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2020年7月20日 (月)

映画「WAVES ウェイブス」

waves ここ2週続けて「ワイルド・ローズ」「カセットテープ・ダイアリーズ」と音楽をテーマにした作品をご紹介してきましたが、この「WAVES ウェイブス」も音楽が重要な役割を果たす作品です。

監督はこれが長編3作目というトレイ・エドワード・シュルツ(Trey Edward Shults)。日本初公開作である前作「イット・カムズ・アット・ナイト」はホラー作品と紹介されていましたので観ませんでしたが、ホラーやサスペンス専門の監督ではないようで、本作は典型的な青春ドラマになっています。

現在31歳という若手監督で、スター俳優が出演しているわけでもないのに、なぜこの作品が注目されているかといえば、理由の一つは冒頭で記した音楽。楽曲をベースに脚本を書いたそうで、人気アーティストたちの楽曲が全編にわたって流れ、各シーンで登場人物たちの心象風景を伝えます。登場人物が歌わないミュージカルといえば良いのでしょうか。

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もう一つの理由は映像で、陽光を捉えた美しい映像と、カメラを旋回させたりアスペクト比を変えたりといった凝った映像で高揚感や焦燥感、愛しさや切なさを巧みに表現していきます。

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フロリダ州の郊外で暮らす4人家族、ウィリアムズ家を中心に描かれるこの映画。兄タイラー(通称:タイ)を軸にした前半と、妹エミリー(通称:エム)を軸にした後半の二部構成になっていて、憎しみと愛をテーマに物語が展開します。

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前半タイラーの物語は、彼とガールフレンドのアレクシスの関係。レスリング部の代表選手であるタイラーは、元選手だった父親ロナルドの期待に応え、大学の奨学金を得ようと練習に励む一方、アレクシスとの恋愛も順調で、恵まれた高校生活を送っていました。しかし、肩の故障で選手生命が危ぶまれ、アレクシスの妊娠で彼女との関係にも暗雲がたちこめます。もちろん家族との関係もギクシャクします。

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高校生を主人公にした映画の定番ともいえる危機を描いていくわけで、ある意味、ありきたりな設定と展開ですが、これを音楽と映像、俳優たちの個性で魅力的な映画に仕上げてしまう監督の技量は一見の価値ありです。単にストーリーを追うのではなく、映画の世界にどっぷり浸って楽しむ映画だと思います。

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物語の中盤、アレクシスとエミリーがパーティ会場の化粧室で会話し、エイミー・ワインハウスの"Love is a Losing Game"が流れます。その直後に転機となる事件が起こり、タイラーのパートからエミリーのパートに切り替わるのですが、このシーンは見どころの一つでしょう。

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後半、失意の日々を過ごすエミリーは、ルークという同級生と出会って癒やされていきます。タイラーとエミリーは黒人、アレクシスはヒスパニックですが、ルークは白人。とはいえ、とりたてて恵まれているわけではなく、アル中で暴力的な父親のせいで家庭が崩壊し、離れて暮らす父親に対して憎しみを交えた複雑な感情を抱いています。

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エミリーの家族も、タイラーが起こした事件で傷つき、それぞれが自責の念に苛まれて暮らしています。父親ロナルドは仕事の不調もあっても自信を喪失していますし、母親キャサリンは継母である難しさを痛感しています。その救いになるのがエミリーで、ウィリアムズ家を再び結束させ、ルークを憎しみから抜け出さるのですが、憤怒を積み上げて崩壊に至るタイラーと、愛によって希望を与えて和解に導くエミリーを、潮の満ち引きのように描いた作品といえるかも知れません。

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タイラー役を前作にも出演したというケルヴィン・ハリソン・Jr(Kelvin Harrison Jr)が演じた他、エミリー役のテイラー・ラッセル(Taylor Russell)、父親ロナルド役のスターリング・K・ブラウン(Sterling K. Brown)、母親キャサリン役のレネイ・エリース・ゴールズベリイ(Renée Elise Goldsberry)、恋人アレクシス役のアレクサ・デミー(Alexa Demie)などTVで活躍する俳優たちがキャスティングされています。

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有名どころではルーク役を「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「レディ・バード」のルーカス・ヘッジズ(Lucas Hedges)が演じているのですが、彼とアレクサ・デミーはジョナ・ヒルの監督デビュー作「Mid90s ミッドナインティーズ」でも共演しているようです。

公式サイト
ウェイブスWAVES

[仕入れ担当]

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