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2020年3月30日 (月)

映画「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ(El Pepe, Una Vida Suprema)」

ElPepe ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ(José Mujica)の素顔を捉えたドキュメンタリー作品です。ホセ・ムヒカは、大統領職にありながら、自ら水色のフォルクスワーゲンを運転し、自宅で農業を営む清貧の人として知られ、今も国内では人気抜群。2012年にブラジルで開催された国連持続可能な開発会議(リオ+20)で、消費至上主義を批判する熱いスピーチ(Youtube)を行い、世界的に有名になりました。大統領退任後の2016年に来日しています。

監督は前世紀(全盛期?)に「パパは、出張中!」「アンダーグラウンド」の2作でパルム・ドールに輝いたエミール・クストリッツァ(Emir Kusturica)。最近はオムニバス映画「セブン・デイズ・イン・ハバナ」のパブロ・トラペロ監督作品や、自身が監督も務めた「オン・ザ・ミルキー・ロード」など、俳優として登場する機会の方が多いような気がしますが、本作でも自身がインタビューアとして登場します。

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ほぼ手持ちカメラで撮られたホームムービーのような映像は、良く言えば飾らない感じ、悪く言えば雑な感じで、何度か出てくるマテ茶を飲みながら会話するシーンなど、映像が揺れてちょっと気持ち悪くなります。それが監督の意図したものか判りませんが、クストリッツァと元大統領の親しげな様子はそれなりに伝わってきました。

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社会主義者で元ゲリラであるホセ・ムヒカ。彼が所属していたトゥパマロス(TupamarosまたはMLN-T)は、1960年代に銀行強盗などで得た資金を貧困層に配って頭角を現し、その後、身代金目当ての誘拐や殺人などさまざまなテロを行っていた武装組織だそうです。1973年に軍事政権によって主要メンバー9人を含む2000人が逮捕されて活動停止、1985年の釈放後は左派の連合政党である拡大戦線(Frente Amplio)に参画して政治活動を行ったとのこと。

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その拡大戦線から初めて大統領に選出されたのが映画にも少し出てくるタバレ・バスケス(Tabaré Vázquez)で、続いて2010年3月から2015年2月までホセ・ムヒカが大統領となり、2015年3月からはバスケスが再登板。現在は、2019年11月の決戦投票で拡大戦線のダニエル・マルティネス(Daniel Martinez)を破った中道右派・国民党のルイス・ラカジェポー(Luis Lacalle Pou)が大統領を務めています。ちなみにラカジェポーの父親は、軍事政権後の1990年に国民党から大統領に就任したルイス・アルベルト・ラカージェです。

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ホセ・ムヒカと一緒に逮捕され、軍事政権下の人質になっていたメンバーに含まれていたのが、この映画に何度も登場するエレウテリオ・フェルナンデス=ウイドブロ(Eleuterio Fernández Huidobro)とマウリシオ・ロセンコフ(Mauricio Rosencof)で、作家になったロセンコフは現在も存命、86歳だそうです。

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そしてもう一人、最も重要な人物が、ホセ・ムヒカの妻であるルシア・トポランスキー(Lucía Topolansky)。1944年生まれの彼女は、学生時代から政治活動に身を投じ、トゥパマロスで文書偽造を行っていたときにホセ・ムヒカと出会ったといいます。その後、二人とも収監され、1985年に釈放されて再会、結婚したということで、子どもはいません。二人で手に入れた農地を耕しながら政治活動を行い、いまも現役の上院議員です。一時はバスケス政権の副大統領を務めましたが、これは不祥事で辞任した前任者のイメージ払拭を狙った指名のようです。

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こういった登場人物たちが思い出を語り、証言を記録映像で補強しながら、ウルグアイ近代史におけるホセ・ムヒカの位置づけと、彼独特の個性を映し出していく映画です。良くも悪くもスタンドプレイが目立つ、毀誉褒貶の激しい人物ですので、当然、批判的な人物もいて、そういった面を含めて見せていくところはクストリッツァらしさでしょう。ホセ・ムヒカに魅了されていても、手放しに賞賛しているわけではないという点をきちんと示します。BGMに使われているタンゴの調べも映像にマッチしています。

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個人的には、ルシア・トポランスキーの若いときの顔が印象的でした。フラワープリントのワンピースを着て、何かにとらわれてしまったような目つきで写真に収まる彼女の不思議な存在感。この儚くも危険な雰囲気が、ホセ・ムヒカを惹きつけたのかも知れません。

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またリズミカルで歯切れの良いホセ・ムヒカのメッセージも響きました。中でも"政治に必要なのは大きな心と小さな財布を持つ人だ(En la política hay que buscar gente con corazón grande y bolsillos chicos)"は、腐敗しがちな南米だけでなく、広く世界に伝えるべき言葉でしょう。

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公式サイト
世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

[仕入れ担当]

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