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2021年12月13日 (月)

映画「パーフェクト・ケア(I Care a Lot)」

I Care a Lot小気味良い展開で楽しませてくれるクライムサスペンスです。監督はたった3人の出演者で観客の気持ちを鷲づかみにして揺さぶり続けた「アリス・クリードの失踪」のJ・ブレイクソン(J Blakeson)。本作でもぐいぐい引き込んでいきながら、絶妙な切り替えでアッと言わせる手口は健在でした。

主人公のマーラ・グレイソンを「ゴーン・ガール」「プライベート・ウォー」のロザムンド・パイク(Rosamund Pike)が演じているのですが、転んでもただでは起きない役がよくお似合いです。彼女の不屈の精神に共感しているうちに、そのせいで危機に陥り、それをギリギリで切り抜けていく様子をハラハラしながら見守ることになります。

マーラの仕事は法定後見人。認知症などで判断力が鈍った人や自らの行動を律することができなくなった人を保護するため、裁判所から選定されて請け負う仕事です。日本でもFree Britney (ブリトニーを自由に)ムーブメントがニュースになっていましたが、これは奇行が目立ったブリトニー・スピアーズの後見人として2008年から財産管理からメールの監視まで行ってきた父ジェイミー・スピアーズと、後見制度解除を求めたブリトニーが対立し、ブリトニーのファンが彼女の解放を求めた運動でした。被後見人は経済面のみならず、身体的にも精神的にも完全に支配下におかれてしまうようです。

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ですから後見人は善良であることを裁判所が見極めているという建前なのですが、この映画のマーラは違います。ターゲットとなる老人を見つけると、医師に頼んで認知症の診断書を作らせ、気心の通じた裁判官の型どおりの審査を経て後見人に選定されます。旧知の介護施設に入居させると、早々に老人の住居や財産を処分し、それで得た現金を管理下において自分の報酬に充てるという手口です。

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もしその老人が本当に判断力を失っていて、サポートする家族がいないようなら、法律的にも人権的にも問題は生じないでしょう。しかし家族がいれば、本来ならその家族が後見人を務めるべきですから、話がやや複雑になります。映画の幕開けは、母親を強制的に施設送りにされた男性が面会を求めて施設の入口で暴れる場面。マーラはその男性から罵られ、唾を吐きかけられますが、そういうことは慣れっこのようです。

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しかし次の被後見人は違いました。仲良しの医師カレンが勧めてきたのは、独身で長年働いて購入した家があり、身内も皆無という裕福な老女。カレンが紹介料を要求するだけのことはある上玉です。その老女ジェニファーに認知症の兆候があるので、それが突然悪化したという緊急保護の申請を提出して施設に送る計画で、案の定、裁判所は書類の確認だけでマーラを法定後見人に任命します。

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早速、ジェニファーを拘束して、ちょうど高額な部屋が空いたばかりという介護施設に送り込みます。携帯電話を取り上げ、鎮静剤を投与して、本人が裁判所に訴える可能性も潰します。これで一丁上がりとばかり、財産処分に取りかかるのですが、彼女が隠していた鍵を見つけ、銀行の貸金庫を開けたところからこれまでとは違った様相を見せ始めます。

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彼女は書籍をくりぬいた中にダイヤモンドのルースを何粒も隠し持っていたのです。それも大粒の上質なものばかり。そしてマーラの事務所にジェニファーの代理人と称する弁護士ディーンが訪ねてきます。用件はジェニファーの後見制度を解除しろということ。要するに、マーラのやり口はわかっている、アタッシュケースに詰め込んだ現金を渡すので手を引くようにという交渉です。

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善良な老女に見えたジェニファーは、実は裏社会に通じていて、その公的な経歴さえもねつ造されたものだったのです。そこから悪徳後見人と、裏社会のぶつかり合いに展開していくのですが、後は観てのお楽しみとしておいた方が良いでしょう。スリリングな展開でエンディングまで飽きさせることはありません。

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マーラをはじめ、ほとんどの登場人物が悪人という物語ですので、一種のピカレスクロマンとも言えるでしょうが、少し様相を異にしているのが主人公が女性であり、その公私にわたるパートナーであるフランも、仲良しの悪徳医師カレンも女性であること。彼女たちが主導し、男性の裁判官や介護施設のオーナーなどを手玉にとって自分たちの思い通りにことを進めようとするわけです。

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マーラのモットーは、世の中には捕食者(Predators)と獲物(prey)がいる、ライオン(Lions)と羊(lambs)がいる、私は羊ではなく雌ライオン(lioness)だというもので、喰うか喰われるかの世界で勝負してきた人間ならではの芯の強さを見せます。それ故のリスクを負いながら、それを原動力に突破していくのですが、命よりも自尊心が大切だという彼女の考え方がエンディングにある種の清々しさを与えます。

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ほぼロザムンド・パイクの一人芝居ですが、その他の演者としては、彼女のパートナーであるフラン役で「ベイビー・ドライバー」のエイザ・ゴンザレス(Eiza González)、老女ジェニファー役で「ハンナとその姉妹」「ブロードウェイと銃弾」のダイアン・ウィースト(Dianne Wiest)、弁護士ディーン役で「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」でビクター・ザーズを演じていたクリス・メッシーナ(Chris Messina)、裏社会の首領役で「ゲーム・オブ・スローンズ」「スリー・ビルボード」のピーター・ディンクレイジ(Peter Dinklage)が出ています

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公式サイト
パーフェクト・ケアI Care a Lot

[仕入れ担当]

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