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2021年11月29日 (月)

映画「ほんとうのピノッキオ(Pinocchio)」

Pinocchio マッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)監督というと「ゴモラ」や「ドッグマン」などクライムサスペンスのイメージがありますが、監督にとって幼い頃からの念願だった作品だそうです。子ども向けの他愛ないアニメとは一線を画す作風ですが、だからといって子ども向きでないというわけではありません。シンプルなようでわずかにヒネリもある、大人も子どもも楽しめる映画だと思います。

イタリア国内はもちろん、ピノッキオを題材にした映画は無数に作られていて、来年の公開作だけでもロバート・ゼメキスが監督でトム・ハンクスがジェペットを演じるディズニー映画と、ギレルモ・デル・トロが監督を務めるアニメ映画の2本があります。本作ではジェペットじいさんを「ライフ・イズ・ビューティフル」「ローマでアモーレ」のロベルト・ベニーニ(Roberto Benigni)が演じていますが、その彼も2002年に自らが監督・主演して実写の「ピノッキオ」を撮っているほどです。

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そんな何度も映画化された童話を、ストーリーをなるべく原作に近づけること、コオロギやネコまで特殊メイクの人間が演じることで独自性を打ち出した本作。宣伝ではダークファンタジーと謳っていますが、原作の勧善懲悪を明確に描いただけで、とりたててダークではありません。たとえば障碍があるフリをしてピノッキオを欺したネコとキツネが天罰で障碍者になってしまうあたりなど、批判をおそれて曖昧にしそうな部分を、19世紀の感覚そのままに描いだけではないでしょうか。

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そういう意味でピノッキオの怠惰な気持ちや行動、ジェペットじいさんがコートを質入れして買ってくれた教科書を売って人形劇を見に行ったり、こおろぎの忠告を疎ましく思ってハンマーを投げつけたりする行いは罰せられますし、良い行いをすれば報われます。子どもの頃に童話を読んだ印象より善悪と賞罰がはっきりしているように感じました。

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ストーリーはご存じの通り、仕事がなくて貧困にあえいでいる大工ジェペットが、人形劇でひと山あてようと、さくらんぼ親方から譲り受けた木材で人形を彫ったところ人間のように動くようになり、それをピノッキオと名付け、自分の子どもとして育てようとするもの。木製でありながら意志をもつピノッキオは、ジェペットの気持ちに背いて冒険に出てしまい、行く先々でさまざまな出来事に巻き込まれて成長していきます。

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要するに人形が人間の心を持つに至る成長譚ですが、上で記した動物たちと同様、ピノッキオも特殊メイクで木製人形の質感を表現しています。演じているのはフェデリコ・エレピ(Federico Ielapi)という子役で、彼の外見を不気味に思うか、すんなり受け入れられるかで本作の好き嫌いが二分されそうです。

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個人的には、登場人物の造形や衣装はもちろん、セットやロケーション、視覚効果まで、ガローネ監督の世界観が隅々まで貫徹されていて、心地よく映画の中に入り込めました。特に室内の感じ、光の入り方や木のきしむ音などがイタリアの田舎町らしくて雰囲気作りが巧いと思いました。

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また、登場人物たちの生活感も良かったと思います。実際のところは知りませんが、繕った服や食べ物など、当時の貧しさを忠実に再現したのでしょう。ネコとキツネの行いも、馬車で現れる奴隷商人(Omino di burro)の行いも、そういった庶民の暮らしぶりがあって説得力を持つものだと思います。

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よく知られた出演者としては、「ドッグマン」で娘役だったアリーダ・バルダリ・カラブリア(Alida Baldari Calabria)が幼少期の妖精、オゾン監督「17歳」のマリーヌ・ヴァクト(Marine Vacth)が大人の妖精を演じている他、「イル・ディーヴォ」でモロ首相を演じたパオロ・グラジオッシ(Paolo Graziosi)がさくらんぼ親方を演じています。

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公式サイト
ほんとうのピノッキオPinocchio

[仕入れ担当]

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