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2020年11月 9日 (月)

映画「おもかげ(Madre)」

Madre邦題だけみるとシャーロット・ランプリングの映画と勘違いしそうですが、フレンチバスク(正確にはランド県)を舞台にしたスペイン映画です。監督は2017年に観た「ゴッド・セイブ・アス」のロドリゴ・ソロゴイェン(Rodrigo Sorogoyen)。その次に撮った「El reino」が昨年のゴヤ賞で監督賞を含む7部門に輝きましたが、日本公開されませんでしたので、日本で上映される作品としては2本目となります。

本作には前段があり、2年前に同じタイトルで撮った短編「Madre」が米国アカデミー賞にノミネートされ、それをそのまま導入部に使って作られています。つまり評価が高かった短編映画の拡張版で、その短編というのが、主人公のエレナがマドリードの自宅に母親と二人でいるとき、離婚した夫ラモンとバスク旅行に出かけていた一人息子のイヴァンから電話がかかってくるというもの。一人で海辺にいる、父親はどこに行ったかわからないと不安がる6歳のイヴァンをなだめながら、電話のこちら側でパニックに陥っていくエレナをカメラが捉えます。

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マルタ・ニエト(Marta Nieto)の熱演が光る、ほぼ電話に語りかけるだけの一人芝居です。緊迫感が最高潮に達したところで電話が切れてしまい、後の展開は観客の想像に任せることになりますが、本作「おもかげ」はその10年後という設定の物語。そこでわかることは、エレナが一人息子を失ったということのみで、イヴァンがどうなったか、ラモンが何をしていたかは語られません。

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エレナはヴュー=ブコー=レ=バン(Vieux-Boucau-les-Bains)の海辺にある飲食店の雇われ店長をしています。イヴァンが電話でイルンやアンダイエといった地名を出していましたので、どうやら息子を探しに来てそのまま居着いたようです。ヨセバというスペイン人の恋人がいて、このバケーションシーズンが終わったら店を辞め、ドノスティア(=サン・セバスチャン)の近くにある彼の家で一緒に暮らすことになっています。

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こう書くと、息子を失った苦悩から立ち直ったようですが、傷は癒えていないようで、ある日、ビーチですれ違った少年に目が釘付けになります。なぜならその少年に、彼女の記憶にあるイヴァンの面影があったから。心を乱されたエレナは、思わず彼を尾行して家を確かめてしまいます。

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それがパリから夏の別荘に来ていた16歳のジャン。その彼が店に来て、尾行に気付いていたと言い、エレナのことを知ろうとします。最初は軽くいなしていたエレナですが、やはり彼のことが気になって仕方ありません。もともと精神的に不安定だった彼女の内面でジャンの存在がどんどん膨らんでいきます。

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39歳の離婚経験ある女性と高校生男子が二人でいれば周囲は訝しがります。ジャンの元カノであるカロリーヌは、女の勘なのか、初対面からエレナに対抗心を燃やし、早い段階でエレナの気持ちに気付いたヨセバは引っ越しの時期を早めようとします。もちろんジャンの家族、父親のグレゴリー、母親のレア、兄のベノワは最初から微妙な対応です。

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そうやって周囲の人々を巻き込みながら揺れ動いていくエレナですが、実はポイントになるのが元夫のラモンというところが、この映画の面白さかも知れません。彼が登場するのは、ピレネーのリゾートホテルのカフェでエレナと向かい合って話すシーンだけなのですが、この長回しの1ショットが二人の演技力を含めて見どころの一つになっていて、それが終盤で効いてきます。

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主役のマルタ・ニエトは1982年生まれの中堅女優。上記の短編「Madre」で注目され、2019年のベネチアでは本作でオリゾンティ部門の主演女優賞を獲得しています。

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恋人のヨセバ役に「ペトラは静かに対峙する」のアレックス・ブレンデミュール(Alex Brendemühl)、ジャンの父親グレゴリー役に「17歳」のフレデリック・ピエロ(Frédéric Pierrot)、母親レア役に「クリスマス・ストーリー」「エル ELLE」のアンヌ・コンシニ(Anne Consigny)と実力派を揃え、ジャン役の新人ジュール・ポリエ(Jules Porier)の初々しい演技を支えています。

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全般的に端正な映像が特長の作品で、文字が敷き詰められたようなタイトル・シーケンスから余韻を楽しませるようなシンプルなエンドロールまで洒落ています。前々作の「ゴッド・セイブ・アス」は今ひとつでしたが、本作は監督と主演女優のこれからに期待させてくれる一本でした。

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公式サイト
おもかげ

[仕入れ担当]

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