十分な法的支援を受けることなく収監されている現実を変えるため、身の危険を心配する親の反対を押し切り、アラバマ州モンゴメリに Equal Justice Initiative (EJI)の事務所を開設します。

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その立ち上げの手助けをしたのが、現在も EJI の Operations Director として働いているエバ・アンスリー(Eva Ansley)という女性。映画は、親を説得してアラバマ州に乗り込んできたスティーブンソンが、入居予定だった事務所から契約を拒否され、アンスリー家に居候する場面から始まります。

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その時点で黒人受刑者の支援が容易でないことがわかりますが、ホルマン刑務所(Holman Prison)に出向いたスティーブンソンは、面会手続きで白人の刑務官から嫌がらせを受けます。弁護士の権限があっても、黒人であるが故に、下級官吏の横暴に従わざるを得ないのです。

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これがたかだか30年前、1987年の話というのですから驚きます。また、彼が面会した受刑者たちが、公平な法の裁きではなく、民意を汲んで処罰されていることにも驚かされます。つまり黒人が悪いということにすれば、白人の住民たちが安心し、町に平和が戻ってくるということ。マクミリアン死刑囚の例のように、さまざまな証拠を無視して犯人だと決めつけ、事件が解決したことにしてしまうのです。

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そういった社会の仕組みを体現しているのがトム・テイト(Tom Tate)という保安官で、この冤罪事件を経てからも、7回再選され30年にわたって公職に就いたといいます。選挙で選ばれた保安官が犯人を捕まえ、民間から選ばれた陪審員が裁判を行うわけですから、どうしても住民の主流派に寄り添うことになり、当地では白人が逮捕し、白人が裁く仕組みが完璧に出来上がっていました。その結果、白人女性と不倫したことでコミュニティから疎まれていたマクミリアンが、解決が難しい凶悪犯罪の罪を着せられることになったのです。

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スティーブンソン弁護士がそういった背景を知り、証拠を洗い直して再審請求しますが、当然のように却下されます。関係者の白人たちが結束し、地域の和を乱すなという強い意志が働くのです。そこでスティーブンソンは上級審に抗告すると同時に、TV番組に出演して広く世論に訴える手段に出ます。これが功を奏したのか、マクミリアンの濡れ衣が晴れるのですが、彼以外にも同じ境遇の死刑囚がいるわけで、今もスティーブンソンはEJIを率いて、貧しい人や未成年、マイノリティの受刑者たちを支援しています。

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この映画で描かれるスティーブンソンは終始一貫して性善説の人で、それによって多くの人たちの協力を得られるようになります。演じるマイケル・B・ジョーダンの誠実な雰囲気と相まって、善人すぎるほど善人のイメージなのですが、実際のスティーブンソン弁護士も、TEDの講演を聴く限り、根っからの正義の人のようです。ここで語られる祖母のエピソードと、アンスリー夫妻がビールを飲む傍らで水を飲んでいる映画のシーンが重なります。

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死刑囚のマクミリアン(通称:ジョニー・D)を演じたのはジェイミー・フォックス。素晴らしい演技でした。全米映画俳優組合賞の助演男優部門にノミネートされていましたが(受賞者はブラピ)、もう少し評価されていも良いのではないかと思います。こういう体制批判の映画で、黒人俳優が脚光を浴びない現状にも諸々の問題がありそうです。

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エバ・アンスリーを演じたのは「ルーム」のブリー・ラーソン(Brie Larson)。彼女が注目を集めることになった「ショート・ターム」に続いて「ガラスの城の約束」でもデスティン・ダニエル・クレットン監督と組んでいますので、同監督の近作すべてに出演していることになります。その他、検事のトミー・チャップマン役で「ライフ・オブ・パイ」「マネー・ショート」のレイフ・スポール(Rafe Spall)、証人のラルフ・マイヤーズ役でティム・ブレイク・ネルソン(Tim Blake Nelson)が出ています。

公式サイト
黒い司法 0%からの奇跡Just Mercy

[仕入れ担当]

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