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2021年8月30日 (月)

映画「ショック・ドゥ・フューチャー(Le choc du futur)」

LeChocDuFutur もう2年もパリに行けていないのですね。前回は市庁舎前のスクリーンにシラク元大統領の功績が映し出されていて、安藤忠雄のブルス・ド・ コメルスもSANAAのサマリテーヌも相変わらず工事中で、開業後数ヶ月たっているのにシャンゼリゼのギャラリーラファイエットにもBHV裏のイータリーにも中国人観光客がたくさんいて・・・。もう遠い昔のことのことのようです。

実際にパリに行くと街の機能やサービスの質に文句タラタラなのですが、あの独特な雰囲気にはどこかクセになるようなところがあって、しばらく行かないとちょっと寂しくなります。東京五輪の閉会式でいちばん良かったのが次回パリの紹介ビデオだったように、打ち出しが巧いというか、煽り方に長けているというか、雰囲気だけで気持ちを引きつけるのがとても上手です。

この「ショック・ドゥ・フューチャー」は、そんなパリっぽい雰囲気をありったけ詰め込んだような映画です。ストーリーも粗だらけで、決して作りの良さや質の高さで評価できるような作品ではありませんが、気分だけはしっかり盛り上げてくれます。

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時代は1978年。主人公のアナは、参加していたバンドが解散し、今は友人から部屋ごと借りたシンセサイザーで作曲に取り組んでいる若い女性。どうやらCMの曲作りを依頼されているようですが、もともと気乗りしないのか、担当者との相性が悪いのか、締め切りが迫っているのにいまだ完成していません。

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それに追い打ちをかけるようにシンセサイザーが故障します。慌てて修理を依頼するのですが、たまたまその修理人が持ってきたRoland CR-78に魅了されます。機種名のCRはコンピュリズムのことで、要するに打楽器の音やビートを創り出すドラムマシンです。

これがあれば自分の曲作りができる、もうCM音楽などに煩わされなくて済むと思い、その機械を借りて曲作りを始めます。なぜならその晩パーティがあり、大物プロデューサーのドミニク・ジローが来る予定だから。彼から評価されれば現状打破できるというわけです。

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もちろんそのまま思い通りに運ぶような話ではありませんが、CMの歌を依頼されていた歌手のクララが訪ねてくるなど、偶然の出会いに助けられ、新しい音楽が創り上げられていきます。そんなアナが朝ベッドで目覚めてからパーティが終わる深夜までの1日を描いていく映画です。

物語のほとんどが、壁一杯にシンセサイザーが据え付けられたアパートの1室で繰り広げられます。登場人物も少なくて、主人公のアナを演じたアルマ・ホドロフスキー(Alma Jodorowsky)、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の孫娘なのですが、彼女の一人芝居といった趣です。彼女の魅力がこの映画の価値の半分ぐらい占めていそうです。

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残り半分は作り込みの細かさ。器材のリアリティもそうですし、この時代の音楽シーンを象徴するような選曲もそうでしょう。

アナには、かなり年長のレコードコレクターの友人がいて、パーティの選曲をする関係で日中にレコードを持って訪ねてきます。その彼がアナに聞かせるレコードが非常にマニアックで、最初がスロッビング・グリッスル(Throbbing Gristle)、次がベルギーのアクサク・マブール(Aksak Maboul)、そして米国で話題になっているという触れ込みのスーサイド(Suicide)をかけます。

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対するアナは、はじめの二つには強く惹かれたようですが、スーサイドについてはロックっぽいと全否定です。彼女の主張は、これからは電子機器を使った新しい音と新しい演奏形態が主流になる、1980年代になればロックはジャズのようにブルジョワがソファで聴く古くさいジャンルになるというもの。この映画の原題はアルビン・トフラー「未来の衝撃」の仏語版タイトルと同じですが、テクノロジーによって新しい時代が始まるという期待感に支えられた女性なのです。

主人公にそんなセリフを言わせたのは、これが映画監督デビュー作という音楽プロデューサーのマーク・コリン(Marc Collin)。作中で流れる曲の多くも手がけていて、アナが歌手クララ(Clara Luciani)と創り上げる楽曲もいかにも彼らしい感じです。

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さすがマーク・コリンというのでしょうか。40年前の音楽シーンへのノスタルジーだけでなく、ちゃんと今の時代性もおさえていて、エンディングでは、電子音楽の黎明期に活躍した女性ミュージシャンの名を列挙し、この映画を捧げています。またアナが女性ならではの扱いを受けるシーン(美人なんだから歌手になったらどうだい?)を描くなど、女性ミュージシャンであるが故の困難も取り込んでいます。

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念のため記しておくと、マーク・コリンはヌーヴェル・ヴァーグ(Nouvelle Vague)という音楽プロジェクトの仕掛け人。というか20年ほど前に人気を博した、ニューウェーブ系の音楽をボサノバ風にカバーしたアルバム「ヌーヴェル・ヴァーグ」で注目を集めた人といった方がわかり易いかも知れません。

私もご多分に漏れず、今はなきサントノレのコレットかシャンゼリゼのヴァージン・メガストールあたりでこのCDを見かけて即買いしました。音楽もさることながら、ジャケットのデザインが素敵ですね。カバーイラストを描いたのはジャイルズ・ディーコン(Giles Deacon)で、当時はそれほど有名ではなかったと思いますが、その後、ピッパ・ミドルトンのウエディングドレスのデザインをして大注目を集めることになります。

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公式サイト
ショック・ドゥ・フューチャー

[仕入れ担当]

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