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2021年2月 1日 (月)

映画「どん底作家の人生に幸あれ!(The Personal History of David Copperfield)」

David Copperfield ディケンズの自伝的小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化作品です。

ディケンズといえば日本でいえば漱石のような国民的作家ですから、誰もが知っている名作をどう料理するかがポイントになるわけですが、本作では主人公のデイヴィッドをインド系のデブ・パテル(Dev Patel)、弁護士のウィックフィールド氏を中華系のベネディクト・ウォン(Benedict Wong)、その娘アグネスをアフリカ系のロザリンド・エリーザー(Rosalind Eleazar)が演じると言った具合に人種を超越した配役にしたところが斬新です。カラーブラインド・キャスティングというそうですが、ヴィクトリア時代を背景にした物語と特に違和感なく馴染んでいるあたりがこの映画の面白さの一つです。

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他にも、デイヴィッドの母クララと、デイヴィッドが一目惚れするスペンサー家の娘ドーラという二人の世間知らずのお嬢さんをモーフィッド・クラーク(Morfydd Clark)が一人二役で演じていて、全体的にキャスティングの妙を感じさせる作品だと思います。

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原作小説は陰鬱なイメージですが、映画はデブ・パテルの個性もあってとても明るい雰囲気で展開します。監督を務めたのはアーマンド・イアヌッチ(Armando Iannucci)で、前作「スターリンの葬送狂騒曲」と同じく、コメディなのかシリアスなドラマなのか判然とさせないところがこの監督の持ち味なのでしょう。邦題はそういった感覚を汲み取ろうと悪ノリしてスベりまくっていますが、原題は"デイヴィッド・コパフィールドの個人史"という感じで、真面目さがかえって可笑しいタイトルになっています。

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映画のスタートはデイヴィッド・コパフィールドが誕生し、女の子が生まれると信じていた大伯母ベッツィが落胆する場面から。その後、しばらくの間は母クララと乳母ペゴティーの愛情に包まれて育ちますが、クララがマードストンと再婚したことで一転して苦難の道を歩むことになります。

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ロンドンの瓶詰め工場の下働きに出され、経済的に奈落に突き落とされたデイヴィッドの下宿先がミスター・ミコーバの家。ディケンズの実父ジョンをモデルにしたといわれるミコーバは程なく債務者監獄に収監されることになりますが、これまた演じているピーター・カパルディ(Peter Capaldi)のおかげか終始一貫して底抜けに陽気です。

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彼や凧揚げ好きなミスター・ディックを頻繁に登場させることで、人生の浮き沈みを描いていくこの物語の暗い部分を薄めているのでしょう。

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ミコーバの一家と別れたデイヴィッドが辿り付くのがドーヴァーにあるベッツィの邸宅。裕福な大伯母の元でまた豊かな生活に戻り、書くことについてミスター・ディックと意気投合したり、カンタベリーの学校に通ったり、まともな人生を送り始めます。

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このベッツィ・トロットウッドを演じているのがティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)、ミスター・ディックを演じているのがヒュー・ローリー(Hugh Laurie)という豪華なキャスティングも見どころの一つです。

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ロンドン、ドーヴァー、カンタベリーの他に重要な舞台となるのが、乳母ペゴティーの実家があるヤーマス(Great Yarmouth)です。デイヴィッドは幼い頃、ニシン漁で知られるこの港で過ごしたことがあり、人生の幸せな側の思い出として大切にしています。

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成長した後、学友のスティアフォースと共にペゴティー家を再訪したことである種の悲劇を巻き起こしてしまうのですが、その一端となるミスター・ペゴティーの姪エミリーは、この物語の軸である階級社会を象徴する人物の一人です。

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そしてもう一人の階級社会の象徴がユーライア・ヒープ。鬱屈した精神で一発逆転、下克上を狙う姑息な人物ですが、演じているベン・ウィショー(Ben Whishaw)の醸し出す雰囲気がいかにも粘着質で不気味です。ダレン・ボイド(Darren Boyd)が演じた継父エドワード・マードストン、グェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)が演じたジェーンの意地悪なマードストン姉弟と共にこの物語に緩急をつける悪役を担います。

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こういった実力派の役者を揃え、原作を適度にアレンジした物語が小気味よく展開します。国民的な人気を誇る大河小説を現代的な軽い味わいに仕上げたことで、誰もが楽しめる作品になっていると思います。小説を読んだ方にも読んでない方にもお勧めです。

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公式サイト
どん底作家の人生に幸あれ!The Personal History of David Copperfield

[仕入れ担当]

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